OS-T:1060 PCOMPGを用いた複合材航空機モデルの解析

本チュートリアルでは、PCOMPGカードを用いた複合材構造の積層定義の開発のプロセスを体験し、全体層番号による結果のポスト処理の優位性を示します。ここでは、伝統的なPCOMPによる定義法を最初に紹介し、与えられたシナリオに対し、PCOMPGを用いた場合の実際的な利点を最終的に示します。

Figure 1は、本チュートリアルのモデルを示しています。その構造、荷重と境界条件は x-軸に対して対称性を持つため、1/2対称条件の境界条件を与えて構造の半分がモデル化されています。

torsion_frame
図 1. トーションフレーム

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルのオープン

  1. File > Open > Modelをクリックします。
  2. optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したframe.hmファイルを開きます。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  3. Openをクリックします。
    frame.hmデータベースが現在のHyperMeshセッションに読み込まれます。

モデルセットアップの確認

構造モデルは既にセットアップされ、ほとんど変更なしに解くことができます。ジョブのサブミットの前にモデルのセットアップの確認を行います。

モデルは線形静解析用にセットアップされています。前に述べたように、構造の半分のみがモデル化されており、1/2対称条件として対称面上の節点は DOF1、DOF5、DOF6が拘束されています。

図 2に示すとおり、要素の法線方向に底面から上に向かって積層をリストした(積層順序)PCOMP特性ですべてのコンポーネントがモデル化されています。


図 2. 要素の方線方向への層の積層順序
このモデルの "Flange" という語で始まるコンポーネントは、異なるコンポーネントを相互に結合する接合部を示しています。確認に際しては、SkinおよびRibコンポーネントで形成された"flange"エリア(次の図のハイライト部分)に着目します。Skin_inner、Rib、Flange1_Rib_Skin、Flange2_Rib_Skinコンポーネントの層の積層を確認します(積層のレイアウトは次の図の下側部分に示されています)。
注: いくつかの層はSkin_inner、Flange1_Rib_Skin、Flange2_Rib_Skin、Skin_outerコンポーネントで共通ですが、それぞれのコンポーネントで異なる積層順に現われます。たとえば、Skin_innerの4番目の層が、Flange2_Rib_Skinでは3番目、Skin_outerコンポーネントでは2番目の層になっています。

ply_stack_2
図 3. Skin_inner、Rib、Skin_outer、Flange1_Skin_RibおよびFlange2_Skin_Ribコンポーネントの積層順序
  1. 2DページからHyperLaminateをクリックします。
    これで層の積層情報を定義、確認、編集できるHyperLaminate (GUI)が開きます。設計変数の材料特性もここで生成、編集できます。
  2. スクリーンの左側のツリー構造のLaminates部分を展開させます。
  3. Skin_inner PCOMPを選択します。
    積層の詳細が GUI に現われます。
  4. Flange1_Rib_Skinコンポーネントの積層情報を示す下の表の、最初の5つがSkin_innerの積層定義と一致することを確認します。
  5. Rib PCOMPを選択し、Ribの第3、第4の層定義が、次の表の第6、第7に一致することを確認します。
  6. Flange1_Rib_SkinPCOMPを選択し、その層の積層定義を確認します。Flange1_Rib_Skinの全ての積層定義が次の表と一致することを確認します。
    前の図に示されたように、最初の5層がSkin_innerの積層と同じで最後の2層がRibの第3、第4層の積層と同じになっています。他のフランジのモデル化方法についても検証することができます。
    表 1. Flange1_Rib_Skinの積層特性
    層番号 材料 板厚 T Orientation SOUT
    1 carbon_fiber 1.2 45 YES
    2 matrix 0.2 90 YES
    3 carbon_fiber 1.2 -45 YES
    4 matrix 0.2 -90 YES
    5 carbon_fiber 1.2 90 YES
    6 matrix 0.2 -45 YES
    7 carbon_fiber 1.2 45 YES
  7. 他のコンポーネントについても確認することができます。確認が終わったら、File > Exitをクリックし、HyperLaminate GUIを抜けてHyperMeshに戻ります。

