Magneto Static - Integral Method: 基本

概要

バージョン2020より、Fluxでは、静磁的条件の下でデバイスをシミュレートするための代替アプリケーションを提供します。このアプローチは、Volume Integral Method(VIM)[1]に基づきます。これは、空気や真空のような境界のない非アクティブ(供給源のない)ボリューム領域内にあるデバイスなど、特殊な問題で役立つことが知られています。

Volume Integral Methodの重要な点は、モデル化されるデバイスの周囲の空気を表現したりメッシュする必要もなく、無限遠での境界条件を与える必要もないということです。結果的に、通常Fluxの従来の有限要素法(FEM)アプリケーションで使用される無限ボックスは、この積分法に基づくプロジェクトでは不要になります。この積分法による機能に続き、Fluxでは、各計算ステップで、移動パート(メカニカルセット)を含むVIMプロジェクトの空気領域をリメッシュする必要もなくなりました。したがって、そのような条件においては、計算時間の著しい改善が見られます。

FEMに比べ、VIMでは一般的に、比較的粗いメッシュを使用して正確な静磁界解析が提供されます。一方、VIMアプローチは、非スパースな連立方程式のアセンブリおよび解をもたらし、数値メモリや特殊ソルバーの効果的な管理が必要となります。幸い、このような手法はFluxに実装されています。従来の静磁界FEMアプリケーションに慣れ親しんだユーザーが、ワークフローでの大きな変化に気付くことはありません。

FluxのVIMベースのアプローチで効果的にモデル化できる一般的なデバイスには、電磁センサーやその他類似デバイスがあります。狭い空隙や閉磁路で特徴付けられる回転電気機器などの電磁デバイスは、推奨アプリケーションではありません。

使用方法

このアプリケーションは、Flux3Dではベータモードで提供されています。このユーザーモードは、新しいプロジェクトを作成する前に、次のようにFlux Supervisorでアクティブにする必要があります:

  • Flux Supervisorで“Options”をクリックします。
  • “Options”ウィンドウで、“System”設定の中から“User Mode”を選択します。
  • モードを“Standard”から“Beta”に変更し、OKをクリックして変更を完了します。

この機能を問題なく使用するには、新しいFlux3Dプロジェクトを最初から作成する必要があります。既存のFlux3Dプロジェクトの従来のアプリケーションを破棄し、静磁界VIMアプリケーションに置き換えることはしないでください。

推奨事項

前述のとおり、この機能はベータモードで提供されているだけです。したがって、静磁界VIMアプリケーションに基づいてプロジェクトを作成する際は、次の推奨事項および注意事項についても考慮してください。

  • 形状のメッシュの前に、アプリケーションをプロジェクトに割り当てる必要があります。
  • プロジェクトにはボリューム領域のみが含まれる必要があります。
  • Fluxでの従来のFEMアプリケーションとは違い、境界のないドメインをモデル化するのに無限ボックスの作成や境界条件の割り当てなどのアクションは必要ありません。デバイスのアクティブなパートの周囲の空気領域を記述したり、プロジェクトに対称性や周期性を含めることはできません。
  • 解析後のポスト処理において、Fluxで評価された局所量(磁束密度など)は要素ごとに一定です。
  • 静磁界VIMアプリケーションで使用される数値ソルバーは、他のFluxプロセス外にあります。したがって、ソルバーは、MuMPSソルバーの場合のように、解析時に使用可能なメモリを使用します。このため、ユーザーは、Flux SupervisorでFlux3Dに割り当てるメモリを削減し、数値解析に使用できるメモリ量を最大にする必要があります。

参考文献

[1]:V. Le-Van, G. Meunier, O. Chadebec and J.-M. Guichon, «A Volume Integral Formulation Based on Facet Elements for Nonlinear Magnetostatic Problems,» IEEE Transactions on Magnetics, vol. 51, n° 17, July 2015.

内容