ACU-T:3310 単相核沸騰

前提条件

このチュートリアルでは、HyperMeshを使用して、単相核沸騰問題を設定し、解析する方法を紹介します。このチュートリアルを開始する前に、HyperWorks 入門チュートリアルである ACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperMeshAcuSolve、およびHyperViewの基本を理解しているものとします。このシミュレーションを実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMeshおよびAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、ここをクリックしてチュートリアルモデルをダウンロードしてください。 ACU-T3310_NB1.hm をHyperMesh_tutorial_inputs.zipから抽出します。

HyperMeshデータベース(.hmファイル)には、メッシュ済みのジオメトリが含まれているため、このチュートリアルには、ジオメトリのインポートとメッシュ生成に関する手順は含まれません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1で図式的に示されています。この問題は、サブクール沸騰のための一般的な壁の熱伝達モデルに基づいています(スタイナーモデル)。これは、底面に加熱壁がある1つのチャネルで構成されています。この壁の温度は、加熱壁において核沸騰を開始するように選択されます。


図 1. チャネルの概略図

入口の寸法は0.03 x 0.04mであり、入口速度(v)は0.39m/s、入口に流入する流体の温度(T)は368.15K(95C)です。

予熱された空気が入口に流入し、熱が壁から流体に伝達されます。この熱によって壁に近い領域でサブクール沸騰が生じ、核形成部位で気泡が発生します。

この状態での熱伝達は、基本的に、バルク液体の動きに起因するマクロ対流と、気泡と加熱壁の間の液体ミクロ層の蒸発に伴う潜熱輸送の2つの現象に大きく影響されます。

この問題の流体は水です。水は、密度、粘度、エンタルピー、伝導率という温度依存の材料特性を持ちます。この材料には、表面張力モデルと気相モデルも指定されています。

同様に温度依存の材料特性を持つ水蒸気が、気相モデルとして指定されます。

AcuSolveのシミュレーションは、マニホールドの加熱壁上の温度と熱流束を明らかにするために、定常状態の熱伝達をモデル化するように設定されます。

HyperMeshモデルデータベースを開く

  1. HyperMesh Desktopを起動し、AcuSolveのユーザープロファイルを読み込みます。
    User ProfilesからAcuSolveを選択する方法については、HyperMeshの入門チュートリアルACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをご参照ください。
  2. 標準ツールバーのOpen Modelアイコン をクリックします。
    Open Modelダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルACU-T3310_NB1.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
    Save Model Asダイアログが開きます。
  5. 名前をNB1として新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてNB1_Steinerと入力するか、都合のいい名前を選択して入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

シミュレーションパラメータの設定

一般的なシミュレーションパラメータの設定

  1. Solverブラウザ01.Globalを展開してPROBLEM_DESCRIPTIONをクリックします。
  2. エンティティエディターで、Analysis typeがSteady Stateに設定されていることを確認します。
  3. Abs. temperature offsetを200000N/m2に設定します。
  4. Temperature equationをAdvective Diffusiveに設定します。
  5. Turbulence modelをSpalart Allmarasに変更します。
  6. Nucleate boiling single phaseをOnに設定します。


    図 2.

ソルバー設定

  1. Solverブラウザ01.Globalの下の02.SOLVER_SETTINGSをクリックします。
  2. エンティティエディターで、Relaxation factorを0.4に設定します。
  3. Flow、Temperature、TurbulenceがOnに設定されていることを確認します。

節点初期状態の定義

  1. Solverブラウザ01.Globalの下の03.NODAL_INITIAL_CONDITIONをクリックします。
  2. X方向の一定速度の値0.39を設定します。
  3. 一定温度の値368.15を設定します。
  4. Eddy viscosityの一定値0.0001を設定します。


    図 3.

材料特性と境界条件の割り当て

材料特性のカーブ / プロットの作成

  1. Modelブラウザで右クリックして Create > Curveを選択します。
  2. Curve Editorで、Newをクリックします。
  3. パネル領域で、名前としてDensity_Waterを入力し、proceedをクリックします。
  4. 以下のXとYの値を入力します。


    図 4.
  5. もう1つのカーブを作成し、Viscosity_Waterという名前を付けて、以下の値を入力します。


    図 5.
  6. Enthalpy_Waterという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 6.
  7. Conductivity_Waterという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 7.
  8. Density_Vaporという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 8.
  9. Viscosity_Vaporという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 9.
  10. Enthalpy_Vaporという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 10.
  11. Conductivity_Vaporという名前のカーブを作成し、以下の値を入力します。


    図 11.
  12. Curve Editorを閉じます。
  13. Modelブラウザで右クリックして Create > Plotを選択します。
  14. エンティティエディターで、NameをWater-srfTns、TypeをSurface_Tension_Modelに設定します。
  15. Surface tensionの値を0.01に設定します。


    図 12.

