疲労解析の設定

静的疲労解析: 複数のFEA/荷重時刻歴荷重ケースの線形重ね合わせ

複数の荷重ケースが同時にあり、それらが全て他とは独立に変化するとき、線形重ね合わせの原理が全ての荷重ケースを一緒に統合するのに用いられ、全ての荷重の組み合わせによる計算点の応力変化が決められます。その式は:(1)
σ ij ( t )= k=1 n ( σ ij,k P FEA,k P k ( t ) )

ここで、 n は荷重ケースの全数、 P k ( t ) および σ i j ( t ) はそれぞれk番目の荷重時刻歴と、全応力テンソルの時間変動、 P F E A , k および σ i j ( t ) はそれぞれ、FE解析からのk番目の荷重振幅と応力テンソルです。

過渡疲労解析

過渡疲労解析の最中、荷重時刻歴入力は必要ありません。これは、過渡解析中に内部的に計算されるためです。

ランダム応答疲労解析

ランダム応答疲労解析の最中、荷重時刻歴入力は必要ありません。FATLOADバルクデータエントリのLCIDフィールドは、ランダム応答解析サブケースを参照しなければなりません。

正弦波掃引疲労解析

正弦波掃引疲労解析の最中、荷重時刻歴入力は必要ありません。FATLOADバルクデータエントリのLCIDフィールドは、周波数応答解析サブケースを参照しなければなりません。

OS-MBD応力リカバリー

疲労解析は、マルチボディ解析の結果のflexh3dファイルからリカバリーされた応力に基づいて行うことも可能です。ASSIGN,H3DMBDエントリは、flexh3dファイルを特定するために使用でき、要素群のプロパティ(および材料)の定義には、EL2PROPバルクデータエントリを使用する必要があります。ユーザーは、弾性体H3Dファイルからセットを生成してモード寄与係数を割り当て、疲労計算用に対応する応力を得ることができます。

荷重時刻歴の圧縮

このオプションは計算時間を節約するのに用いられます。(しきい値で定義された)小さなサイクルと中間点が除去されます。


図 1. 小さなサイクルの除去を示すサンプル
小さなサイクルの除去の際、隣接する転換点は、差が最大レンジに相対しきい値をかけた値よりも小さい場合、 それぞれのチャンネルから除去されます。ただし、山と谷が異なるチャンネルの異なる時間で起きる場合、位相の関係は保持されます。これは上のサンプルで示されます。最初のチャンネル (上)では、点4と5の絶対差が1の場合除去されます、しかし2番目のチャンネル(下)では、点1 と 2 はチャンネル間での位相関係を保持するため除去されません。


図 2. 中間点の除去を示すサンプル

中間点の除去は計算時間節約のためのもう一つの重要なメカニズムです。荷重時刻歴において、山でも谷でもない点はいずれも応力サイクルを決めるのに寄与しません。このような点は精度を損なうことなく疲労計算からふるい落とすことが可能であり、これにより計算時間は大幅に節減できます。例えば、図 2の左の列は3つの重ね合わされる荷重ケースの3つの荷重時刻歴をそれぞれ示しています。中間点を除去した後、右の列の様な3つの荷重時刻歴が得られ、これで左の列と同じ疲労の結果を得ることができますが、時間は大幅に短縮されます。このメカニズムはOptiStructにビルトインされ、自動的に効果を表します。

疲労荷重、イベント(Event)、順序(Sequence)

疲労荷重は静解析サブケースを荷重時刻歴でスケーリングして定義されます。

疲労イベントは1つ、またはそれ以上の静荷重が同じ時間方向に同時に作用したものに荷重時刻歴でスケーリングされたものから成ります。複数の静荷重ケースの疲労イベントでは、応力の線形重ね合わせが用いられます。

疲労シーケンス(fatigue sequence)はいくつかの疲労イベントとこれらのイベントの繰り返しの場合からなります。1つの疲労シーケンス(fatigue sequence)は他の疲労シーケンス(sub fatigue sequence)や疲労イベントで構成することができます。このようにして、疲労解析の非常に複雑なイベントとシーケンスを定義することができます。

OptiStructでは、疲労サブケースで定義される疲労シーケンス(FATSEQで参照される)は基本の荷重ブロックです。これらの疲労サブケースの疲労寿命結果は、荷重ブロックの繰り返し数として計算されます。

下は“ツリー状”の疲労シーケンスの例で、疲労シーケンスを特定するFSEQ#と疲労イベントを特定するFEVN#でOptiStruct内に定義されます。


図 3. "ツリー状"の疲労シーケンスの例

疲労荷重はFATLOADバルクデータエントリで定義され、静解析サブケースと荷重時刻歴が関連付けられます。

疲労荷重イベントはFATEVNTバルクデータエントリで定義され、1つ以上の疲労荷重(FATLOAD)が選択されます。

疲労荷重順序はFATSEQバルクデータエントリで定義され、1つ以上の荷重イベントのシーケンスまたは他の疲労荷重シーケンスが与えられます。疲労サブケース定義からFATSEQサブケース情報エントリを通して、適切なFATSEQバルクデータエントリを参照することができます。

