E-N(ひずみ - 寿命)法を用いたFatigue Process Manager(FPM)

与えられた周期荷重の下で塑性ひずみが発生する場合、疲労寿命の予測にE-N(ひずみ - 寿命)法が選択されるべきです。S-N(応力 - 寿命)法は疲労挙動に塑性ひずみが中心的な役割を担う低サイクル疲労には適していません。

S-N解析で疲労寿命が 10,000 サイクル以下となった場合は、E-N法がより良い選択となり得る兆候です。E-N法は計算的にはS-N法よりも高価ですが、高サイクル疲労の場合においても妥当な推定を行うはずです。

rd2070_SN_curve
図 1. S-N 曲線の低サイクルと高サイクルの領域
E-N理論は単軸ひずみを扱うため、それぞれの計算点、それぞれの時間ステップにおけるひずみ成分は一つの統合された値にする必要があり、そこで、等価な公称ひずみが用いられ、E-N曲線に適用されます(図 2)。

rd2080a_strainlife_curve
図 2. ひずみ-寿命曲線

OptiStructではさまざまなひずみの組み合わせタイプが利用可能で、デフォルトは “Absolute maximum principle strain (絶対値最大の主ひずみ)”です。一般的に脆性材料には "Absolute maximum principle stain"が推奨されますが、延性材料には "Signed von Mises stain"が推奨されます。符号付きパラメータの符号には最大絶対値主値の符号が用いられます。

本チュートリアルでは、E-N法による疲労寿命を評価することができます。

本チュートリアルの実行には、optistruct.zipに含まれる下記のファイル群が必要です。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。

コントロールアームは、図 3に示すとおり、ブレーキ力と鉛直力を受けています。2つの荷重の時刻歴は 1 Hzで 2545 秒間図 4図 5に示すように得られており、これが使われます。コントロールアームに用いられる材料はアルミニウムでそのE-N曲線を図 6に示します。亀裂は常に表面から始まるため、 表皮のシェルメッシュがソリッド要素を覆って置かれています。これにより、計算精度も良くなります。

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図 3. 疲労解析に用いるコントロールアームモデル

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図 4. 鉛直力の荷重時刻歴

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図 5. ブレーキ力の荷重時刻歴

rd2080a_en_curve
図 6. アルミニウムのE-N曲線

HyperMeshとProcess Managerの起動

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
  3. Tools > Fatigue Process > Create Newをクリックします。
  4. New Session Nameに<my_session_name>と入力します。
  5. Working Folderに自身の作業フォルダーを選択します。
  6. Createをクリックします。
    これで、現在ロードされている疲労プロセステンプレートの内容を保存するための新しいファイルが生成されます。


    図 7.

モデルの読み込み

  1. Fatigue Analysisツリーの中でImport Fileタスクが選択されていることを確認します。
  2. Model file typeにを選択します。
  3. Open modelファイルアイコンfiles_panelをクリックします。
    Select Fileブラウザウィンドウが開きます。
  4. optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したctrlarm.femファイルを選択し、Openをクリックします。
  5. Importをクリックします。
    これでコントロールアームのモデルが読み込まれます。モデルには2つの静的サブケースの完全な定義、要素セット、材料と静的プロパティなどが含まれています。
  6. Applyをクリックします。
    これでFatigue Analysisツリーの次のタスクであるFatigue Subcaseに進みます。


    図 8. 有限要素モデルファイルの読み込み

モデルのセットアップ

疲労サブケースの生成

  1. Fatigue Analysisツリーの中でタスクFatigue Subcaseが選択されていることを確認します。
  2. Create new fatigue subcase欄にfatsub_fpmtut、と入力します。
  3. Createをクリックします。
  4. Select existing fatigue subcase欄に新たに生成された疲労サブケースfatsub_fpmtutを選択します。
    fatsub_fpmtutがアクティブな疲労サブケースとして選択されました。続くプロセス(解析パラメータ、疲労評価の要素とプロパティ、載荷順序など)はこのサブケースで行われます。
  5. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクAnalysis Parametersに導かれます。




    図 9. 処理するアクティブな疲労サブケースの生成と選択

疲労解析パラメータの適用

  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクAnalysis Parametersが選択されていることを確認します。
  2. 以下のオプションを選択します:
    Analysis type
    E-N
    Stress combination method
    Signed von Mises
    FEA model unit
    MPA
    Mean stress correction
    SWT
    Rainflow type
    STRESS
    Plasticity correction
    NEUBER
  3. 次の値を入力します。
    生存の確実性
    0.5
    Gate
    0.0
  4. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクであるElements and Materialsに進みます。詳細については、Altair Simulation 2022ヘルプをご参照ください。


    図 10. 疲労解析パラメータの定義

疲労要素と材料の追加

  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクElements and Materialsが選択されていることを確認します。
  2. Add Materialをクリックします。
    Material Dataウィンドウが開きます。
  3. Material名にAluminumを選択します。
  4. Stress unitがMPAにセットされていることを確認します。
  5. Ultimate tensile strength (UTS)に、600と入力します。
  6. EN曲線を定義するInput methodにEstimate From UTSを選択します。


    図 11. 材料データ定義
  7. Show EN curve definitionアイコン05_sn_curveをクリックします。
    EN 材料パラメータの生成方法を紹介するEN method descriptionウィンドウが開きます。
  8. Closeをクリックします。
  9. Material TypeにAluminum and Titanium Alloysを選択し、Estimateをクリックします。
    EN 曲線定義の全てのデータが自動的に推定されます。
  10. ウィンドウの下部にあるPlot EN Curveをクリックし、EN曲線を表示させます。
  11. CloseでEN Curve plotウィンドウを閉じます。
  12. Saveをクリックし、選択された要素へのENデータ定義を保存します。


