正弦波掃引疲労解析

正弦波荷重下の構造の疲労寿命の検討。

周波数依存の応力範囲を計算するために周波数応答解析からの周波数応答応力結果が使用され、それらは続いて掃引速度に基づく疲労損傷の計算に用いられます。

入力

正弦波掃引は、試験体の振動挙動を評価するために行われる振動試験としてよく知られた方法です。

引き続き正弦波掃引振動内で疲労解析が行われ、試験体の疲労寿命が決定されます。正弦波掃引は、シェイカー内に試験体を置き、異なる振動の周波数および振幅(通常、低周波数高振幅から高周波数低振幅へ、またはその逆)の正弦波荷重をかけることで行われます。


Figure 1. 周波数の増加に伴う振幅応力データの変化
正弦波掃引疲労解析を特徴付けるために、以下の入力情報が必要となります:
  1. 周波数応答サブケースは、正弦波掃引疲労解析の実施に必要な入力正弦波振動プロフィールを提供します。
  2. すなわち、SR(掃引速度)およびSRUNIT(掃引速度単位)フィールドは、作成された各疲労イベントと共に指定されます。.
  3. 正弦波掃引疲労計算が実行される周波数は、SNまたはEN単軸コンテキストで指定されます。
  4. 静的サブケースは、平均応力補正のためのロードマップ内でイベントに追加することが可能です。
  5. 掃引数は、イベントと指定されるものとします(デフォルト= 1 Sweep)。掃引数は、1つの周波数のみが考慮される、もしくはSR = 0.0である場合、時間‘T’秒であると見なされます。

応力-寿命

周波数応答解析による周波数ベースの応力範囲出力を使用して、損傷-周波数カーブを作成します。

正弦波掃引疲労解析の鍵は、周波数当たりの発生するサイクル数を確認することです。続いて、特定の周波数でサイクル当たりの損傷の量を計算できます。これにその周波数でのサイクル数を掛けると、周波数当たりの損傷の合計が求まります。さらに、周波数範囲全体でのこの損傷の総和が、掃引当たりの損傷となります。複数の掃引の疲労損傷は、掃引当たりの損傷に掃引の数を掛けたものとなります。

ヘルツ / 秒単位の掃引速度(SRUNIT=HZPS)

ヘルツ / 秒単位の掃引速度は、掃引速度を υ とすると、周波数と時間の間に次の関係が成り立つことを意味します。(1) f = f 0 + υ t
ここで、
f
対象の周波数値。
f 0
周波数応答サブケースの加振周波数範囲の初期周波数値。
υ
ヘルツ / 秒単位の掃引速度(ロードマップ内のFATLOADエントリのSRフィールド)。
t
正弦波掃引疲労において、応力範囲 Δ σ f に周波数 f が適用される時間。
応力範囲対周波数が周波数応答解析より出力されます。これを使用して、特定の周波数での応力範囲が特定されます。特定の周波数での応力範囲 Δ σ f のサイクル数を計算するには、次の式を使用します。(2) n f c y c = d n d f = f d t d f = f 1 υ
ここで、
f
対象の周波数値。
υ
ヘルツ / 秒単位の掃引速度(ロードマップ内のFATLOADエントリのSRフィールド)。
Note: 掃引速度はヘルツ / 秒で定義されます。

特定の周波数 f での応力範囲 Δ σ f のサイクル数が n f c y c に等しいことがわかります。これを、任意の周波数で、周波数に関するサイクル数の変化率として定義することもできます。

周波数 f におけるサイクル当たりの損傷値 D c y c ( f ) は、SNカーブの応力範囲 Δ σ f に基づいて計算されます。(3) D cyc ( f )= D SN Δ σ f
ここで、
D c y c ( f )
右記の周波数におけるサイクル当たりの損傷; f
D SN Δ σ f
SNカーブの応力範囲 Δ σ f に対応する損傷値。


Figure 2. 損傷対周波数: このカーブの下側の面積が掃引当たりの損傷の合計となる
ある周波数におけるサイクル当たりの損傷 D c y c ( f ) に基づいて、損傷-周波数カーブが作成されます。これは、最初に周波数あたりの損傷を計算することによって作成されます:(4) D ( f ) = D c y c ( f ) * n f c y c

