OS-T:1010 コーヒーポットのふたの温度応力解析

本チュートリアルでは、拘束条件をどのように加えてOptiStruct有限要素解析を実行するかを、既存のプラスチックコーヒーポットのふたの有限要素モデルを用いて示します。ふたの変形や応力特性の測定にはHyperViewポストプロセッシングツールが用いられます。

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルのオープン

  1. File > Open > Modelをクリックします。
  2. optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したcoffee_lid.hmファイルを開きます。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  3. Openをクリックします。
    coffee_lid.hmデータベースが現在のHyperMeshセッションに読み込まれます。

モデルのセットアップ

材料の生成

モデルは、材料のない2つのコンポーネントコレクターから成っています。コンポーネントコレクターには材料コレクターが生成され、割り当てられる必要があります。

  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Materialを選択します。
    デフォルトの材料がエンティティエディターに表示されます。
  2. Nameにplasticと入力します。
  3. Card ImageをMAT1に設定します。
  4. 各欄の横に材料の値を入力します。
    1. E(ヤング率)に1137と入力します。
    2. NU(ポワソン比)に0.26と入力します。
    3. A(線膨脹係数)に8.1e-005と入力します。
    4. RHO(材料密度)については、静解析のみが実行されるため、定義しないでおきます。


    図 1. plasticの材料特性値
新しい材料plasticが作成されました。この材料は、OptiStructの線形等方性材料モデルMAT1を用いています。

PSHELLプロパティの編集

  1. ModelブラウザのPropertiesフォルダーで、PSHELLをクリックします。
    PSHELLプロパティのエントリがエンティティエディターに表示されます。
  2. 板厚値Tが2.5に設定されていることを確認します。
  3. Materialに、Unspecified > Materialをクリックします。
    注: Materialの横の値入力欄は、<Unspecified>となっています。これは、このプロパティによって参照される材料特性がないことを示します。

    OS_1010_02
    図 2. プロパティPSHELLに材料plasticを選択
  4. Select Materialダイアログでplasticを選択し、OKをクリックします。
    材料plasticがプロパティPSHELLに割り当てられます。

    OS_1010_03
    図 3. Entity EditorのPSHELLのプロパティエントリ欄
  5. 材料plasticをプロパティPSHELL1に割り当てます。
プロパティコレクターPSHELLおよびコンポーネントコレクターPSHELL1が、材料plasticを参照するようになりました。対応するプロパティを参照するコンポーネントコレクターは、指定された材料で自動的に更新されます。エンティティエディターにアクセスしてこれらのプロパティまたはコンポーネントコレクターのいずれかを編集した場合、Material欄はすべてplasticに設定されている点にご留意ください。

荷重と境界条件の適用

温度荷重は既にモデルに付与されています。続くステップではモデルに拘束を与えます。

荷重コレクターの作成

  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Load Collectorを選択します。
    デフォルトの荷重コレクターがエンティティエディターに表示されます。
  2. Nameにconstraintsと入力します。
  3. Colorをクリックし、カラーパレットから色を選択します。
  4. Card ImageをNoneに設定します。
    新しい荷重コレクターconstraintsが生成されます。


    図 4. constraints荷重コレクターの作成

注ぎ口切れ込みの角の拘束条件の生成

  1. メニューバーからBCs > Create > Constraintsをクリックし、Constraintsパネルを開きます。
  2. エンティティセレクターをnodesにセットし、注ぎ口切れ込みの角の2節点を選択します。

    os1010_pic1
    図 5. 注ぎ口切れ込みの角の拘束節点の選択
  3. DOF3のみを拘束します。
    • チェックマークのついている自由度は拘束され、ついていないものはフリーとなります。
    • Dofs 1、2および3は、x、y、z方向の並進自由度を表します。
    • Dof 4、5、および6は、x、y、z方向の回転自由度を表します。
  4. createをクリックします。
    2つの拘束条件が作成されました。2つの拘束の記号(三角)がグラフィックエリアの選択された節点の所に現われます。拘束の記号の横には数字3が書かれますが、これは拘束の自由度を示しています。
  5. size欄に1.0と入力します。
    モデリングウィンドウ内の拘束の記号の大きさが変わります。
  6. returnをクリックし、メインメニューに戻ります。

注ぎ口切れ込みの反対側の拘束条件の生成

  1. メニューバーからGeometry > Create > Nodes > XYZをクリックし、NodesXYZパネルを開きます。
  2. XYZパネルで、節点の座標を定義します。
    1. x欄に0.0と入力します。
    2. y欄に-10.0と入力します。
    3. z欄に0.0と入力します。
  3. createをクリックします。
    節点が座標 (0, -10, 0) に生成されます。これはコーヒーポットのふたの中心線を示しています。
  4. returnをクリックし、メインメニューに戻ります。
  5. メニューバーからBCs > Create > Constraintsをクリックし、Constraintsパネルを開きます。
  6. エンティティセレクターを使って、図 6に示す節点を選択します。

    os1010_pic2
    図 6. ヒンジのモデル化のための注ぎ口切れ込みの反対側の拘束条件の生成
  7. dof1, dof2, and dof3のみを拘束します。
  8. createをクリックします。
    4つの拘束条件が作成されました。これはモデリングウィンドウ内の拘束の記号で確認できます。
  9. returnをクリックし、メインメニューに戻ります。
  10. Geomページでtemp nodesパネルを選択します。
  11. clear allをクリックします。
    これで、(0, -10, 0)に生成された仮の節点が消去されます。
  12. returnをクリックします。

