ランダム振動に重ね合わせた正弦波振動は、軍事用途で使用する標準的手法です。
サインオンランダム振動の一般的な用途は航空機分野です。飛行中の航空機はランダム振動にさらされています。ランダム振動のほか、さまざまな周波数の正弦波振動がタービンエンジンやローターブレードから伝わってきます。航空機の各部品には、サインオンランダム振動の下で一定のライフサイクルを確保することが要求されます。この用途は航空機に限定されたものではなく、高速回転部を持つあらゆる可動機械でも、サインオンランダム振動が程度の違いはあれど発生する可能性があります。
サインオンランダム振動の入力荷重は、混合モード(ランダム荷重のPSDと特定振幅の正弦波荷重)を使用して表現できます。
損傷計算
サインオンランダム振動に起因する損傷は、通常のランダム振動疲労の場合と類似の手順で計算できます(ランダム応答疲労解析をご参照ください)。正弦波荷重の重ね合わせに起因する差異に応じて、スペクトルモーメントの計算方法が異なります。
これらのモーメントは次のように計算できます。
(1)
ここで、
-
- モーメントの次数。
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- ランダム応答の周波数値。
-
- 周波数
における応力PSD応答値。
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- 応力PSDに存在する周波数の数。
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- サイントーンを構成する周波数の数。
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- FATLOADのHARMO継続行で設定したサイントーンの周波数値。
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- FATLOADのHARMO継続行で設定したi番目の振動周波数のサイントーンに起因する応力振幅。
この式の第2項はサイントーンの寄与度です。サインオンランダムのサイクル数を計算するうえでお勧めできる確率密度関数(PDF)はDirlikです。ランダム応答疲労解析の説明をご参照ください。
入力
サインオンランダム疲労で基本となるサブケースは、ランダム応答解析と周波数応答解析です。目的のFATEVNTエントリで、ランダム応答解析を参照するFATLOADと周波数応答解析を参照する別のFATLOADを指定して、サインオンランダム疲労をアクティブ化する必要があります。
周波数応答解析を参照するFATLOADデータでは、対象とする各周波数(Hz)とその振幅因子もHARMO継続行に記述する必要があります。
例として、SUBCASE 10がランダム解析サブケース、SUBCASE 20が周波数応答解析サブケースであるとします。サインオンランダム疲労をアクティブ化する方法を次の設定に示します。
FATLOAD,100,,10
FATLOAD,200,,20
+,HARMO,1.0,0.1,15.0,1.0,20.0,1.1
FATEVNT,1000,100,200
この設定では、3つのサイントーン周波数値として1.0、15.0、20.0を使用し、これらに対応する振幅因子をそれぞれ0.1、1.0、1.1としています。
出力
損傷と寿命から見た一般的な疲労を出力できます。損傷の出力は、FATSEQバルクデータエントリで設定した、振動に対する曝露時間Tで乗算されたうえで報告されます。