OS-T:8030 一般的な輸送機モデルのフラッター解析

このチュートリアルでは、KE手法を使用した、一般的な輸送機(GTA)モデルのフラッター解析について説明します。

前処理は、OptiStructユーザープロファイルで、Altair HyperWorksを使用して行います。既存の構造データおよび空力弾性データを含むモデルがベースモデルとして使用されます。このチュートリアルでは、フラッター解析に固有のエンティティの作成について説明します。

フラッターは動的不安定性であり、弾性体上の空力荷重がその固有振動モードと連成し、振幅が増大する振動運動を生じさせます。

フラッター解析を使用して、指定された高度でフラッターを回避するための臨界速度を特定します。これが求められると、設計者はこの臨界速度に近づかないことを目指します。

以下の演習が含まれます:
  • KE手法を使用したフラッター解析の定義
  • 複素固有値関連エントリの定義
  • ジョブのサブミット
  • 結果のポスト処理

HyperWorksの起動とモデルの読み込み

チュートリアルのモデルファイルの入手方法については、モデルファイルへのアクセスを参照してください。このチュートリアルに必要なモデルファイルはaeroelasticity_flutter.femです。

  1. モデルファイルを作業ディレクトリにコピーします。
  2. HyperWorksを起動します。
  3. メニューバーFile > Import > Solver Deckをクリックします。
  4. モデルファイルを選択してOpenをクリックします。
  5. Solver Import Optionsダイアログで、ReaderでOptiStructを選択します。
    OptiStructユーザープロファイルが読み込まれます。HyperWorksの機能は、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダなどを正しく設定することで、OptiStructモデルを作成することができます。


    図 1. HyperWorksOptiStructユーザープロファイル
  6. Importをクリックします。
    ベースとモデルをHyperWorks Desktopに読み込みます。


    図 2. 航空機のベースモデル

Aeroelasticityブラウザを開く

Aeroelasticityブラウザ は、このチュートリアルの今後のタスクで利用します。

  1. メニューバーView > Ribbons > 空力弾性をクリックします。
    メニューバー空力弾性リボンが表示されます。
  2. 空力弾性リボン上で任意のツールグループにカーソルを合わせ、表示されるサテライトアイコンをクリックします。
    Aeroelasticityブラウザが開きます。


    図 3. Aeroelasticityブラウザへのアクセス

モデルのセットアップ

AEROエントリの作成

このステップでは、参照パラメータを定義するためのAEROエントリを作成します。

  1. Aeroelasticityブラウザで、AeroModuleを展開します。
  2. Controlsフォルダーを右クリックし、Create > AEROを選択します。
    AEROのコレクターは、Controlsの下に作成されます。
  3. 図 4に示すように、AEROに値を入力します。


    図 4. AEROエントリの定義

MKAERO1エントリの作成

このステップでは、MKAERO1エントリを使用して、マッハ数と換算振動数のテーブルを定義します。各MKAERO1エントリで使用できるフィールドは最大で8つのみのため、2つのMKAERO1エントリを作成します。

AEROエントリからの参照密度と共にこれらの値を使用して、空力マトリックスを計算します。

  1. AeroelasticityブラウザControlsフォルダーを右クリックし、Create > MKAERO1を選択します。
    MKAERO1のコレクターは、Controlsの下に作成されます。
  2. コレクターに任意の名前を入力します。
    このチュートリアルでは、このコレクターをMKAERO1_1と呼びます。
  3. Num Mach numbersに、1と入力します。
  4. 単一のマッハ数に、0.3と入力します。
  5. Num Frequencyに、8と入力します。
  6. を選択します。
  7. 図 5に示すように、換算振動数を入力します。


    図 5. 1つ目のMKAERO1エントリの定義
  8. このプロセスを繰り返し、2つ目のMKAERO1エントリを作成します。
    1. 任意の名前を入力します。
      このチュートリアルでは、このコレクターをMKAERO1_2と呼びます。
    2. 換算振動数には、図 6の値を使用します。


      図 6. 2つ目のMKAERO1エントリの定義

FLFACTエントリの作成

このステップでは、3つのFLFACTエントリが作成され、3セットの空力係数 - マッハ数 M i MathType@MTEF@5@5@+= feaahqart1ev3aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamytamaaBa aaleaacaWGPbaabeaaaaa@37DF@ 、換算振動数 K j MathType@MTEF@5@5@+= feaahqart1ev3aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaam4samaaBa aaleaacaWGQbaabeaaaaa@37DE@ 、および質量密度 ρ k MathType@MTEF@5@5@+= feaahqart1ev3aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaeqyWdi3aaS baaSqaaiaadUgaaeqaaaaa@38CF@ が定義されます。
  1. AeroelasticityブラウザControlsフォルダーを右クリックし、Create > FLFACTを選択します。
    FLFACTのコレクターは、Controlsの下に作成されます。
  2. FORMATにドロップダウンメニューからFactorsを選択します。
    このオプションで、直接、空力係数値のリストを指定できます。