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルをクリックします。

    OS_1000_13_17
    図 4. OptiStructパネルへのアクセス
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてframe_PCOMPと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをanalysisにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックし、OptiStructジョブを開始します。
ジョブが成功した場合、frame_PCOMP.femが書き出されたディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーがある場合、frame_PCOMP.outファイルはデバッグを手助けするエラーメッセージを探すのに良い場所です。
そのディレクトリに書かれるデフォルトのファイルは:
frame_PCOMP.html
問題の定式と解析結果のサマリーに関する解析のHTMLレポート。
frame_PCOMP.out
ファイルの設定、最適化問題の設定、実行に必要なRAMおよびディスクスペースの推定量、各最適化反復計算の情報、解析時間等、特定の情報を含むOptiStructの出力ファイル。ワーニングおよびエラーに関しては、このファイルを確認すること。
frame_PCOMP.h3d
HyperViewバイナリ結果ファイル。
frame_PCOMP.res
HyperMeshバイナリ結果ファイル。
frame_PCOMP.stat
解析のプロセスの間のそれぞれのステップでのCPU情報を提供する、解析のプロセスの要約。

結果の表示 / ポスト処理

  1. OptiStructパネルからをクリックします。
    HyperViewが起動し、モデルと結果が自動的に読み込まれます。
  2. Closeをクリックして、メッセージウィンドウを閉じます。
  3. ContourツールバーresultsContour-16をクリックします。
  4. Result typeの下の1つ目のスイッチを選び、Composite Stresses(s)を選択します。
  5. 2番目のスイッチを選び、P1 (major) Stressを選択します。
  6. Layersオプションに3を選択します。
  7. Averaging method:の下の欄で、Noneを選択します。

    rd1060_results
    図 5.
  8. Applyをクリックします。
    これでモデルの全てのコンポーネントの第3層の最大主応力のコンター表示がされます。
  9. Standard Viewsツールバー内でIsometric ViewアイコンviewAxisOrientationIso-24をクリックし、次の図に示されたようにモデルを表示させます。

    rd1060_contour_plot
    図 6. フレームの上面の応力分布
上面領域で応力は緩やかには変化せず、Flange2_Rib_Skin コンポーネントを通して突然減少しています。

Flange1_Rib_Skinの積層のプロパティの表を改めて見ると、Flange2_Rib_Skinコンポーネントのプロパティの第3層はマトリックス材料で、隣接するコンポーネント(Flange1_Rib_SkinとSkin_outer)の第3層はカーボンファイバー材料になっています。この突然の応力値の変化は2つの異なる材料の応力を見ていたことから生じています。この例題は、PCOMPのポスト処理で意味のある結果であるためには、ユーザーが層の結果を、対応する層のプロパティに調整しなくてはならないことになります。

これは、PCOMPコンポーネントのポスト処理の際には、層番号で結果をプロットするだけでは不十分であることを明らかにしています。この方法でのポストプロセッシングの間、層の特性(材料、板厚、方法、破壊インデックスなど)を、常に把握しておく必要があります。大規模な複合材モデルの場合、ポスト処理の間、個々の層の特性を把握することは面倒です。

PCOMPを用いる場合のこの欠点は、PCOMPGカードでプロパティ定義をすることにより回避できます。PCOMPGカードでは、それぞれの層に全体の層番号を割り当てることが可能で、全体の層番号でポスト処理することができます。続くステップでは、PCOMPGプロパティを用いたモデルの再定義の方法について説明します。

