ACU-T:3101 ミキシングエルボにおける過渡共役熱伝達

前提条件

このチュートリアルでは、HyperWorks CFDAcuSolveを使用してミキシングエルボで共役熱伝達を伴って発生する3次元乱流を取り上げ、その過渡シミュレーションを実行する方法について説明します。ここでは、ACU-T:3100 ミキシングエルボにおける共役熱伝達のチュートリアルを実施済みで、HyperWorks CFDおよびAcuSolveの基本を理解しているものとします。HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースでは、AcuSolveHyperViewの基本的な機能を紹介しています。

このチュートリアルを実行する前に、ここをクリックしてチュートリアルモデルをダウンロードしてください。 ACU-T3101_MixingElbowTransient.hm をHyperWorksCFD_tutorial_inputs.zipから抽出します。

問題の説明

この問題の解には、定常状態解と過渡解の2種類があります。定常状態解の概略図を次の図に示します。



図 1.

大きい入口の直径は0.1m、流入速度(v)は0.4m/s、流入する流体の温度(T)は295Kです。小さい入口の直径は0.025m、流入速度は1.2m/s、流入する流体の温度は320Kです。また、管壁の厚みは0.005mです。この問題で扱う流体は水で、管壁の材料は、密度が8030kg/m3、伝導率が16.2W/m-k、比熱が500J/kg-Kのステンレス鋼です。

この問題の定常状態部分のモデルファイルは、入力ファイルとして用意されています。定常状態の解析を計算すると、その結果がメッシュに投影され、過渡シミュレーションの初期状態として使用されます。この問題の過渡部分を開始する時点の概略図を以下に示します。



図 2.

シミュレーション開始後0.2秒で、両方の入口から水のコールドスラグが注入され、0.2秒から0.4秒の間に、流入口での温度が283.15Kに低下します。この温度は、そこから1秒間は283.15Kに維持されますが、1.4秒から1.6秒の間に初期状態まで上昇します。流路長を0.6356mとすると、スラグの通過時間は約1.6秒になります。したがって、スラグの期間と通過時間を考慮したシミュレーションとするには、その時間を3.2秒以上とする必要があります。熱条件が定常状態に復帰するまでに要する時間を見込むと、シミュレーションの合計時間は4.5秒になります。

大きい入口では、温度が295Kから283.15Kに変化し、小さい入口では320Kから283.15Kに変化します。大きい入口で、初期温度に対してコールドスラグの温度が示す比率は0.9598です。小さい入口の流れの初期温度に対するコールドスラッグの温度の比率は0.8848です。これらの値は、入口での過渡温度をモデル化するMultiplier Functionの作成時に使用されます。



図 3.

HyperWorks CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > HyperWorks CFDをクリックしてHyperWorks CFDを起動します。
  2. HomeツールのFilesツールグループからOpen Modelツールをクリックします。


    図 4.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3101_MixingElbowTransient.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
  5. 名前をMixingElbow_Transientとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてMixingElbow_Transient_Transientと入力するか、都合のいい名前を選択して入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

定常状態シミュレーションの実行

この手順では、提供されている入力ファイルを使用して定常状態シミュレーションを実行します。

  1. Solutionリボンから Runツールをクリックします。


    図 5.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、環境に応じて4または8に設定します。
  4. Automatically define pressure referenceオプションを無効にします。
  5. Default initial conditionsドロップダウンを拡張表示し、Pre-compute flowオプションを無効にします。
  6. x-velocityを0に設定し、Temperatureを300に設定します。
  7. RunをクリックしてAcuSolveを起動します。


    図 6.
  8. Run Statusダイアログで、AcuSolve実行を右クリックし、View log fileを選択します。
  9. ソルバー実行が完了したら、Run Statusダイアログを閉じます。


    図 7.

非定常解析パラメータの設定

  1. Flowリボンから Physicsツールをクリックします。


    図 8.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Time frequencyをTransientに設定します。
    2. Time step sizeを0.053に、Final timeを4.5に設定します。


    図 9.
  3. Solver controls設定をクリックします。
  4. MinimumおよびMaximum stagger iterationsをそれぞれ25に設定します。
  5. FlowおよびTurbulence方程式を無効にします。
    これらのオプションをオフにすることで、AcuSolveでこれらの方程式の解が更新されなくなります。代わりに、シミュレーション全体で現在の流れおよび乱流の値(このチュートリアルの定常解)が使用され、AcuSolveでは温度場の解析のみが行われます。