    図 7. IDSを使用したFLFACTエントリの定義
  3. コレクターに任意の名前を入力します。
    このチュートリアルでは、このコレクターをFLFACT_DENSと呼びます。このエントリは、密度比の指定に使用されます。
  4. Num Factorsに、1と入力します。
  5. F(空力係数値)に、1.0と入力します。
    これは、1.0という単一の密度比を持つFLFACTエントリを定義します。
  6. このプロセスを繰り返し、2つ目のFLFACTエントリを作成します。
    1. コレクターに任意の名前を入力します。
      このチュートリアルでは、このコレクターをFLFACT_MACHと呼びます。このエントリは、マッハ数の指定に使用されます。
    2. Num Factorsに、1と入力します。
    3. Fに、0.3と入力します。
  7. 3つ目のFLFACTエントリを作成します。
    1. FORMATにドロップダウンメニューからTHRU_FORMATを選択します。
      これで、初期値、最終値、および中間値を使用して空力係数値が定義されます。詳細については、リファレンスガイドをご参照ください。
    2. コレクターに任意の名前を入力します。
      このチュートリアルでは、このコレクターをFLFACT_RFREQと呼びます。このエントリは、換算振動数の指定に使用されます。
    3. 図 8に示すように、ブラウザに値を入力します。


      図 8. THRU_FORMATを使用したFLFACTエントリの定義

FLUTTERエントリの作成

このステップでは、FLUTTERエントリを使用して、フラッター解析のセットアップを定義します。前のステップで定義したFLFACTエントリも、このFLUTTERエントリで参照されます。

  1. AeroelasticityブラウザAero Loadsフォルダーを右クリックし、Create > Aero Loads > FLUTTERを選択します。
  2. コレクターに任意の名前を入力します。
    このチュートリアルでは、このコレクターをFLUTTERと呼びます。
  3. METHODにドロップダウンメニューからKEを選択します。
    これにより、フラッター解析でKE手法が有効になります。
  4. 前に作成したFLFACTエントリを参照します。
    1. DENSで、をクリックして選択します。
    2. Advanced Selectionダイアログで、密度比に対して作成したFLFACTエントリを選択し、OKをクリックします。
    3. MACHで、マッハ数に対して作成したFLFACTエントリを選択します。
    4. RFREQで、換算振動数に対して作成したFLFACTエントリを選択します。
  5. IMETHにドロップダウンメニューからLを選択します。
    これで、補間方法が線形に設定されます。


    図 9. FLUTTERエントリの定義

EIGRLエントリの作成

フラッター解析では、OptiStructは、自由度として選択した周波数範囲内の構造-振動モードが使用されるモーダルアプローチを使用します。したがって、EIGRL Bulk Data Entryが定義されます。

  1. Aeroelasticityブラウザで、StructureModuleを展開します。
  2. Eigenvalues右クリックし、Create > EIGRLを選択します。
    EIGRLのコレクターは、Eigenvaluesの下に作成されます。
  3. コレクターに任意の名前を入力します。
    このチュートリアルでは、このコレクターをEIGRLと呼びます。
  4. エントリを定義するには、図 10に示す値を入力します。


    図 10. EIGRLエントリの定義

PARM, VREFエントリの作成

フラッター解析の出力は、速度-減衰(V-g)および速度-振動数(V-f)カーブの形で後処理できます。 PARAM, VREF は、フラッター解析から出力された速度を別の単位系に変換するために使用できます。

このモデルは、mm、N、秒の単位で構築されます。出力される速度(mm/s単位)は、このパラメータを使用してノットに変換されます。

  1. Aeroelasticityブラウザで、AeroModuleを展開します。
  2. Controls右クリックし、Create > PARAMを選択します。
    PARAMのコレクターは、Controlsの下に作成されます。
  3. コレクターでスクロールダウンして、VREFチェックボックスを選択します。
  4. VALUEに514.444と入力します。
    これにより、フラッター解析から出力された速度が514.444の値で除算され、1mm/s = 1 514.444 MathType@MTEF@5@5@+= feaahqart1ev3aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaaSaaaeaaca aIXaaabaaeaaaaaaaaa8qacaaI1aGaaGymaiaaisdacaGGUaGaaGin aiaaisdacaaI0aaaaaaa@3C02@ ノットとなります。

フラッター解析サブケースの作成

このステップでは、フラッター解析のサブケースで先に作成したBulk Data Entriesを参照させます。

  1. Aeroelasticityブラウザで、SolutionJobSetupを展開します。
  2. Case Controls右クリックし、Create > Subcasesを選択します。
  3. コレクターに任意の名前を入力します。
    このチュートリアルでは、このコレクターをFLUTTERと呼びます。
  4. Analysis typeに、ドロップダウンメニューからAerodynamic Flutterを選択します。
  5. 以前に作成したBulk Data Entriesを参照します(図 11参照)。


