OS-T:1020 スプラッシュシールドのノーマルモード解析

本チュートリアルでは、自動車のスプラッシュシールドの既存の有限要素モデルを使用し、ノーマルモード解析のセットアップと実行の仕方を示します。モデルのモード形状の測定には、HyperViewポストプロセッシングツールが用いられます。

本チュートリアルの実行には、sshield.femファイルが必要です。

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルの読み込み

  1. File > Import > Solver Deckをクリックします。
    Importタブがタブメニューに追加されます。
  2. File typeにOptiStructを選択します。
  3. Filesアイコンfiles_panelを選択します。
    Select OptiStruct Fileブラウザが開きます。
  4. 自身の作業ディレクトリに保存したsshield.femファイルを選択します。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  5. Openをクリックします。
  6. Import、続いてCloseをクリックし、Importタブを閉じます。

モデルのセットアップ

剛体要素の特性の確認

モデルには、シールドがボルトで結合されている位置に置かれている2つの剛体“spider”があります。これはボルトとシールドの間の相互作用の簡易的な表現です。ボルトはシールドに比べ、十分に、より剛であると仮定されています。

モデル内の“spider”をはっきりと区別できるようにするために、Shaded Elements and Mesh LinesアイコンvisualizationElementsShadedWithMesh-24をクリックします。

剛体要素の従属節点には、拘束された全6自由度があります。それ故、それぞれの "spider" は相互に動かないようにシェルのメッシュの節点と結合されています。visualizationElementsWireframeSkinOnly-24アイコンをクリックして、Wireframe Elements Skin Only モードに反転させます。

  1. メニューバーからMesh > Edit > 1D Elements > Rigidsをクリックし、Rigidsパネルを開きます。
  2. reviewをクリックします。
  3. 剛体要素の1つを選択します。
    モデリングウィンドウ内で、HyperMeshは、剛体要素と2つの端の節点のIDを、独立節点を示す'I'および従属節点を示す'D'と共に表示します。HyperMeshは、選択された要素の拘束自由度をRigidsパネルのdofチェックボックスに示します。このモデルの全ての剛体は、全自由度が拘束されているはずです。
  4. returnをクリックし、メインメニューに戻ります。

材料の生成

読み込まれたモデルは、材料のない4つのコンポーネントコレクターから成っています。シェルのコンポーネントコレクターには材料コレクターが生成され、割り当てられる必要があります。剛体要素には材料の割り当ては必要ありません。

  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Materialを選択します。
    デフォルトの材料がエンティティエディターに表示されます。
  2. Nameにsteelと入力します。
  3. Card ImageをMAT1に設定します。
  4. 各欄の横に材料の値を入力します。
    1. E(ヤング率)に2E+05と入力します。
    2. NU(ポワソン比)に0.3と入力します。
    3. RHO(材料密度)については、7.85E-009と入力します。
      材料密度は、ノーマルモードのソリューションシーケンスに必要です。


    図 1. steelの材料特性値
新しい材料steelが作成されました。この材料は、OptiStructの線形等方性材料モデルMAT1を用いています。

プロパティの編集

シェルの板厚の値も修正される必要があります。
  1. ModelブラウザのPropertiesフォルダーで、designをクリックします。
    設計プロパティのエントリがエンティティエディターに表示されます。
  2. T (thickness)に0.25と入力します。
  3. プロパティに割り当てられた材料をgnからsteelに変更します。
    1. Materialに、(1) gn > Materialをクリックします。
    2. Select Materialダイアログでを選択し、OKをクリックします。
  4. 同様にして、プロパティnondesign上で板厚値(T)を0.25に、材料をgnからsteelに変更します。

OS_1010_07
図 2. designおよびnondesignプロパティエントリの板厚値を更新

荷重と境界条件の適用

モデルは、ボルト位置がSPCを用いて拘束されます。拘束条件は荷重コレクター 'constraints' に置かれます。

ノーマルモード解析の実行には、実固有値の取り出し(EIGRL)カードがサブケース内で参照される必要があります。実固有値取り出しカードは、HyperMeshでは荷重コレクターの EIGRLカードイメージで定義されます。このコレクターは他のいかなる荷重も含むべきではありません。

EIGRLカードの作成

次のステップでは、モデルの外側の4辺のうち、向かい合った2辺を動かないように拘束します。他の2辺は非拘束のままとします。穴の周辺に合計1000Nの荷重を、正のZ方向に作用させます。
  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Load Collectorを選択します。
    デフォルトの荷重コレクターがエンティティエディターに表示されます。
  2. NameにEIGRLと入力します。
  3. Card Imageには、EIGRLを選択します。

    OS_1010_08
    図 3. Card Imageの選択
  4. Colorをクリックし、カラーパレットから色を選択します。
  5. V2に200.000と入力します。
  6. NDに6と入力します。

    OS_1010_09
    図 4. 新規荷重コレクター"EIGRL"をModelブラウザに作成

拘束の作成

  1. constraintsという名の荷重コレクターを作成します。
  2. メニューバーからBCs > Create > Constraintsをクリックし、Constraintsパネルを開きます。
  3. 節点セレクターがアクティブな状態で、剛体スパイダーの中央にある2つの節点を選択します。

    rd1020_constraints
    図 5. ボルト位置での拘束のための節点の選択
  4. 全てのDOFsを値0.0で拘束します。
  5. load types =をSPCに設定します。
  6. createをクリックします。
    2つの拘束条件が作成されました。モデリングウィンドウの選択された節点位置に、拘束条件のマーク(三角形)が現われます。ラベルconstraintsがチェック‘ON’である場合、数字123456がその記号の横に書かれます。これは全ての自由度が拘束されていることを示します。
  7. returnをクリックします。

