3Dの例:Magneto thermalアプリケーション(技術文書)

実行するスタディ

“Magneto thermal”の3D技術文書で提案されているスタディは鋼製加工品の熱処理です。

調査対象デバイス

以下の図に示すスタディ対象デバイスは、以下のコンポーネントで構成されています:

  • 供給磁界を生成するインダクタ: 正弦波電流源から給電を受ける円筒コイルです。
  • 熱処理対象コンポーネントに相当する部材:

    鋼製加工品

3D技術文書への参照

このデバイスには、複数の計算タイプを使用できます。この技術文書は、このような計算の可能性をすべてまとめており、これらのケースを入力して実行するための特性を詳しく記述しています。考え得るさまざまなタイプの計算例を示すために、ケースの実行について以下で簡単に説明します。

熱処理プロセス

鉄合金製パートの表面熱処理の役割は、重要な表面領域の硬化によって応力や摩耗に対する耐性を確保することです。

誘導加熱対象の加工品に対する2つの熱処理プロセスを検討します。このようなプロセスは、以下で説明する2つの手順で構成します:

  • 手順1: 加工品の加熱 = 加熱の最終段階で加工品の温度に最小限の不均一性を実現するために、低周波数または高周波数で加工品に対して実行する低速誘導加熱
  • 手順2: 加工品の硬化 = 誘導加熱後にパートを急冷することによる加工品表面の硬化

この2段階のプロセスの特徴を下の表に示します。

手順 説明 材料の変態 条件
1 低速誘導加熱(体積または表面の誘導加熱) フェライト + パーライト ⇒ オーステナイト 800~850°Cを超える局所温度
2 自然冷却または強制急冷 オーステナイト ⇒ マルテンサイト 材料に応じた、臨界値を超える局所的な冷却速度

処理例

Fluxでは、次の3つのケースのスタディを使用して、加工品の2段階熱処理をシミュレーションします:

  • ケース1: 低周波数(f=1kHz)での誘導加熱
  • ケース2: 高周波数(f=200kHz)での誘導加熱
  • ケース3: 誘導加熱後の冷却

ケース1

1番目のケースは、熱処理プロセスの手順1のスタディに相当します。

これは、比較的低い周波数(f = 1kHz)による低速誘導加熱プロセスです。加熱の侵入深さの値は

= 2.05mmとかなり大きく、加工品の厚みに近くなっています。したがって、このケースは体積誘導加熱プロセスに相当します。

加工品の外側面に誘導される電力密度は低い値です。その結果、加工品はゆっくり加熱されるので、加熱の最終段階で加工品体積全体に緩やかな温度勾配が得られます。

加工品は、環境温度(20°C)から約1,100°Cまで加熱されます。

ケース2

2番目のケースも、熱処理プロセスの手順1のスタディに相当します。

このケースも低速誘導加熱プロセスですが、比較的高い周波数(f=200kHz)を使用します。加熱の侵入深さの値 = 0.14mmが加工品の厚みに比べると小さいので、表面誘導加熱プロセスになります。

加工品の表面のみが電磁界計算の対象になります。加工品の外側面に伝達される誘導電力密度も低い値です。加工品の加熱要因は、誘導電流が流れる加工品表面から加工品の金属体積へ向かう熱伝導が支配的です。この場合も加工品はゆっくり加熱されるので、加熱の最終段階で加工品体積全体に緩やかな温度勾配が得られます。

加工品は、環境温度(20°C)から約1,100°Cまで加熱されます。

ケース3

3番目のケースは、熱処理プロセスの2番目の手順に相当します。

これは、誘導加熱後の冷却(急冷)の手順です。空気中での短時間の自然冷却の後で、急速冷却をスタディします。