モデルセットアップの再定義

  1. HyperViewウィンドウを閉じ、HyperMeshに戻ります。
    ヒント: HyperMesh Desktopを用いている場合は、pagePrevious-24をクリックし、HyperMeshが開いている前のページに戻ります。
  2. 2DページでHyperLaminateパネルを選択します。
    これで層の積層情報を定義、確認、編集ができる、HyperLaminate (GUI)が開きます。
  3. Tools > Laminate Optionsをクリックします。
    これでデフォルトの層の積層オプションを設定できる新しいウィンドウが開きます。
  4. ConventionスイッチをクリックしてTotalを選択します。
  5. OKをクリックしてプウィンドウを閉じます。
    これで新しいコンポーネントが作成された場合のデフォルトがTotalにセットされます。

    lam_info
    図 7. 全体層番号による積層情報

図 7に示されたように、全体層番号による新しい PCOMPG コンポーネントの生成を行います。先に説明したとおり、Skin_innerの4番目の層が、Flange2_Rib_Skinでは3番目、Skin_outerコンポーネントでは2番目の層になっています。したがって、これらの層は同じ全体総ID 4として定義されます。同様にして、他の層もすべて図 7のように定義されます。

  1. スクリーンの左側のツリー構造のlaminates部分を展開させます。
  2. PCOMPGを右クリックします。
    メニューが現れます。
  3. Newをクリックします。
    これでデフォルトで NewLaminate1という名のコンポーネントが生成され、ツリー構造が展開されます。
  4. テキスト欄で右クリックしてRenameを選択し、デフォルトのコンポーネント名をSkin_inner_GPLYに変更します。
  5. Add/Update pliesセクション内のGPLYID欄の下に、1と入力します。
  6. Materialの下のプルダウンメニューを選び、carbon_fiberを選択します。
  7. Thickness T1欄に1.2と入力します。
  8. Orientation欄に45と入力します。
  9. SOUTの下のプルダウンメニューを選び、YESを選択します。
  10. Add New Plyをクリックして、プライ情報を追加します。
  11. この手続きを繰り返し、下の表に示すプロパティをもつ更に4つの層を追加します:
    GPLYID 材料 板厚 T Orientation SOUT
    2 matrix 0.2 90 YES
    3 carbon_fiber 1.2 -45 YES
    4 matrix 0.2 -90 YES
    5 carbon_fiber 1.2 90 YES
  12. ウィンドウの下のUpdate Laminateをクリックして積層情報を更新します。
    GUIの右側のReviewタブの下の欄に積層情報のグラフィック表示が現われます。
  13. Rib_GPLYという名で、次の図の積層の新しい PCOMPG コンポーネントを生成します。
    GPLYID 材料 板厚 T Orientation SOUT
    11 carbon_fiber 1.2 0 YES
    12 matrix 0.2 45 YES
    13 matrix 0.2 -45 YES
    14 carbon_fiber 1.2 45 YES

    Flange1_Rib_Skin_GPLYコンポーネントを作成するには、図 7を参照してください。

  14. Skin_inner_GPLYを右クリックし、同じコンポーネントを作成するメニューからDuplicateを選択します。
  15. 右クリックしてrenameを選択し、コンポーネント名をFlange1_Rib_Skin_GPLYに変更します。
  16. Add New Ply機能を利用して、次の表に示すプロパティをもつ更に2つの層を追加します。
    GPLYID 材料 板厚 T Orientation SOUT
    13 matrix 0.2 -45 YES
    14 carbon_fiber 1.2 45 YES

    新しいコンポーネントFlange1_Rib_Skin_GPLYが作成されました。その最初の5層はSkin_inner_GPLYと同じで、最後の2層はRibコンポーネントの第3層、第4層と同じになっています。

