ACU-T:5000 移動座標(定常)による遠心送風機

前提条件

このチュートリアルを開始する前に、HyperWorks 入門チュートリアルである ACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperWorks CFDAcuSolveの基本を理解しているものとします。このシミュレーションを実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperWorks CFDおよびAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、ここをクリックしてチュートリアルモデルをダウンロードしてください。 ACU-T5000_BlowerSteady.hm をHyperWorksCFD_tutorial_inputs.zipから抽出します。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1および図 2に図示しています。この問題は、前曲羽根型ホイール付き遠心送風機、吹き込みダクトおよび吹き出しダクト付きハウジングで構成されています。吹き込み面を通る流体は羽根型ホイールのハブに入り、羽根を通過する際に遠心力によって放射状に加速され、吹き出し面を通って送風機のハウジングを出ていきます。軸流ファンと比較して安価で単純であることから、遠心送風機は建築物のHVAC(暖房、換気、および空調)システムに広く使用されてきました。



図 1. 遠心送風機の概略図


図 2. ファンの羽根の概略図

AcuSolveで羽根車の回転に基づいて圧力の上昇を計算するように、吹き込み口の境界条件は、質量流量ではなく全圧が使用されます。

この問題で扱う流体は空気であり、この空気の密度 (ρ)は1.225kg/m3、粘性 (μ)は1.781 x 10-5kg/m-secです。

HyperWorks CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > HyperWorks CFDをクリックしてHyperWorks CFDを起動します。
  2. HomeツールのFilesツールグループからOpen Modelツールをクリックします。


    図 3.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T5000_BlowerSteady.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
  5. 名前をCentrifugalBlowerとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてBlower_Steadyと入力するか、都合のいい名前を選択して入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

形状の検証

Validateツールは、モデル全体をスキャンし、サーフェスおよびソリッド上でチェックを実行して、形状に不具合(フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、スライバーなど)があればフラグ付けします。

シミュレーションの物理パートに集中するために、このチュートリアルの入力ファイルにはすでに検証済みの形状が含まれています。ジオメトリリボンのValidateアイコンの左上隅に青色のチェックマークが表示されていることを確認します。これは、形状が有効で、フロー設定に進めることを示しています。


図 4.

問題の設定

シミュレーションパラメーターとソルバーの設定

  1. Flowリボンから Physicsツールをクリックします。


    図 5.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Single phase flowでIncompressibleオプションが選択されているのを確認します。
    2. Time frequencyをSteadyに設定します。
    3. Turbulence modelとしてSpalart-Allmarasを選択します。
      Spalart Allmaras乱流モデルはそのロバスト性と精度から、定常状態の流れのシミュレーションに非常に適しています。


    図 6.
  3. Solver controls設定をクリックし、下の図のようにパラメータが設定されていることを確認します。


    図 7.
  4. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

材料プロパティの割り当て

  1. Flowリボンから Materialツールをクリックします。


    図 8.
  2. ウィンドウ選択を使用して、モデル全体を囲むボックスを描きます。
    遠心送風機とハウジングソリッドの両方が選択されます。


    図 9.
  3. マイクロダイアログ、Materialの横にあるドロップダウンメニューをクリックして、Airを選択します。
  4. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。

参照座標系の定義

この手順では、羽根領域で流体の回転座標系を作成します。これにより、これらの領域にある各要素を指定の回転座標系で解析し、そのボリュームセットに回転体力を追加します。

  1. ハウジングソリッドを非表示にします。
    1. エンティティセレクターSolidsに設定します。
    2. 遠心ハウジングを選択します。
    3. 右クリックしてコンテキストメニューからHide形式を選択し、Hキーを押します。
    遠心送風機のソリッドのみがモデリングウィンドウに表示されます。