    図 10.
  6. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

非定常流入境界条件の指定

  1. FlowリボンのProfiledツールグループから、Profiled Inletツールをクリックします。


    図 11.
  2. モデリングウィンドウBoundaries凡例でLarge Inletを右クリックし、コンテキストメニューからEditを選択します。


    図 12.
  3. マイクロダイアログで、Temperature 横のmultiplier functionドロップダウンメニューをクリックし、Create newを選択します。


    図 13.
  4. 表示されるダイアログで、左上の をクリックすることにより、Multiplier Functionの名前を編集します。名前をLarge Inletに設定します。
  5. TypeをPiecewise Linearに設定します。
  6. VariableがTimeに、EvaluationがTime Stepに設定されていることを確認します。
  7. を4回クリックし、テーブルの最後に新しい行を4行追加します。
  8. 下の画像に示すように、Multiplier Functionのテーブル値を入力します。


    図 14.
  9. ダイアログを閉じます。
  10. ガイドバーをクリックすると、コマンドを実行し、ツール内に留まります。
  11. Boundaries凡例でSmall Inletを右クリックし、コンテキストメニューからEditを選択します。
  12. マイクロダイアログで、Temperature 横のmultiplier functionドロップダウンメニューをクリックし、Create newを選択します。
  13. 表示されるダイアログで、左上の をクリックすることにより、Multiplier Functionの名前を編集します。名前をSmall Inletに設定します。
  14. TypeをPiecewise Linearに設定します。
  15. VariableがTimeに、EvaluationがTime Stepに設定されていることを確認します。
  16. を4回クリックし、テーブルの最後に新しい行を4行追加します。
  17. 下の画像に示すように、Multiplier Functionのテーブル値を入力します。


    図 15.
  18. ダイアログを閉じます。
  19. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  20. モデルを保存します。

解の計算

節点出力の定義

  1. Solutionリボンから Fieldツールをクリックします。


    図 16.
    Field Outputダイアログが開きます。
  2. Write initial conditionsオプションをアクティブにし、Solution variablesのTime step intervalを3に設定します。


    図 17.

AcuSolveの起動

  1. Solutionリボンから Runツールをクリックします。


    図 18.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、環境に応じて4または8に設定します。
  4. Automatically define pressure referenceオプションを無効にします。
  5. Restartメニューを拡張表示し、Restart from previous solutionオプションをアクティブにします。
  6. Problem nameをMixingElbow_Transientに設定します(設定されていない場合)。
  7. Run numberが1に設定され、Reset time stepオプションがアクティブになっていることを確認します。
  8. Runをクリックして過渡解析の実行を開始します。


    図 19.
  9. Run Statusダイアログで、2つ目のAcuSolve実行を右クリックし、View log fileを選択します。
  10. ソルバー実行が完了したら、Run Statusダイアログを閉じます。

HW-CFD Postによる結果のポスト処理

  1. 解析の完了後、Postリボンに移動します。
  2. メニューバーFile > Open > Resultsをクリックします。
  3. 作業ディレクトリでAcuSolveログファイルを選択し、ポスト処理の結果を読み込みます。
    ソリッドとすべてのサーフェスがPostブラウザに読み込まれます。
  4. Postブラウザで、Pipe_SymmetrySymmetry流れ境界だけが表示されるように設定します。


    図 20.
  5. Boundary Groupsツールをクリックします。


    図 21.
  6. モデリングウィンドウですべてのサーフェスを選択します。
  7. 表示プロパティマイクロダイアログで、表示をtemperatureに設定します。
  8. Legendのトグルスイッチをアクティブにし、をクリックして範囲をリセットします。
  9. をクリックして、Colormap NameをRainbow Uniformに設定します。


    図 22.
  10. ガイドバーをクリックします。
  11. モデリングウィンドウの下部にあるをクリックし、温度コンターに対する過渡流れのアニメーションを表示します。


    図 23.
  12. アニメーションを保存します。
    1. File > Screen Capture > Advanced Captureを選択します。
    2. ツールバーの をクリックします。
    3. Include mouse cursorのチェックをオフにします。
    4. frame rateを50に設定します。
    5. ツールバーのをクリックし、記録したい領域をドラッグオーバーします。
    6. をクリックして記録を開始します。記録を終了する場合も同じボタンを使用します。
    7. ファイルの名前を指定し、保存します。

要約

このチュートリアルでは、HyperWorks CFDAcuSolveを使用して過渡共役熱伝達のシミュレーションを設定し、実行する方法を知ることができました。まず、定常状態の実行用の共役熱伝達設定を含む入力ファイルをインポートしました。定常状態解が計算されたら、過渡シミュレーションパラメータを設定し、入口に過渡条件を適用しました。過渡解の計算後、HyperViewを使用して結果をポスト処理しました。