MV-7008:AcuSolveとの連成シミュレーションの概要
本チュートリアルでは、AcuSolveと連成させるモデルをMotionViewでセットアップする方法について学習します。
MotionSolveとAcuSolveとの連成シミュレーションインターフェースが加わることにより、流体流れが剛体と連成し、剛体に圧力荷重を発生させ、剛体が複雑に運動するようなマルチフィジックス問題を解くことができます。この機能によって、自身のマルチボディシステムの忠実度を高め、より現実的な結果を得ることが可能となります。
このシナリオでは、MotionSolveは剛体の変位と回転を計算する一方で、AcuSolveはそれらのボディの荷重とモーメントを計算します。両ソルバーは、TCPソケットプロトコルを介し、協調して計算を進めながら、データを交換し合います。すなわち、2つのソルバーは別のマシン上、別のプラットフォーム上にあってもなお、互いにコミュニケーションをとることができます。例えば、CFDをHPC上で実行し、MBSシミュレーションをローカルのラップトップ上で実行することが可能です。
チュートリアルの目的
MotionSolve-AcuSolve連成シミュレーションインターフェースを使用し、流れ場を有するパイプ内の逆止弁の剛体運動を連成させます。AcuSolveモデルは既にセットアップされたものが<installation_directory>\tutorials\mv_hv_hg\mbd_modeling\motionsolve\cosimulation\Check_Valve_Coupled.acsに用意されています。このモデルをAcuSolveで実行するための手順が、本チュートリアルに含まれています。
AcuSolveでのモデルのセットアップについて詳細は、<installation_directory>\acusolve\<platform>\help\acu\acusolve_tut\Tutorials\Check_Valve_Coupled\をご参照ください。
ソフトウェア要件
Machine A | Machine B | ||
---|---|---|---|
ソフトウェア | プラットフォーム | ソフトウェア | プラットフォーム |
MotionSolve/MotionView | Windows 64-bitまたはLinux 64-bit | AcuSolve | Windows 64-bitまたはLinux 64-bit |
上の表から、連成シミュレーションはWindowsおよびLinuxプラットフォーム(64-bit)の両方でサポートされています。クロスプラットフォームでの連成シミュレーションも可能です。
シミュレーションの環境
- MotionSolveとAcuSolve双方へのコネクションの確立
- MotionSolveからAcuSolveへの変位と回転の伝達
- AcuSolveからMotionSolveへの荷重とモーメントの伝達
- 実行時間とライセンスの管理

図 1. 連成シミュレーションのセットアップ
逆止弁付きパイプ
逆止弁は、流体が1方向のみに流れるよう制限する機械装置です。この弁は、シャッターボディによって制御されます。1方向の流体の流れは、シャッターボディを1方向に押すため、弁を開きます。反対方向の流体の流れは、シャッターボディを逆の方向に押し、そのため、弁は閉じて、流体のパイプ内での流れ反転を阻みます。逆止弁は、ポンプ、化学プラントおよび発電所、ごみ集積ライン、灌漑用スプリンクラー、水圧式ジャッキなどに見られます。
- 流体流れの入口と出口を有するパイプ
- 軸に取り付けられたシャッター板からなる逆止弁のアセンブリ
- シャッターボディの終端の多孔版に取り付けられた止め具
- パイプ内の流体流れは、軸対称であると仮定します。これにより、逆止弁の一部のみをモデル化することで済みます。この例では、下の図の青いパートで示される、形状の30度のセクションがモデル化されます。これを行う利点は、正確な解を捕捉しながらシミュレーション時間の短縮が図られる点にあります。

図 2. 逆止弁付きパイプモデルのセットアップ
逆止弁アセンブリは、軸に取り付けられた円盤状のモデルで構成されています。上の図において赤の矢印で指定される方向に流体が流れる際、流体は、シャッターボディを同じ方向に移動するよう強制します。シャッターボディの運動はまた、シャッターボディと多孔版との間に取り付けられているスプリングダンパーによって影響を受けます。最後に、シャッターボディと止め具の間に3次元剛体接触がモデル化され、シャッターボディの動きを流れの方向に拘束します。
MBSモデルについては、シャッターボディと多孔版の1/12のみがモデル化されます。

図 3. 入口圧力
モデルのこの種の動きは、2つのソルバー間で“密に”連成されていると称されます。すなわち、剛体の運動は流体の流れ場に影響を及ぼし、逆にその流れ場は周期的に剛体の運動に影響します。
本チュートリアルの残り部分では、このモデルがAcuSolveで正しくセットアップされていることを前提とします。モデルは、シャッターボディが多孔板とぶつかるまで移動するよう設定されています。MotionViewモデルは、シャッターボディを正しく逆戻りさせるよう、これら2つのボディの接触を含め設計されています。AcuSolve有限要素メッシュが完全につぶされることなく剛体が接触できるよう、流体モデル内の多孔板は正のX方向に0.002mオフセットされています。これによりMotionViewモデルは、接触エンティティにより指定されたように反応する一方で、AcuSolveメッシュが完全につぶれないよう保ちます。
MotionViewでのモデルの読み込み
AcuSolveと相互作用する“ウェット”ボディの指定
AcuSolveと連成させるには、1つまたは複数の“ウェット”ボディが必要です。“ウェット”ボディは、流体流れと作用し、そこにかかる荷重とモーメントを擁するMotionSolveモデル内のボディです。このようなボディは、AcuSolveによって計算される作動流体荷重 / モーメントおよびMotionSolveモデル内の作動流体荷重 / モーメントのために、平行移動または回転することがあり得ます。この例では、単一の“ウェット”ボディ - 衝突する流体によってX軸に沿って移動するシャッターボディを定義します。
MotionViewでボディを“ウェット”として定義するには、以下に説明するとおり、システム定義を使用する必要があります。
AcuSolveと連成させずにモデルを実行
MotionViewモデルが正しくセットアップされていることを確実にするために、MotionSolveでモデルを実行し、MotionSolveから警告やエラーメッセージが出ないことを確認します。
MotionSolveとAcuSolveの間でモデルを検証
連成シミュレーションを成功裏に実行するには、AcuSolveで作成されたモデルとMotionViewで作成されたモデルが一貫性をもつ必要があります。2つのモデルが一貫性をもつには、以下の条件が満足されなければなりません。
Compute ConsoleからのMotionSolveおよび連成シミュレーション用のミドルウェアの実行
連成シミュレーションのためにAcuSolve実行ファイルを実行
連成シミュレーションからの結果のポスト処理
HyperViewとHyperGraphを使って、HyperWorks Desktop環境内で連成シミュレーションの結果をポスト処理することができます。
StartメニューからHyperView(HyperGraph)を起動します。
を選択し、連成シミュレーションのMotionSolveパートにより生成されたアニメーションH3Dには、MotionSolveからの結果のみが含まれます。同様に、AcuSolveからの結果には、AcuSolveモデルの結果のみが含まれます。連成シミュレーションからの結果をアニメーション表示するには、以下の手順に従います:
HyperGraphでのMotionSolve結果のプロッティング
HyperGraphを使って、結果を2次元プロットに表すことも可能です。HyperWorks Desktopは複数ウィンドウレイアウトで使うことができるため、HyperViewとHyperGraphを同時に開けます。