    図 10.
  2. Flowリボンから Reference Frameツールをクリックします。


    図 11.
  3. ガイドバーで、Include bounding surfacesオプションがアクティブであることを確認します。
  4. モデリングウィンドウでソリッドを選択します。
    境界サーフェスが自動的に選択されます。
  5. ガイドバーAxisをクリックします。
  6. 回転軸を定義します。
    1. Surf Centerスナップポイントを使用して、遠心送風機の中央に軸を配置します。


      図 12.
    2. マイクロダイアログZをクリックし、その軸を全体座標系のz軸と揃えます。
    3. をクリックして回転方向を反転させます。
    4. テキストフィールドに157.09という値を入力します。


      図 13.
  7. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  8. モデリングウィンドウで右クリックしてコンテキストメニューからShow Allを選択するか、Aキーを押してフルモデル表示に戻します。

流れ境界条件の定義

  1. FlowリボンのPressureツールグループから、Stagnation Pressureツールをクリックします。


    図 14.
  2. 吹き込み口フェイスをクリックします。


    図 15.
  3. マイクロダイアログTurbulenceタブをクリックします。
  4. Turbulence input typeをViscosity Ratioに設定します。
  5. Turbulence viscosity ratioを10に設定します。


    図 16.
  6. 名前を変更します。
    1. モデリングウィンドウの左側の凡例で、Stagnation pressureをダブルクリックします。
    2. Inletと入力し、Enterを押します。
  7. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  8. Outletツールをクリックします。


    図 17.
  9. 吹き出し口フェイスをクリックします。


    図 18.
  10. マイクロダイアログ、Static pressureとPressure loss factorの値が0であることを確認します。


    図 19.
  11. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。

メッシュの生成

このチュートリアルで使用するメッシュパラメータはすでに入力ファイルで設定されています。
  1. メッシュリボンから Volumeツールをクリックします。


    図 20.
    Meshing Operations ダイアログが開きます。
    注: モデルが検証されていない場合、バッチメッシュを実行する前にシミュレーションモデルを作成するように求められます。
  2. Average element sizeが0.01061に設定されていることを確認します。
  3. その他すべてのデフォルト設定を受け入れます。


    図 21.
  4. Meshをクリックします。
    Run Statusダイアログが開きます。解析が実行すると、ステータスが更新され、ダイアログが閉じます。
    ヒント: メッシュジョブを右クリックし、View log fileを選択してメッシングプロセスの概要を表示します。

サーフェスモニターの定義とAcuSolveの実行

  1. エンティティセレクターを Solidsに設定します。
  2. 遠心ハウジングを選択します。
  3. 右クリックしてコンテキストメニューからHideを選択するか、Hを押します。
    遠心送風機のソリッドがモデリングウィンドウに表示されます。


    図 22.
  4. Solutionリボンから Surfacesツールをクリックします。


    図 23.
  5. 送風機のインタフェースを選択し、下図に示すように矢印が送風機の方に向いていることを確認します。


    図 24.
  6. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  7. surface_outputの名前をblowerInterfaceFrontに変更します。
  8. Solutionリボンから Runツールをクリックします。


    図 25.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  9. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  10. オプション: プロセッサーの数を、環境に応じて4または8に設定します。
  11. Automatically define pressure referenceオプションを無効にします。
  12. 他のオプションはデフォルト設定のままにし、RunをクリックしてAcuSolveを起動します。


    図 26.
    ヒント: AcuSolve実行中、Run StatusダイアログでAcuSolveジョブを右クリックし、View Log Fileを選択することで、解析プロセスの状況を確認できます。

残差とサーフェス出力のプロット

  1. Run Statusダイアログで、実行するAcuSolveを右クリックし、Plot time historyを選択します。
  2. Plot Utilityダイアログで、Residual Ratioをダブルクリックして対応するプロットを開きます。


    図 27.

    プロットは、時間ステップごとの解析の進行に伴う各方程式の残差を示しています。

    残差が徐々に減少していることがわかります。圧力と速度の残差指標(Residual Ratio)が指定の収束許容値(0.001)を下回る値に達すると、解析は収束したと見なされます。

    デフォルトでは、渦粘性の収束許容値は、指定の収束許容値より1桁大きい値に設定されています(0.01)。

  3. Libraryタブに戻り、Solution Ratioをダブルクリックしてプロットを開きます。
  4. Logarithmアイコンをクリックして、解の比率をlog scaleに変更します。


    図 28.

