ACU-T:3110 排気マニホールドの共役熱伝達 - CFDデータマッピング

前提条件

このチュートリアルを開始する前に、HyperWorks 入門チュートリアルである ACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperWorks CFDHyperViewの基本を理解しているものとします。このシミュレーションを実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperWorks CFDおよびAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、ここをクリックしてチュートリアルモデルをダウンロードしてください。 ACU-T3110_acuOptiStruct.hm をHyperWorksCFD_tutorial_inputs.zipから抽出します。

HyperWorks CFDデータベース(.hmファイル)には、メッシュ済みのジオメトリが含まれているため、このチュートリアルには、ジオメトリのインポートとメッシュ生成に関する手順は含まれません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1で図式的に示されています。この問題は、4つの入口と1つの出口を備えた排気マニホールドで構成されています。これらの入口には、マニホールドを取り付けるための鉄製ボルト用の穴があるフランジが設けられています。マニホールドのボディはステンレス鋼製です。


図 1. 排気マニホールドの概略図

入口の直径は0.036m、入口速度(v)は8.0m/s、流入する流体の温度(T)は700Kです。出口の直径は0.036mです。管壁の板厚は0.003m、フランジの板厚は0.01mです。

燃焼混合気が入口に流入して、マニホールド内部の対流によって熱が伝達されます。この熱伝達によって、マニホールドボディ内で変形と応力が生じます。この状況はOptiStructを使用してシミュレートできます。

この問題の流体は、次のような材料特性を持つ空気です。
密度(ρ)
1.225 kg/m3
粘度(μ)
1.781 * 10-5 kg/m-s
比熱(Cp
1005 J/kg-K
伝導率(k)
0.0251 W/m-K
この排気マニホールドは、以下の材料特性を持つ鋼として設計されています。
密度(ρ)
8000 kg/m3
比熱(Cp
500 J/kg-K
伝導率(k)
16.2 W/m-K

AcuSolveのシミュレーションでは、温度による空気の材料特性の変動は無視されます。

AcuSolveシミュレーションは、マニホールドの壁上の温度と圧力の分布を明らかにするため、定常状態の熱伝達をモデル化するように設定されます。

acuOptiStructコマンドからOptiStructの入力デックを作成するには、すべてのサーフェスについて節点サーフェス出力をアクティブにする必要があります。

OptiStructでは、ソリッドボディ内の変形と応力の計算に、接液面上の温度分布と力を使用します。

OptiStructの入力デックは、一方向の連成シミュレーション用に使用できるacuOptiStructユーティリティにより生成されます。以下の入力コマンドは、このシミュレーションにとって重要です:
-solids
対流熱伝達が生じるソリッドボディの入力名。
-den
ソリッドボディの密度値。
-spcsurfs
境界条件の拘束を指定する必要があるサーフェスのリスト。
-spcsurfsdof
サーフェスの自由度のリスト。
-spcsurfsdofvals
サーフェスの自由度値(デフォルトではゼロ)のリスト。
-type
OptiStructソルバーの応力解析タイプ。
このシミュレーションでは、拘束されるサーフェスはフランジのボルトとマニホールドの出口端部です。これらのサーフェスは6つの全自由度(平行移動と回転)で拘束されます。デフォルト値にはゼロが使用されます。デフォルト値にはゼロが使用されます。


図 2.

応力解析タイプには、変形が弾性域内に収まる定常線形が選択されます。すなわち、応力(σ)はひずみ(ε)の一次関数であると想定され、フックの法則に従って応力を計算できます。

HyperWorks CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > HyperWorks CFDをクリックしてHyperWorks CFDを起動します。
  2. HomeツールのFilesツールグループからOpen Modelツールをクリックします。


    図 3.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3110_acuOptiStruct.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
  5. 名前をManifold_TFSIとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてManifold_TFSIと入力するか、都合のいい名前を選択して入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

形状の検証

Validateツールは、モデル全体をスキャンし、サーフェスおよびソリッド上でチェックを実行して、形状に不具合(フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、スライバーなど)があればフラグ付けします。

シミュレーションの物理パートに集中するために、このチュートリアルの入力ファイルにはすでに検証済みの形状が含まれています。ジオメトリリボンのValidateアイコンの左上隅に青色のチェックマークが表示されていることを確認します。これは、形状が有効で、フロー設定に進めることを示しています。


図 4.