荷重ステップの作成

  1. Modelブラウザで右クリックしコンテキストメニューからCreate > Load Stepを選択します。
    デフォルトの荷重ステップがエンティティエディターに表示されます。
  2. Nameにbrew cycleと入力します。
  3. 解析のタイプをLinear Staticに設定します。
  4. SPCを定義します。
    1. SPCに、Unspecified > Loadcolをクリックします。
    2. Select Loadcolダイアログでconstraintsを選択し、OKをクリックします。
  5. TEMPを定義します。
    1. TEMPに、Unspecified > Loadcolをクリックします。
    2. Select LoadcolダイアログでTHERMAL_LOADINGを選択し、OKをクリックします。

これで、荷重コレクターconstraints内のconstraintsと荷重コレクターTHERMAL_LOADING内のforcesを参照するOptiStruct荷重ステップが作成されました。



図 7. brew cycle荷重ステップの作成

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルをクリックします。

    OS_1000_13_17
    図 8. OptiStructパネルへのアクセス
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてlid_completeと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをanalysisにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックし、OptiStructジョブを開始します。
ジョブが成功した場合、lid_complete.femが書き出されたディレクトリに新しい結果ファイルがあるはずです。何らかのエラーがある場合、lid_complete.outファイルはデバッグを手助けするエラーメッセージを探すのに良い場所です。
そのディレクトリに書かれるデフォルトのファイルは:
lid_complete.html
問題の定式と解析結果のサマリーに関する解析のHTMLレポート。
lid_complete.out
ファイルの設定、最適化問題の設定、実行に必要なRAMおよびディスクスペースの推定量、各最適化反復計算の情報、解析時間等、特定の情報を含むOptiStructの出力ファイル。ワーニングおよびエラーに関しては、このファイルを確認すること。
lid_complete.h3d
HyperViewバイナリ結果ファイル。
lid_complete.res
HyperMeshバイナリ結果ファイル。
lid_complete.stat
解析のプロセスの間のそれぞれのステップでのCPU情報を提供する、解析のプロセスの要約。

結果の表示

変位と応力の結果は、線形静解析ではデフォルトでOptiStructから出力されます。続くステップでは結果をどのようにHyperViewに表示させるかを記します。

変形形状の表示

  1. メッセージANALYSIS COMPLETEDが Solver Viewウィンドウに表示されたら、Resultsをクリックします。
    HyperViewが起動され、結果が読み込まれます。
  2. ツールバー上のWireframe ElementsアイコンvisualizationElementsWireframe-24をクリックします。
  3. Animation modeをLinearanimationLinear-24に設定します。
  4. Deformed panelツールバーアイコンresultsDeformed-24を選択します。
  5. Deformedパネルで設定を定義します。
    1. Result typeをDisplacement (v)に設定します。
    2. ScaleをModel unitsにセットし、値2を入力します。
      これは最大変位がモデルの2単位となることを意味し、他の変位はそれに比例します。
    3. Undeformed Shapeの下のトグルをWireframeにセットします。
    4. ComponentとしてColorを選択します。
  6. Applyをクリックします。
変形後のモデルが変形前の元のメッシュに重ねて表示されるはずです。

os1010_pic3
図 9. モデルの単位を2にした時の変形前の元のメッシュに重ねた変形の等距離図表示
現在の問題についての理解を確認するために、以下の質問に回答してみます。
  • 変形形状はメッシュに与えられた境界条件に対して正しいように見えますか?

応力と変位のコンタープロットの表示

  1. ResultsツールバーでresultsContour-16をクリックし、Contour panelを開きます。
  2. Contour panelでセッティングを定義します。
    1. Result typeをDisplacement (v)に設定します。
    2. Data typeをMagに設定します。
      Magは変位の大きさを表します。
  3. Applyをクリックします。
    モデルのコンターが表示されるはずです。コンターは与えられた荷重と境界条件に対する変位場を表しています。
    • 最大変位の値はどのようになっていますか?
    • 最大変位の場所はどこに生じていますか?
    • モデルに与えられた境界条件に対して妥当と考えられますか?
  4. Contour panelでセッティングを定義します。
    1. Result typeをElement Stresses (2D & 3D)に設定します。
    2. Data typeをvonMisesに設定します。
  5. Applyをクリックします。
    モデルのそれぞれの要素は、与えられた荷重と境界条件に対する結果の要素のフォンミーゼス応力の目盛の色で表示されます。
    • 最大 von Mises 応力の値はどのようになっていますか?
    • 最大応力の場所はどこに生じていますか?
    • モデルに与えられた境界条件に対して妥当と考えられますか?
  6. File > Exitをクリックし、HyperViewを離れます。
この解析では、ヒンジの周りの領域が興味の対象です。ここにはやや高い応力が発生し、解決される必要があります。時間とともにポットのふたのヒンジ周りが摩耗するようなことが実験で示された場合、温度応力は疲労を引き起こす可能性があることになります。

rd1010_spout_cutout
図 10. 注ぎ口切れ込みの反対にあるヒンジ