    プロットに解の収束が表示されます。

    圧力と速度の残差指標が指定の収束許容値(0.01)を下回る値に達すると、Solution Ratio(時間増分指標)は収束したと見なされます。

    デフォルトでは、渦粘性の収束許容値は、指定の収束許容値より1桁大きい値に設定されています(0.1)。

  5. をクリックして、新しいプロットを追加します。
  6. Y-Axis見出しで、Run Dataの横の矢印をクリックしてSurface Outputを選択します。


    図 29.
  7. areaの横の矢印をクリックしてmomentを選択します。
  8. Selectorにはz_momentを選択します。
  9. サーフェス出力にはbladesを選択します。


    図 30.
  10. Createをクリックします。


    図 31.
  11. をクリックして、新しいプロットを追加します。
  12. Y-Axis見出しで、Run Dataの横の矢印をクリックしてSurface Outputを選択します。
  13. areaの横の矢印をクリックしてmass_fluxを選択します。
  14. サーフェス出力にはblowerInterfaceFrontを選択します。
  15. Createをクリックします。


    図 32.

HW-CFD Postによる結果のポスト処理

スライス平面上の圧力のプロット

  1. Postリボンに移動します。
  2. メニューバーFile > Open > Resultsをクリックします。
  3. 作業ディレクトリでAcuSolveログファイルを選択し、ポスト処理の結果を読み込みます。
    ソリッドとすべてのサーフェスがPostブラウザに読み込まれます。
  4. Slice Planesツールをクリックします。


    図 33.
  5. モデリングウィンドウで、x-y平面を選択します。
  6. マイクロダイアログで、をクリックして、法線方向に沿って-0.07の距離だけ平面を移動します。


    図 34.
  7. Escを押して変換ツールを終了します。
  8. スライス平面のマイクロダイアログで、をクリックしてスライス平面を作成します。
  9. 表示プロパティマイクロダイアログで、Legendラジオボタンを切り替えます。
  10. をクリックして、Colormap NameをRainbow Uniformに設定します。


    図 35.
  11. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  12. Postブラウザで、すべてのパートと流れ境界を非表示にします。


    図 36.

流線のプロット

  1. Postブラウザで、スライス平面を非表示にして、InletおよびOutlet境界を表示します。
  2. Streamlines > Circleツールをクリックします。


    図 37.
  3. モデリングウィンドウで、x-y平面を選択します。
  4. マイクロダイアログで、をクリックして、法線方向に沿って-0.07の距離だけ平面を移動します。


    図 38.
  5. Escを押して変換ツールを終了します。
  6. スライス平面マイクロダイアログで、をクリックし、circle radiusを0.1に設定します。
  7. ガイドバーSeedsをクリックします。
  8. マイクロダイアログで、Generation methodをUniformに設定し、Point countを100に設定します。
  9. Calculateをクリックします。


    図 39.
  10. 表示プロパティマイクロダイアログで、DisplayをVelocityに設定し、Colormap NameをRainbow Uniformに設定します。
  11. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  12. Postブラウザで、Auto境界条件を表示し、Autoを右クリックしてEditを選択します。
  13. マイクロダイアログで、Transparencyスライダーを調整して流線を表示します。
  14. ガイドバーをクリックしてします。


    図 40.

要約

このチュートリアルでは、遠心送風機内に回転座標系を指定した定常状態シミュレーションを設定する基本的なワークフローに取り組みました。まず、メッシュをインポートし、ケースが設定された後、AcuSolveを使用して解を生成しました。次に、Plot Utilityを使用して送風機の運動量を計算し、 HyperWorks CFDポストを使用して圧力と流線のコンタープロットを作成しました。