    図 11. フラッター解析のサブケースの定義

入力ファイルのエクスポート

このステップでは、入力ファイルを作業ディレクトリにエクスポートします。このファイルは、後にソルバーOptiStructを使用した解析に使用されます。

  1. メニューバーFile > Export > Solver Deckをクリックします。
  2. ファイル名を入力します。
  3. Saveをクリックします。
    Solver Export Optionsダイアログが開きます。
  4. ここでは、ダイアログのデフォルトのオプション設定をそのまま使用します。
  5. Exportをクリックします。
    これで、このファイルは、作業ディレクトリにエクスポートされます。

ジョブのサブミット

  1. Windowsのスタートメニューで Start > Altair 2022 > Compute Console.
  2. Input fileのを選択し、作業ディレクトリをブラウズして目的の入力ファイルを探します。
  3. Openをクリックします。
  4. Optionsのをクリックします。
    1. Select Solver Optionsダイアログで、-ntチェックボックスをクリックします。
    2. 引数に8を入力します。
    3. OK.をクリックします。
    4. -outのチェックボックスを有効にします。
  5. Apply Selectedをクリックします。
  6. Closeをクリックします。
  7. Runをクリックします。


    図 12. Altair Compute Console

    ジョブが成功した場合、作業ディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーが発生した場合は、aeroelasticity_flutter.out ファイルでエラーメッセージを確認し、入力デックのデバッグに役立ててください。

結果のポスト処理

フラッター解析サマリーの確認

フラッター解析のサマリーは、デフォルトでは.fltファイルで提供されています。このASCIIファイルは、任意のテキストエディターで表示できます。

KE手法の場合は、各POINTがモード番号に対応します。詳細については、.fltファイルとフラッター解析ユーザーズガイドをご参照ください。


図 13. .fltファイルのフラッター解析サマリー

定義上、不安定性(フラッターまたは発散)は、減衰値がゼロになると発生します。

このポイントで、周波数がゼロであれば、不安定性は発散によるものです。

ゼロでなければ、不安定性はフラッターによるものです。このチュートリアルの範囲では(周波数がゼロでない)、フラッターによる不安定性の特定について説明します。

  1. .fltファイルの減衰値を確認してください。
    各モードでの不安定性は、速度が増加して、減衰値の符号が負から正に変化する(負には戻らない)と必ず生じます。
  2. この例の7番目のモードを見てください。
    フラッターポイントは、(KFREQ, velocity) = (0.5, 3.430E+02) と (KFREQ, velocity) = (0.6111, 3.087E+02)の間に生じます。
  3. 他のモードでフラッターポイントを見つけるには、減衰値が同様の変化を示すモードを特定します。
    このチュートリアルモデルでは、フラッターポイントは、モード7、10、11、および13で生じます。

V-gおよびV-fプロットからのフラッターポイントの特定

V-gおよびV-fプロットがより視覚的になり、堅牢なポスト処理方法となっています。前のステップで特定されたすべてのフラッターポイントの中で、最低速度に対応するフラッターポイントが特定されます。

  1. Aeroelasticityブラウザで、Flutter Curvesツールを選択します。


    図 14. Flutter Curvesツールへのアクセス
  2. Flutter Curvesダイアログで、.fltファイルをインポートします。
  3. モード7、10、11、および13に対応するカーブを選択します。
  4. X AxisにVELOCITYを選択します。
  5. Y AxisにDAMPINGを選択します。
  6. V-gカーブをプロットするには、Plotを選択します。


    図 15. Flutter CurvesツールでV-gカーブをプロットするためのステップ
  7. フラッターポイント(減衰 = 0の場所)を特定します。
    1. 最低速度に対応するフラッターポイントを見つけます。
      この例では、7番目のモード(フラッターポイントA)と特定されます。これは、回避する必要のある最もクリティカルなフラッターポイントです。
    2. このプロットをさらにズームインして、このフラッターポイントでの速度が327.668であることを特定します。


      図 16. フラッターポイントの特定. 最低速度に対応するフラッターポイントが視覚的に特定されます。
  8. Flutter Curvesダイアログで、7番目のモードのみを選択します。
  9. X AxisにVELOCITYを選択します。
  10. Y AxisにFREQUENCYを選択します。
  11. V-fカーブをプロットするには、Plotを選択します。


    図 17. Flutter CurvesツールでV-fカーブをプロットするためのステップ
  12. グラフ上でズームインして、7番目のモードの速度が327.688での周波数値を特定します。
    このチュートリアルでは、周波数値は13.334です。


    図 18. V-fカーブからのクリティカルなフラッターポイントにおける周波数値の特定

    このようにして、V-gおよびV-fプロットを使用してフラッターが生じる最低速度を特定します。その後、システムの周波数が特定されます。フラッターモードの密度比からは、フラッターの不安定性が生じる高度がわかります。これで、システムがこの速度および高度に近づかないようにすることができます。