流れのセットアップ

シミュレーションパラメーターとソルバーの設定

  1. Flowリボンから Physicsツールをクリックします。


    図 5.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Time frequencyをSteadyに設定します。
    2. Turbulence modelにSpalart-Allmarasを選択します。
    3. Include gravitational accelerationHeat transferオプションを有効にします。


    図 6.
  3. Solver controls設定をクリックします。
  4. 以下のパラメータを確認します。


    図 7.

材料プロパティの割り当て

  1. Flowリボンから Materialツールをクリックします。


    図 8.
  2. 排気ボリュームを選択します。
  3. マイクロダイアログで、ドロップダウンからStainless steel (304)を選択します。


    図 9.
  4. ガイドバーをクリックすると、コマンドを実行し、ツール内に留まります。
  5. 空気ボリュームを選択します。
  6. マイクロダイアログで、ドロップダウンからAirを選択します。


    図 10.
  7. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。

流れ境界条件の割り当て

  1. Flowリボンから Constantツールをクリックします。


    図 11.
  2. 下図でハイライトされているマニホールド入口を選択します。


    図 12.
  3. マイクロダイアログで、Inflow velocity typeをNormalに、Normal velocityを8.0に、Temperatureを700に設定します。


    図 13.
  4. マイクロダイアログで、Turbulenceタブをクリックします。input typeをViscosity Ratioに設定し、viscosity ratio valueを40に設定します。


    図 14.
  5. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  6. Outletツールをクリックします。


    図 15.
  7. 下図でハイライトされている面を選択し、静圧と圧力損失係数がともに0に設定されていることを確認します。


    図 16.
  8. ガイドバーをクリックします。
  9. No Slipツールをクリックします。


    図 17.
  10. 壁フランジを選択します。


    図 18.
    注: フランジの底面および側面サーフェスが選択されていることを確認します。合計で12のサーフェスを選択する必要があります。
  11. マイクロダイアログで、Temperatureタブをクリックし、Convective heat coefficientを100に、Convective heat reference temperatureを303に設定します。


    図 19.
  12. ガイドバーをクリックします。
  13. 境界の凡例を使用して、サーフェスグループの名前をFlangesに変更します。
  14. フランジのボルトを選択します。


    図 20.
  15. マイクロダイアログで、Temperatureタブをクリックし、壁フランジと同じパラメータを割り当てます。
  16. ガイドバーをクリックします。
  17. 境界の凡例を使用して、サーフェスグループの名前をFlange_Boltsに変更します。
  18. 出口端部を選択します。


    図 21.
  19. マイクロダイアログで、Temperatureタブをクリックし、壁フランジおよびボルトと同じパラメータを割り当てます。
  20. ガイドバーをクリックします。
  21. 境界の凡例を使用して、サーフェスグループの名前をOutlet_Endに変更します。
  22. ソリッド壁を選択します。


    図 22.
  23. マイクロダイアログで、Temperatureタブを選択し、その他の滑り無しサーフェスと同じパラメータを割り当てます。
  24. ガイドバーをクリックします。
  25. 境界の凡例を使用して、サーフェスグループの名前をOuter_Solid_Wallsに変更します。
  26. これまでに割り当てられたすべてのサーフェスを非表示にして、残りのサーフェスを選択します。


