ワンステップ非定常熱応力解析

線形非定常熱伝導解析または非線形非定常熱伝導解析の後で温度の履歴を利用できます。ワンステップ非定常熱応力解析(OSTTS)を使用すると、構造解析に(複数の出力タイムステップで)温度を適用できます。

線形または非線形の非定常熱伝導解析がまず行なわれ、温度履歴全体が熱荷重として後続の静解析に適用されます。静解析は、線形サブケースまたは非線形サブケースのいずれでも可能です。
  • 線形OSTTS解析の場合、非定常熱伝導解析の後、複数の線形静的サブケースが内部的に生成され(非定常熱伝導からの温度荷重の数と等しく)、適用された温度荷重に基づいて“出力タイムステップ”毎の応力状態が計算されます。
  • 非線形OSTTS実行の場合は、前回の非定常熱伝導解析の温度が、熱荷重として時間領域内の非線形静解析サブケースに線形にマップされます。

線形および非線形OSTTSの実行は、非定常熱伝導の際の変位および応力の履歴を提供します。応力の履歴を精確に捕捉するために、非定常熱伝導解析ほど多くのタイムステップを必要とはしません。出力タイムステップ(内部サブケース)の数を50未満に保つことが推奨されます。MUMPSソルバーが使用される際、境界条件の数の上限は200です。

固定された初期および最終の時間温度マッピング(HTIME=ALL

ワンステップ非定常熱応力解析を実行するには、非定常熱伝導サブケースと静的サブケースを設定する必要があります。静的サブケースは、線形サブケースまたは非線形サブケースのいずれでも可能です。TEMPERATUREケースコントロールエントリを静解析サブケースでHTIMEキーワードと共に使用すると、応力解析を実行するための特定のタイムステップまたはすべてのタイムステップを選択できます。以下に、入力デックのサンプルを示します。
SUBCASE 100
   TITLE = Transient thermal subcase
   ANALYSIS = HEAT
   THERMAL(sort1, punch)=ALL 
   FLUX=ALL  
   TSTEP = 100
   IC = 20
   DLOAD = 200
$
SUBCASE 200
   TITLE = One step transient thermal stress subcase
   SPC = 1
   TEMP(LOAD,HTIME=ALL) = 100
   DISPLACEMENT=ALL
   STRESS=ALL
OSTTSからの温度履歴とピーク応力の履歴を図 1に示します。ピーク温度は145秒での43.27℃、ピーク応力は165秒での42.35Mpaです。
注: ピーク応力は、ピーク温度と同時に、もしくは初期または最終タイムステップにおいて発生するとは限りません。
これは、非定常解析の間を通して応力のピークを捕捉するのにOSTTSが役立つことを示しています。

temp_history_example
図 1. ワンステップ非定常熱応力解析の温度履歴とピーク応力

柔軟な初期および最終の時間温度マッピング(TEMPT)

このフォーマットでは、非線形OSTTSのみがサポートされています。このフォーマットでは、非線形静解析における温度荷重のソースは、次の2つのオプションのいずれかから取得されます:
  • 内部非定常熱サブケース(HSUB)。熱荷重は、時間領域内の非定常熱解析から非線形静解析に線形にマップされます。マッピングルールはTEMPTカードで定義されます。以下に、HSUBを使用した‘TEMPT’フォーマットでの非線形OSTTSのサンプル入力デックを示します。
    SUBCASE 100
    TITLE = Transient thermal subcase
    ANALYSIS = HEAT
    THERMAL(sort1, punch)=ALL
    FLUX=ALL
    TSTEP = 100
    IC = 20
    DLOAD = 200
    $
    SUBCASE 200
    TITLE = Nonlinear One step transient thermal stress subcase
    SPC = 1
    NLPARM = 50
    TEMP(LOAD,TEMPT) = 300
    TEMP(INIT)  =  60
    DISPLACEMENT=ALL
    STRESS=ALL
    
    BEGIN BULK
    TEMPT,300,HSUB,100
    TEMPD,60,10.0
  • 外部ファイル(HFILE)。熱荷重は、時間領域内の外部ファイルから非線形静解析に線形にマップされます。現在は、外部温度ソースとしてPUNCHファイルのみがサポートされています。マッピングルールはTEMPTカードで定義されます。外部ファイル(HFILEオプション)によってマッピング用の熱荷重が提供されるケースには、非定常熱伝導サブケースは不要です。以下に、HFILEを使用した‘TEMPT’フォーマットでの非線形OSTTSのサンプル入力デックを示します。
    ASSIGN,HFILE,203,temp_results.pch
    SUBCASE 200
    TITLE = Nonlinear One step transient thermal stress subcase
    SPC = 1
    NLPARM = 50
    TEMP(LOAD,TEMPT) = 300
    TEMP(INIT)  =  60
    DISPLACEMENT=ALL
    STRESS=ALL
    
    BEGIN BULK
    TEMPT,300,HFILE,203
    +,HTINI,0.2,HTFIN,0.8
    TEMPD,60,10.0

初期温度

OSTTS解析では、初期温度はTEMPINIT)エントリによって決定されます。TEMPINIT)が入力デックで指定されていない場合は、次のプロセスを使用して初期温度が定義されます。
  1. HTIME=ALL’フォーマットでの線形OSTTSと非線形OSTTSの場合は、要素の初期温度はその材料カード内の基準温度から取得されます。節点の初期温度は、その節点を支えている複数の要素内の初期温度の平均です。
  2. TEMPT’フォーマットでの非線形OSTTSの場合は、節点の初期温度は、参照されているTEMPTカード(HTINIに基づく)から取得されます。
注:
  1. OSTTS解析(HTIME=ALLフォーマット)を使用して、非定常熱伝導解析のすべての出力タイムステップで線形または非線形の静解析を実行する場合。非定常熱伝導解析はデフォルトで、各タイムステップの温度結果を出力します。これは、実行時間を増大させ、大きい結果ファイルをもたらす可能性があります。温度結果が出力用に保存されるタイムステップの数をコントロールし、なおかつOSTTS解析が大きな計算コストなしで応力履歴を捕捉できるようにするには、TSTEPエントリにスキップ係数(NO#フィールド)を使用することが推奨されます。
  2. 非線形OSTTSでは、非線形静解析での増分ステップと、非定常熱伝導解析の出力ステップは、互いに一致する必要はありません。非線形静解析の増分出力は、NLOUTエントリによって制御されます。
  3. 非線形静解析におけるDLOADエントリは、非線形OSTTSについてはサポートされません。