材料特性の定義

  1. Solverブラウザで、02.Materialsフォルダーを右クリックし、Material(Fluid)を選択して新しい流体材料を作成します。これにVaporという名前を付けます。
  2. エンティティエディターで、Density typeをCubic Splineに変更し、Curve fit variableをTemperatureに設定して、Curve fit valuesのリストからDensity_Vaporカーブを選択します。
  3. Specific Heat typeをCubic Spline Enthalpyに変更し、Curve fit variableをTemperatureに設定して、Curve fit valuesのリストからEnthalpy_Vaporカーブを選択します。
  4. Latent heat typeをConstant、Latent heatを2256000J/kg、Latent heat temperatureを393.45Kに設定します。
  5. 同様にViscosityとConductivityについて、3次スプライン値をそれぞれViscosity_VaporConductivity_Vaporに設定します。


    図 13.
  6. Solverブラウザで、FLUIDを右クリックし、Createを選択して新しい流体材料を作成します。これにWaterという名前を付けます。
  7. エンティティエディターで、Density typeをCubic Splineに変更し、Curve fit variableをTemperatureに設定して、Curve fit valuesのリストからDensity_Waterカーブを選択します。
  8. 同様にSpecific Heat、Viscosity、およびConductivityについて、3次スプライン値をそれぞれ、Enthalpy_WaterViscosity_WaterConductivity_Waterに設定します。


    図 14.
  9. vapor Phase見出しで、MaterialリストからVaporを選択して、vapor phase modelをこの値に設定します。
  10. Surface Tension見出しで、PlotリストからWater-srfTnsを選択して、Surface tension modelをこの値に設定します。


    図 15.

材料特性と境界条件の割り当て

  1. Solverブラウザで、11.Volumes > FLUIDを展開します。
  2. FluidVolumeをクリックします。エンティティエディターで以下を設定します。
    1. TypeがFLUIDに設定されていることを確認します。
    2. MaterialとしてWaterを選択します。


    図 16.
  3. Solverブラウザで、12.Surfaces > WALLを展開します。
  4. Inflowをクリックします。エンティティエディターで以下を設定します。
    1. TypeをINFLOWに変更します。
    2. Inflow TypeをAverage Velocityに設定します。
    3. Average velocityを0.39m/secに設定します。
    4. Temperatureを368.15Kに設定します。


    図 17.
  5. Outflowをクリックします。エンティティエディターで以下を設定します。
    1. TypeをOUTFLOWに変更します。
    2. Pressureの値が0N/m2に設定されていることを確認します。
    3. Backflow conditionsをオフにし、Temperature backflow typeとEddy viscosity backflow typeをMass Flux Averageに設定します。


    図 18.
  6. HeatedWallをクリックします。エンティティエディターで以下を設定します。
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC TypeをValueに設定します。
    3. Temperatureを403.15Kに設定します。


    図 19.
  7. Side_MaxYをクリックします。エンティティエディターで、TypeがWALLに設定されていることを確認します。
  8. Side_MinyTopBottomコンポーネントについても上記手順を繰り返します。

解析計算

  1. すべてのメッシュコンポーネントの表示をオンにします。
    解析を実行するには、アクティブなすべてのコンポーネントのメッシュを可視化した状態にする必要があります。
  2. ACUツールバーの をクリックします。
    Solver job Launcherダイアログが開きます。
  3. オプション: 解析時間を短縮するには、使用可能なプロセッサの数に応じて、使用するプロセッサの数に大きい値(4または8)を設定します。
  4. 他のオプションはデフォルト設定のままにし、Launchをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 20.
    Launchボタンをクリックすると、AcuTailウィンドウとAcuProbeウィンドウが自動的に開きます。AcuTailウィンドウ内の実行サマリーは、ソルバー実行が完了していることを示します。


    図 21.

    実行が完了したら、AcuTailウィンドウとAcuProbeウィンドウを閉じてかまいません。

HyperViewによる結果のポスト処理

AcuSolveの実行が終了したら、HyperWorks Solver View ダイアログを閉じます。HyperMesh Desktopウィンドウで、 AcuSolve ControlおよびSolver job Launcherダイアログを閉じます。次のステップでは、Heated WallサーフェスとBottomサーフェス上の温度のコンターをプロットします。

HyperViewインターフェースへの切り替えとAcuSolveモデルと結果の読み込み

  1. HyperMesh Desktopウィンドウで、グラフィックスウィンドウの左下隅のClientSelectorドロップダウンをクリックします。


    図 22.
  2. リストからHyperViewを選択します。
  3. 表示されたポップアップダイアログで、Yesをクリックします。
    インターフェースがHyperViewに変更されます。

    HyperViewを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。

  4. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  5. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .Logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、NB1_Steiner.1.Logです。
  6. Openをクリックします。
  7. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

温度分布のコンターの作成

この手順では、HeatedWallサーフェスとBottomサーフェス上の温度のコンターをプロットします。
  1. ResultsブラウザでのComponentsリストを拡張表示します。
  2. Isolate Shownアイコンをクリックし、Ctrlキーを押しながらHeatedWallBottomコンポーネントを選択して、必要なコンポーネントを除くすべてのコンポーネントの表示をオフにします。


    図 23.
  3. ResultsツールバーでをクリックしてContourパネルを開きます。
  4. パネル領域で、Result typeをTemperature (s)に変更します。
  5. Componentsエンティティセレクターをクリックします。Extended Entity Selectionダイアログで、Displayedを選択します。
  6. Applyをクリックして温度のコンターをプロットします。
  7. パネル領域のDisplayタブで、Discrete colorオプションをオフにします。


    図 24.


    図 25.

要約

このチュートリアルでは、HyperMeshを使用して単相核沸騰の関与する問題を設定し、AcuSolveを使用してこの問題を解析する方法を知ることができました。解析を計算した後、HyperViewを使用して温度のコンターを作成しました。