    図 23.
  27. 熱境界条件にデフォルト値が割り当てられていることを確認します。


    図 24.
  28. ガイドバーをクリックします。
  29. 境界の凡例を使用して、サーフェスグループの名前をFluid_Wallsに変更します。

AcuSolveの実行

  1. Solutionリボンから Runツールをクリックします。


    図 27.
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、環境に応じて4または8に設定します。
  4. Automatically define pressure referenceオプションを無効にします。
  5. Default initial conditionsを展開し、Pre-compute flowおよびPre-compute turbulenceオプションがアクティブになっていることを確認します。
  6. Temperatureを273.16Kに設定します。
  7. 他のオプションはデフォルト設定のままにし、RunをクリックしてAcuSolveを起動します。


    図 28.

acuOptiStructの実行

  1. AcuSolveが実行を終了した後、AcuSolveのコマンドプロンプトを開き、cdコマンドを使用して、ディレクトリを作業ディレクトリに変更します。
  2. 次のコマンドを実行します。

    acuOptiStruct -solids “Exhaust Steel” -spcsurfs “Flange_Bolts – Output”,”Outlet_End – Output” -spcsurfsdof 123456,123456 -spcsurfsdofvals 0,0 -type sl

    コマンドが正しく実行されると、以下とよく似た出力が表示されます。


    図 29.

OptiStructの実行

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > Compute ConsoleをクリックしてOptiStructを起動します。
  2. Input File(s)の横のをクリックします。
  3. 作業ディレクトリとして使用する場所に移動します。
  4. .femファイルを選択します。


    図 30.
  5. Runをクリックしてケースを実行します。


    図 31.

HW-CFD Postによる結果のポスト処理

  1. 解析の完了後、Postリボンに移動します。
  2. メニューバーFile > Open > Resultsをクリックします。
  3. 作業ディレクトリでAcuSolveログファイルを選択し、ポスト処理の結果を読み込みます。
    ソリッドとすべてのサーフェスがPostブラウザに読み込まれます。
  4. Boundary Groupsツールをクリックします。


    図 32.
  5. すべてのサーフェスを選択します。
  6. マイクロダイアログで、表示をtemperatureに設定し、Legendのトグルスイッチをアクティブにします。
  7. をクリックして、Colormap nameをRainbow Uniformに設定します。


    図 33.
  8. ガイドバーをクリックします。


    図 34.
  9. PostブラウザFluid_Wallsを右クリックしてEditを選択します。
  10. マイクロダイアログで、表示をpressureに設定し、Legendのトグルスイッチをアクティブにします。
  11. をクリックして、Colormap nameをRainbow Uniformに設定します。


    図 35.
  12. 他の流れ境界をすべて非表示にします。


    図 36.

HyperViewによるOptiStruct結果のポスト処理

  1. WindowsのスタートメニューからStart > All Programs > Altair <version> > HyperViewをクリックしてHyperViewを起動します。
    HyperViewウィンドウを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。
  2. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  3. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動し、Manifold_TFSI.h3dファイルを選択します。
  4. Openをクリックします。
  5. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果をOptiStruct結果ファイルから読み込みます。
    このモデルは、ソリッド領域のみを含んでいることを確認します。これは、OptiStructソルバーデック作成次にソリッドしか含めなかったためです。
  6. ResultsツールバーでをクリックしてContourパネルを開きます。
  7. パネル領域で、Result typeをDisplacement (v)に変更します。
  8. Applyをクリックして変位値のコンターをプロットします。


    図 37.
  9. Result typeをElement Stresses (2D & 3D) (t)に変更し、ドロップダウンからvonMisesを選択します。
  10. Applyをクリックします。


    図 38.

要約

このチュートリアルでは、HyperWorks CFDを使用して共役熱伝達問題を設定し、AcuSolveを使用してこの問題を解析する方法を知ることができました。解を計算した後に、acuOptiStructを使用してOptiStructの入力デックを生成しました。構造解析の解が計算された後に、HyperWorks CFD PostとHyperViewを使用して結果をポスト処理し、温度、圧力、変位、応力のコンタープロットを作成しました。