    図 12.
  13. Add Propertyをクリックします。
    Property Dataウィンドウが開きます。
  14. Property TypeにProperty - PSHELLを選択します。
  15. CreateをクリックしてPFATプロパティを作成します。
  16. LAYERにTOPを選択します。
  17. FINISHにNONEを選択します。
  18. TREATMENTにNONEを選択します。
  19. KFの後ろの欄(Fatigue strength reduction factor)は1.0のままにしておきます。
  20. Closeをクリックし、選択された要素へのENデータ定義を保存します。
  21. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクLoad-Time Historyに導かれます。

    rd2080b_mat_data
    図 13. 材料データ定義


    図 14. 要素と材料の定義

荷重-時間履歴の追加

  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクLoad-Time Historyが選択されていることを確認します。
  2. Add by Fileをクリックします。
    Load Time Historyウィンドウが表示されます。
  3. Load-time history名にlth1と入力します。
  4. Load-time historyタイプにCSVを選択します。
  5. Open load-timeファイルアイコンfiles_panelをクリックします。
    Open fileブラウザウィンドウが開きます。
  6. load1.csvを探して選択します。
  7. Open > Importをクリックします。
  8. Saveをクリックし、新しい荷重-時間履歴をHyperMeshデータベースに書き込みます。
  9. もう1つの荷重-時間履歴lth2load2.csvを読み込んで生成します。

    rd2070b_load-time_dialog
    図 15. 荷重-時間履歴の読み込み
  10. Plot L-Tをクリックし、荷重-時間履歴を表示させます。
  11. Load Time Historyウィンドウを閉じます。
  12. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクLoading Sequencesに導かれます。

    rd2070b_load_time
    図 16. 荷重-時間履歴の定義
    注: DACフォーマットのファイルはHyperGraphで簡単に読み込むことが可能で、FPMで用いるCSVフォーマットに変換できます。

荷重順序

このステップでは、2つの荷重時刻歴の1つのイベントが生成されます。言い換えれば、2つの荷重時刻歴で生じる応力の線形の重ね合わせが、解析の間に要求されたことになります。このイベントを用いて、1つの荷重順序が構成されます。
  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクLoading Sequencesが選択されていることを確認します。
  2. Addをクリックします。
    Loading Mappingウィンドウが開きます。
  3. ChannelsにLTH1LTH2を選択します。
  4. SubcaseにSUBCASE1SUBCASE2を選択します。
  5. ラジオボタンAutoを有効にし、イベントの作成法はデフォルトのSingle Eventのままとします。
  6. +をクリックし、2つのサブケース、2つのチャンネルのシングルイベントを作成します。


    図 17. 荷重-時刻歴を静的サブケースと関連付けするための荷重マッピング
  7. Saveをクリックしてウィンドウを閉じ、選択されたサブケースとチャンネルを用いて疲労イベントを作成します。

    rd2080b_loading_sequence
    図 18. 荷重順序の定義

ジョブのサブミット

  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクSubmit Analysisが選択されていることを確認します。
  2. Save .femファイルアイコンfiles_panelをクリックします。
    Save Asブラウザウィンドウが開きます。
  3. ファイルを保存するディレクトリをセットし、File nameにctrlarm_fpmtut.femと入力します。
  4. Saveをクリックしてプウィンドウを閉じます。
  5. Saveをクリックし、OptiStructモデルファイルを保存します。
  6. Run Optionにanalysisを選択します。
  7. Submitをクリックします。
    これでOptiStruct 2022が起動し、疲労解析が実行されます。ジョブが成功した場合、に選択されたディレクトリに新しい結果ファイルが現れます。
    そのディレクトリに書かれるデフォルトのファイルは:
    ctrlarm_fpmtut.0.3.fat 反復ステップでのそれぞれの疲労サブケースの疲労解析結果を含むASCIIフォーマットファイル。
    ctrlarm_fpmtut.h3d 静解析の結果と疲労解析の結果の両方の Hyper 3D バイナリ結果ファイル。
    ctrlarm_fpmtut.out ファイルのセットアップ、疲労問題のセットアップ、計算時間の情報などを含むOptiStruct出力ファイル。ワーニングやエラーもこのファイルで確認します。
    ctrlarm_fpmtut.stat 解析のプロセスの間のそれぞれのステップでのCPU情報を提供する、解析のプロセスの要約。
    注: filename.#.fatは、疲労最適化が実行される場合に限り、最初と最後の反復計算において各疲労サブケースについて作成されます。


    図 19. 疲労解析のサブミット

結果のポスト処理

  1. Fatigue AnalysisツリーでタスクPost-processingが選択されていることを確認します。
    前のサブミットの後、疲労解析が正常に終了すると、自動的にこのタスクに入ります。
  2. FatigueサブケースにSelect Subcaseが選択されていることを確実にします。
  3. Result TypeとData Componentに、コンター表示したいデータをドロップダウンメニューから選択します。
  4. Load H3D Results (HV)をクリックします。
    これでHyperViewが起動し、ctrlarm_fpmtut.h3d結果ファイルが読み込まれます。これは、選択された結果タイプとコンポーネントについて、結果のコンターを適用します。より詳細な結果については、HyperViewを使用することができます。
  5. Exitをクリックし、Fatigue Process Managerをアンロードします。


    図 20. ポスト処理


    図 21. HyperViewでのダメージコンター