OS-T:1371 ブレーキアセンブリのブレーキスキール解析

本チュートリアルでは、ブレーキアセンブリについて、ブレーキスキールの解析を行います。ディスクブレーキは、ディスク上のブレーキパッドのセットを使ってクランプ荷重をかけることにより動作します。パッドとディスクとの間に生じる摩擦は減速の原因となり、システムの動的不安定を引き起こす可能性があります。この現象は、ブレーキスキールと呼ばれます。

このモデルについて、OptiStructは不安定モードを予測し、不安定性は合着モード点で起こる、すなわち、モードのペアが同じ振動数で生じ(モード連成)、それらのうちの1つが不安定であることが分かります。不安定モードは、複素固有値抽出中に特定され得ます。これは、不安定モードに対応した固有値の実数部分が正であるためです。

本チュートリアルで示すように、ブレーキパッドの形状、あるいはブレーキ部品の材料特性を変更することによりモードを非連成にして、ブレーキシステムが安定化するよう設計を進めることが可能です。本チュートリアルの目的は、ブレーキスキールの解析を実施し、不安定モードが存在する場合は、それを特定することにあります。

os1371_model
図 1. モデルのレビュー
brsq.femファイルデータ
  • ブレーキアセンブリについて六面体メッシュが生成されている
  • すべてのパートは材料MAT1で定義されている
  • すべてのパートはSolid Elementプロパティで定義されている
  • ディスクに関し、円筒座標系が定義されている
  • ブレーキパッドとディスクとの間はサーフェス間(S2S)接触が定義されている
2つのサブケースが定義されています:

os1371_brake_assembly
図 2.
  1. サブケースCLAMPLOAD: 非線形静解析
    絶縁体にかかる圧力荷重、SPC(自由度1)を伴う

    os1371_dof1
    図 3.
  2. サブケースROTOR:CNTNLSUB非線形静解析
    パッドおよびディスクの回転にかかる圧力荷重、非ゼロSPC(自由度2)を伴う

    os1371_dof2
    図 4.
    ヒント:
    1. 指定される回転は、ディスクとパッドとの間の接触が動的摩擦にあるべく十分大きく、しかし、小変位NLSTATを確保できるほどには小さくなくてはなりません。
    2. 動的摩擦は一定値(速度とは無関係)であるため、SPCDにより指定される回転は、回転速度の指定と等しくなくてはなりません。重要な結果は、接触節点が動的摩擦モードにあることで、SPCDを用いてどれだけ速く、あるいはどれだけ遠くこれを動かすかは問題ではありません。

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルの読み込み

  1. File > Import > Solver Deckをクリックします。
    Importタブがタブメニューに追加されます。
  2. File typeにOptiStructを選択します。
  3. Filesアイコンfiles_panelを選択します。
    Select OptiStruct Fileブラウザが開きます。
  4. 自身の作業ディレクトリに保存したbrsq.femファイルを選択します。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  5. Openをクリックします。
  6. Import、続いてCloseをクリックし、Importタブを閉じます。

モデルのセットアップ

EIGRLおよびEIGCカードの生成

このステップでは、複素固有値問題を解くのにモーダル法が用いられます。これは、複素モードを直接取り出すのと比べてより効率的に計算できます。このアプローチでは、最初に、実モードがノーマルモード解析を通して計算されます。次に、複素固有値問題が、実モードで表現できる部分空間に投影されて形成されます。そして、これは実空間に比べてずっと小さくなります。ここでは、EIGRLカードとEIGCカードの両方が定義される必要があります。
  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Name欄にmodal_spaceと入力します。
  3. Colorをクリックし、カラーパレットから色を選択します。
  4. Card Imageをクリックし、ドロップダウンメニューからEIGRLを選択します。
  5. V2をクリックし、5000と入力します。
    周波数の上限として、5000が定義されます。
  6. NDをクリックし、100と入力します。
    複素固有値解析のための縮小された空間を作り出すには、100の実モードが必要です。
  7. ceig_squealという名称で、もう1つの荷重コレクターを作成します。
  8. Card ImageをクリックしEIGCを選択します。
  9. NORMをクリックしMAXを選択します。
    固有ベクトルの正規化にMAXオプションが用いられます。
  10. ND0をクリックし、55と入力します。
    取り出される根の数の目標は55となります。

モーダル複素固有値解析の荷重ステップの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Stepを選択します。
  2. Name欄にBRSQと入力します。
  3. Analysis typeをクリックし、ドロップダウンメニューからComplex eigen (modal)を選択します。
  4. SPCに、荷重コレクターのリストからDOF2を選択します。
  5. CMETHODに、荷重コレクターのリストからceig_squeal_を選択します。
  6. METHOD(STRUCT)に、荷重コレクターのリストからmodal_spaceを選択します。
  7. STATSUB (BRAKE)にSub-case ROTOR (ID 2)を選択します。
    ヒント: これがHyperMeshでサポートされていない場合は、手動でSTATSUB (BRAKE)を作成します。

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルをクリックします。

    OS_1000_13_17
    図 5. OptiStructパネルへのアクセス
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてbrsqと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをanalysisにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックし、OptiStructジョブを開始します。
ジョブが成功した場合、brsq.femが書き出されたディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーがある場合、brsq.outファイルはデバッグを手助けするエラーメッセージを探すのに良い場所です。

結果の表示

複素固有値解析では構造の複素モードが計算されます。その複素モードの固有値は、brsq.outファイルで見ることができます。複素固有ベクトルは、HyperViewで確認できます。
  1. brsq.outファイルをテキストエディターに読み込みます。
    複素モードは、振動の周波数を表す虚部とモードの減衰を表す実部を含んでいます。実部が負の場合、そのモードは安定していると言えます。実部が正の場合、そのモードは不安定となります。複素モードの固有値を以下に示します:

    os1371_results
    図 6.
  2. brsq.h3dファイルをHyperViewに読み込み、複素固有ベクトルを確認します。

    os1371_results_hv
    図 7.