疑似損傷手法

疑似損傷手法は、静的S-N疲労と静的E-N疲労のみの寿命と疲労損傷を計算するための代替手法です(単軸疲労と多軸疲労の両方がサポートされています)。疑似損傷手法は、大きな荷重履歴がある大規模なモデルに適している可能性があります。この手法が特に適しているのは、損傷の小さい領域が関心対象外であり、それらの低損傷領域が後続の最適化で影響を及ぼす可能性が低い場合です。溶接疲労、振動疲労、過渡疲労、およびFOS疲労は、疑似損傷手法では現在サポートされていません。疑似損傷をアクティブにするには、FATPARMエントリでPSEUDOフラグを設定します。追加の制御を行うためには、FATPARM上のPSEUDO継続行を使用してパラメータを変更できます。
  • 荷重履歴の近似
    1. レインフローカウントが荷重履歴に対して直接実行され、後続の疲労計算の荷重サイクルが特定されます。
    2. レインフローカウントによって特定された荷重サイクルに対して、平均応力補正のSWT手法が直接適用されます。
    3. 最も高い範囲を持つ上位のNPV荷重サイクルが選択されます(デフォルトでは3つ)。複数の荷重履歴(複数のTABFAT)がある場合に、ある荷重履歴の同じ荷重サイクル(時間ステップペア)が他の荷重履歴内で識別されない場合でも、このような荷重サイクルは疲労計算用に選択される必要があります。
  • 疑似損傷の計算
    1. 前の手順の近似された荷重履歴に基づいて、モデル内のすべての要素について疑似損傷が計算されます。
    2. これらが疑似損傷と称される理由は、これらは近似された荷重履歴に基づいて計算されるからです。
  • クラスターの生成
    1. グローバル最大疑似損傷は1.0に正規化されます。
    2. モデルは一般に、1.0という1つのグローバル最大疑似損傷と、要素空間全体にわたる多くのローカル最大疑似損傷で構成されています。
    3. グローバル最大疑似損傷を示している要素から開始して、最初の要素クラスターが作成されます。右上がりの傾斜に遭遇しない限り、このクラスターは拡大されて隣接要素も含むようになります(すなわち、クラスター境界内で最も外側にある要素の疑似損傷が、クラスター外にあるこの要素の隣接要素の疑似損傷より大きい限り、このクラスターは拡大できます)。
    4. クラスター外にある隣接要素と、クラスター内にある対応する最も外側の要素の間で、疑似損傷の差異がNOISETHRより大きい場合は、現在のクラスター形成は終了されます。
    5. クラスター形成が終了された後に、クラスター内のすべての要素は次のループの考慮対象から除外されます。この時点で、次のグローバル最大疑似損傷が特定され、クラスターの生成セクションの手順3、4、5が繰り返されて、最終的にモデル全体が複数の要素クラスターに分割されます。
  • ホットスポットの生成
    1. 次の手順は、ホットスポットクラスターの生成です。各モデルのホットスポットクラスターの合計数は、MXHOTSPOTで定義されます。上記の手順5で作成された要素クラスターごとに、上位NACTDMG個の要素がそれらの疑似損傷値に基づいて特定されます。
    2. これらのNACTDMG個の要素について、実際の損傷の計算が実行されます(これは荷重履歴全体を使用した通常の疲労損傷の計算です)。このような各要素クラスター内のローカル最大要素と、その要素クラスターのNACTDMG個の要素(実際の損傷の計算が実行される対象)は、ホットスポットと呼ばれます。
    3. 上位NACTDMG個の要素よりも疑似損傷が小さいクラスター内の他のすべての要素については、以下の近似計算が実行されます:

      log (損傷) = log (疑似損傷) *log (ローカル最大要素の実際の損傷) /log (ローカル最大要素の疑似損傷)

    4. 上記の手順1~3によって、1つのホットスポットクラスターの生成が完了します。合計MXHOTSPOT個のホットスポットクラスターが生成されるまで、このプロセスが繰り返されます。
  • 出力
    1. 疲労と寿命の結果はデフォルトで出力され、レインフローの結果は、RNFLOWコマンドを使用して出力できます。この出力は、ホットスポットクラスター内の要素と残りの要素の実際の損傷の結果(荷重履歴全体に基づいたもの)で構成されており、実際の損傷の値は、ホットスポットの生成のセクションの手順3で指定された式に基づいて近似されます。
    2. 疑似損傷の実行ごとに、<filename>.eactdmgという名前のファイルがデフォルトで出力されます。このファイルには、各疲労サブケースで実際の損傷が計算された要素セットが含まれています。これは、PARAM,PEACTDMG,NOを使用してオフにできます。

疲労最適化

DRESP1エントリのRTYPEフィールドは、FATIGUEにセットされていなければなりません。疲労最適化の応答は、DRESP1エントリのATTAフィールド上のLIFEDAMAGE,、FOSオプションを使った、寿命、および安全係数です。疲労最適化には少なくとも1つの疲労解析サブケースが必要です。

ESL最適化手法を用いたマルチボディ解析を伴う疲労最適化がサポートされるようになりました(この機能について疲労解析はサポートされていません)。FATLOADエントリのLCIDフィールドはMBDサブケースを参照できます。疲労サブケースとMBDサブケースのみが存在でき、その他のサブケースはモデル内にあることが許されません。