    本チュートリアルの手順数を減らすため、optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したupdated_PCOMPG_properties.femファイルで、他のコンポーネントは既にPCOMPGプロパティで定義され正しい積層情報になっています。このファイルはHyperMeshに読み込まれ、プロパティを手動で更新する代わりに更新(上書き)させます。

    updated_PCOMPG_properties.femファイルは、OptiStruct入力ファイルフォーマットです。これをテキストエディタで開いてどのようにコンポーネントがPCOMPGプロパティで定義されているか再確認することができます。ファイルのそのセクションを以下に示します。


    comps_def
    図 8. PCOMPG で定義されたコンポーネント
  17. File > Exitをクリックし、HyperLaminate GUIを抜けてHyperMeshに戻ります。
  18. File > Import > Solver Deckをクリックします。
  19. Import optionsのトグルをクリックして展開させ、FE overwriteの隣のボックスにチェックを入れます。
    このオプションでは古いPCOMPプロパティが、 updated_PCOMPG_properties.femファイルに定義されたPCOMPGプロパティで上書きされます。
  20. Fileの隣のフォルダーアイコンfiles_panelをクリックし、updated_PCOMPG_properties.femファイルを選択してImportをクリックします。
  21. Closeをクリックします。

HyperLaminateによる読み込まれたプロパティの確認

  1. 2DページからHyperLaminateパネルに進みます。
  2. スクリーンの左側のツリー構造のlaminates部分を展開させます。
    今度は全てのコンポーネントがPCOMPGの下に現われます。以前に作成されたコンポーネント(Skin_inner_GPLY、Rib_GPLY、Flange1_Rib_Skin_GPLY)もなお存在しています。これらのコンポーネントに要素は関連していません。積層情報を表示させてPCOMPGコンポーネントを再確認することも可能です。
  3. File > Exitをクリックします。

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルをクリックします。

    OS_1000_13_17
    図 9. OptiStructパネルへのアクセス
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてframe_PCOMPGと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをanalysisにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックし、OptiStructジョブを開始します。
ジョブが成功した場合、frame_PCOMPG.femが書き出されたディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーがある場合、frame_PCOMPG.outファイルはデバッグを手助けするエラーメッセージを探すのに良い場所です。
そのディレクトリに書かれるデフォルトのファイルは:
frame_PCOMPG.html
問題の定式と解析結果のサマリーに関する解析のHTMLレポート。
frame_PCOMPG.out
ファイルの設定、最適化問題の設定、実行に必要なRAMおよびディスクスペースの推定量、各最適化反復計算の情報、解析時間等、特定の情報を含むOptiStructの出力ファイル。ワーニングおよびエラーに関しては、このファイルを確認すること。
frame_PCOMPG.h3d
HyperViewバイナリ結果ファイル。
frame_PCOMPG.res
HyperMeshバイナリ結果ファイル。
frame_PCOMPG.stat
解析のプロセスの間のそれぞれのステップでのCPU情報を提供する、解析のプロセスの要約。

結果の表示 / ポスト処理

  1. OptiStructパネルから、HyperViewをクリックします。
    HyperViewが起動され、結果が読み込まれます。HyperViewにモデルと結果が正しく読み込まれたことを示すメッセージウィンドウが現われます。
  2. 表示されたら、Closeをクリックし、メッセージウィンドウを閉じます。
  3. ResultsツールバーでresultsContour-16をクリックし、Contour panelを開きます。
  4. Result typeの下の1つ目のスイッチを選び、Composite Stresses (s)を選択します。
  5. 2番目のスイッチを選び、P1 (major) Stressを選択します。
  6. LayersにPLY 3を選択します。
  7. Averaging methodにNoneを選択します。
  8. Applyをクリックします。
    これで全体層番号 3 の最大主応力がプロットされます。全体層 3 が存在しない領域には結果はプロットされません。
  9. Standard ViewsツールバーのIsometric ViewアイコンviewAxisOrientationIso-24をクリックします。

    rd1060_contour_plot2
    図 10.

    全体層番号に基づいた結果のポスト処理では、コンポーネントのプロパティに対応する層番号を把握しておく必要がなくなります。この結果は、全体層番号に基づいた結果の表示で、層の順番には関係がなく、全体のコンポーネントを通して全体層番号を選んで結果を表示することができます。与えられた領域で特定の層が存在しない場合、結果は表示されません。