荷重ステップの作成

  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Load Stepを選択します。
    デフォルトの荷重ステップがエンティティエディターに表示されます。
  2. Nameにboltedと入力します。
  3. 解析のタイプをNormal modesに設定します。
  4. SPCを定義します。
    1. SPCに、Unspecified > Loadcolをクリックします。
    2. Select Loadcolダイアログでconstraintsを選択し、OKをクリックします。
  5. METHOD(STRUCT)を定義します。
    1. METHOD(STRUCT)に、Unspecified > Loadcolをクリックします。
    2. Select LoadcolダイアログでEIGRLを選択し、OKをクリックします。

これで、荷重コレクターconstraints内のconstraintsと荷重コレクターEIGRL内のreal eigenvalue extraction dataを参照するOptiStruct荷重ステップが作成されました。



図 6. bolted荷重ステップの作成

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルをクリックします。

    OS_1000_13_17
    図 7. OptiStructパネルへのアクセス
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてsshield_completeと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをanalysisにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックし、OptiStructジョブを開始します。
ジョブが成功した場合、sshield_complete.femが書き出されたディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーがある場合、sshield_complete.outファイルはデバッグを手助けするエラーメッセージを探すのに良い場所です。
そのディレクトリに書かれるデフォルトのファイルは:
sshield_complete.html
問題の定式と解析結果のサマリーに関する解析のHTMLレポート。
sshield_complete.out
ファイルの設定、最適化問題の設定、実行に必要なRAMおよびディスクスペースの推定量、各最適化反復計算の情報、解析時間等、特定の情報を含むOptiStructの出力ファイル。ワーニングおよびエラーに関しては、このファイルを確認すること。
sshield_complete.h3d
HyperViewバイナリ結果ファイル。
sshield_complete.res
HyperMeshバイナリ結果ファイル。
sshield_complete.stat
解析のプロセスの間のそれぞれのステップでのCPU情報を提供する、解析のプロセスの要約。

結果の表示

OptiStructノーマルモード解析ではデフォルトで固有ベクトルの結果が表示されます。本演習では、これらの結果をHyperViewで可視化する方法について解説します。

モデルおよび結果ファイルの読み込み

ここでは、ファイルHyperViewアニメーションウィンドウに読み込みます。
  1. メッセージANALYSIS COMPLETEDがMechanical Solver Viewウィンドウに表示されたら、Resultsをクリックします。
    HyperViewが起動され、結果が読み込まれます。
  2. 表示されたら、Closeをクリックし、メッセージウィンドウを閉じます。

変形形状の表示

境界条件が正しく定義されているか、また、モデルが予測した通り変形しているかを確認するためには、モデルの変形形状を表示させると役立ちます。このセクションではDeformedパネルを用いて、最後のモードの変形形状を表示させます。
  1. 下側のツールバーでanimation selectorスイッチanimationLinear-24をクリックし、Set Modal Animation ModeanimationModal-24を選択します。
  2. DeformedツールバーアイコンresultsDeformed-24を選択します。
  3. Result type: はEigen Mode (v) にセットしたままにします。
  4. ScaleをModel unitsにセットします。
  5. TypeにUniformをセットし、Valueにスケールファクター10を入力します。
    • これは最大変位がモデルの10単位となることを意味し、他の変位はそれに比例します。
    • 1.0より大きいスケールファクターを使用すると変形は拡大し、1.0より小さい場合は縮小します。この場合、すべての方向の変位を強調させます。

    OS_1010_11
    図 8. Deformed Shapeパネル
  6. Applyをクリックします。
  7. Undeformed shapeの下のShowをWireframeにセットします。
    変形後のモデルが変形前のメッシュに重ねてモデリングウィンドウ内に表示されます。
  8. Resultsブラウザプルダウンメニューで、下に示すようにLoad Case and Simulation Selectionドロップダウンメニューを用いて様々な様々なサブケースに表示を変更することができます。

    rd1020_hv_results
    図 9.
  9. リストからMode 6 - F=1.496557E+02を選択し、モード6を表示させます。
  10. モード形状をアニメーション表示するには、アニメーションツールバーのStart/Pause AnimationanimationStart-24をクリックします。
  11. アニメーションの速度を制御するには、下に示すようにアニメーションツールバーのAnimation Controlsを用います。

    animation_toolbar
    図 10.
  12. モード形状を再確認します。

まとめ

この解析では、ボルトはシールドに比べて十分に剛であることが仮定されています。ボルトはアルミ製でなければならず、シールドがスチール製であるような場合、モデルの修正が必要で、再解析を行う必要があるかもしれません。

スプラッシュシールドの固有振動数は50 Hzより高くすることが求められています。このモデルでは、1つのモードMode 1が制約条件を満たしていません。設計仕様では、大きな質量の増加の無い範囲で内側の拘束されていない円形リブの修正が許されています。上記の拘束条件で最初のモードを50 Hzより上に押し上げるリブの形状はあるでしょうか? この部品のリブ位置の最適化については、チュートリアルOS-T:2020 自動車のリブ付スプラッシュシールドの固有振動数増加をご参照ください。