連成および非線形なB(H)特性を持つ磁性材料

概要

Transient Thermalアプリケーションと連成したSteady State AC Magneticの場合、熱問題の解析から得られる温度は、透磁率や電導率といった材料の物理特性を通じて連立磁気方程式で扱う量です。

温度を変数とする材料の電気特性と磁気特性(固有抵抗ρ(T)、透磁率μ(T))向けに用意されている各種モデルについては、材料: 基本の章で§B(H)法則: 軟質磁性材料のモデルをご参照ください。

トピックの留意事項

Steady State AC Magneticアプリケーションでは、これらの特性(磁界強度と磁束密度)から派生する未知の電位と物理量は、時間を変数とする正弦関数です。したがって、時間を変数とする複素表現を使用することで、磁気問題について、時間に依存しない、複素数で表現した解が1回の解析で得られます。

目的の量が時間を変数とする正弦関数であると仮定した場合、演繹的には、非線形な磁化特性を持つ磁性材料を考慮することは不可能です。Fluxによる計算では、この困難に対処するために、実際の非線形なB(H)磁化飽和曲線を、エネルギー面の考察から得られる“等価”な曲線に置き換えています。この方法およびFluxに用意されているモデルについては、材料: 基本の章で§Steady state AC Magneticアプリケーションでのモデルの近似の項をご参照ください。

!!!注意!!!

Transient Thermalアプリケーションと連成したSteady State AC Magneticでは、実際のB(H)は温度Tにも依存することから、等価B(H)曲線によるこの方法を適用することはできません。

それでも、等価なB(H)を熱磁気解析に使用することの観点から見ると、次の2点を考慮できます:

  • 加熱対象のパートが低温状態にある場合は、非線形磁性パートがきわめて強い磁気飽和に達するうえで十分な電源電流が流れます。パート材料の磁気状態は、実際のB(H)曲線の漸近線上にある状態と正確に一致しますが、この漸近線上では、等価なB(H)曲線のモデルが絶対的に有効です。
  • パートの温度が上昇すると、B(H)曲線の“曲線部が平坦化”することがただちにわかるので、等価B(H)曲線による近似に妥当性があります。

シミュレーションによる結果と実験で得られた結果の比較により、等価B(H)曲線によるモデルの有効性が示されています。これらの結果の差異は不確実性の量の範囲であり、現実の世界でその量を検知することは著しく困難です。