弾性コンポーネント内の載荷の指定

MotionSolve内のANCF定式化を使用すると、弾性コンポーネントを構成する節点ごとに2組の位置を指定できます。
  1. モデルの配置または荷重負荷時の配置。この節点座標セットによって、荷重負荷時の配置またはモデルの配置が定義されます。この配置では、以下を指定できます。
    荷重 / 応力負荷時の配置における位置ベクトル
    r _ = x i ^ + y j ^ + z k ^
    荷重 / 応力負荷時の配置におけるX方向の勾配ベクトル
    r x = ( r x ) x i ^ + ( r x ) y + j ^ ( r x ) z k ^
    荷重 / 応力負荷時の配置におけるY方向の勾配ベクトル
    r y = ( r x ) x i ^ + ( r x ) y + j ^ ( r x ) z k ^
    荷重 / 応力負荷時の配置におけるZ方向の勾配ベクトル
    r z = ( r x ) x i ^ + ( r x ) y + j ^ ( r x ) z k ^
  2. 無負荷時の配置この節点座標セットによって、無負荷時の配置が定義されます。ANCF XMLファイル内では、これらの座標は、各属性の後の接尾部“0”で示されます(例: x0、y0、z0など)。この配置では、以下を指定できます。
    無負荷時の配置における位置ベクトル
    r 0 = x θ i ^ + y θ j ^ + z θ k ^
    無負荷時の配置におけるX方向の勾配ベクトル
    r x 0 = ( r x ) x 0 i ^ + ( r x ) y 0 + j ^ ( r x ) z 0 k ^
    無負荷時の配置におけるY方向の勾配ベクトル
    r y 0 = ( r x ) x 0 i ^ + ( r x ) y 0 + j ^ ( r x ) z 0 k ^
    無負荷時の配置におけるZ方向の勾配ベクトル
    r z 0 = ( r x ) x 0 i ^ + ( r x ) y 0 + j ^ ( r x ) z 0 k ^
    注: 無負荷時の配置が指定されていない場合、MotionSolveでは、荷重負荷時の配置が無負荷時の配置と同じであると想定されるため、構造には初期応力はかけられません。無負荷時の配置が荷重負荷時の配置と同じである場合も同様です。

例えば、円形の断面を持つビームがその両端で固定され、中心に荷重が負荷されているとします。無負荷時の配置が、荷重が存在しないかゼロのときの配置として指定されます。



図 1. 除荷時もしくは無負荷時の配置

荷重負荷時の配置(図 2)は、ビームが最大限に変形しているときの配置として指定されます。この例では、中心に1000Nという荷重がかけられています。



図 2. 荷重負荷時の配置. ここでは変位コンターを示しています。
したがって、ANCF XMLファイル内の荷重負荷時の配置と無負荷時の配置は、次のように指定されます(スペースを節約するために中央節点について例示しています)。
<GRID
   id="301008"
   x0="500.000000"  y0="0.000000" z0="0.000000"
   rx0="1.000000 0.000000 0.000000"
   ry0="0.000000 0.000000 1.000000"
   rz0="0.000000 -1.000000 0.000000"
   x="5.0000000E+02" y="2.2342947E-09" z="-1.8751877E+00"
   rx="1.0000086E+00 1.8714474E-15 1.4090006E-17"
   ry="-1.3419917E-17 -1.2981139E-09 9.9999766E-01"
   rz="1.8569096E-15 -9.9999740E-01 -1.3584520E-09"
/>

上記からわかるように、荷重負荷時の節点座標と無負荷時の節点座標は異なります。この例では、荷重負荷時の“z”位置と無負荷時の“z”位置の違いは、このビームの最大変形を表しています。

したがって、この方法を使用してモデル内の初期応力がかけられたコンポーネントを表すことができます。このようなシナリオの場合、MotionSolveは、荷重負荷時の配置と無負荷時の配置の違いに基づいてコンポーネント内の応力を計算します。この応力を使用して、弾性コンポーネント内の初期応力をモデリングできます。上記で定義されたコンポーネントについて、t=0におけるビームの“初期応力”を図 3に示します。



図 3. 荷重負荷時の配置と無負荷時の配置の違いに基づいて計算されたt=0における応力. ここでは軸応力コンターを示しています。