ここで、 D ( f ) は、周波数当たりの損傷です。

Minerの累積損傷則に基づいて、単一の正弦波掃引の損傷の合計が、損傷対周波数カーブの下の領域を積分することによって計算されます。(5) D S w e e p = D ( f ) d f

ここで、 D S w e e p は、掃引当たりの損傷の合計です。

損傷の合計は、各掃引の損傷に掃引の数を掛けることによって計算されます。(6) D Total = N Sweeps * D Sweep

ここで、 N S w e e p は、掃引の数です。

周波数応答サブケースで、SR=0.0(掃引なし)または1つの加振周波数のみが定義されている場合、損傷値はその特定の周波数に対して計算されます。SR=0.0の場合、周波数応答サブケースの最初の加振周波数が使用されます。周波数応答サブケースに単一の加振周波数入力がある場合、その特定の周波数が選択されます。そのような場合、損傷の合計は、周波数当たりの損傷に、イベントについて定義された合計時間T#を掛けた値となります。

オクターブ / 分単位の掃引速度(SRUNIT=OCTPM)

掃引速度がオクターブ / 分単位で定義されている場合、掃引速度の計算には、ヘルツ / 秒単位の計算とは異なる式が使用されます。

オクターブ / 分単位の掃引速度は、掃引速度を υ とすると、周波数と時間の間に次の関係が成り立つことを意味します。(7) f= f 0 * 2 υt
ここで、
f
対象の周波数値。
f 0
周波数応答サブケースの加振周波数範囲の初期周波数値。
υ
オクターブ / 分単位の掃引速度(ロードマップ内のSRフィールド)。
t
正弦波掃引疲労において、応力範囲 Δ σ f に周波数 f が適用される時間。
両辺の自然対数をとり、周波数に関する導関数をとると、式は次のように単純化されます。 (8) dt df = 1 ln2 * 1 υ * 1 f
応力範囲対周波数が周波数応答解析より出力されます。これを使用して、特定の周波数での応力範囲が特定されます。特定の周波数での応力範囲 Δ σ f のサイクル数を計算するには、次の式を使用します。(9) n f c y c = d n d f = f d t d f = f * 1 ln 2 * 1 υ * 1 f = 1 υ ln 2
ここで、
f
対象の周波数値。
υ
オクターブ / 分単位の掃引速度(ロードマップ内のFATLOADエントリのSRフィールド)。
Note: 掃引速度はオクターブ / 分で定義されます。

特定の周波数 f での応力範囲 Δ σ f のサイクル数が n f c y c に等しいことがわかります(これを、任意の周波数で、単位周波数当たりのサイクル数として定義することもできます)。また、この式から、オクターブ / 分の場合、各周波数のサイクル数は周波数に依存しないことがわかります。したがって、すべての周波数のサイクル数は同じになります。

周波数 f におけるサイクル当たりの損傷値 D c y c ( f ) は、SNカーブの応力範囲 Δ σ f に基づいて計算されます。(10) D cyc ( f )= D SN Δ σ f
ここで、
D c y c ( f )
右記の周波数におけるサイクル当たりの損傷; f
D S N Δ σ f
SNカーブの応力範囲 Δ σ f に対応する損傷値。
ある周波数におけるサイクル当たりの損傷 D c y c ( f ) に基づいて、損傷-周波数カーブが作成されます(Figure 2)。これは、最初に周波数あたりの損傷を計算することによって作成されます。(11) D ( f ) = D c y c ( f ) * n f c y c

ここで、 D ( f ) は、周波数当たりの損傷です。

Minerの累積損傷則に基づいて、単一の正弦波掃引の損傷の合計が、損傷対周波数カーブの下の領域を積分することによって計算されます。(12) D S w e e p = D ( f ) d f

ここで、 D S w e e p は、掃引当たりの損傷の合計です。

損傷の合計は、各掃引の損傷に掃引の数を掛けることによって計算されます。(13) D T o t a l = N S w e e p s * D S w e e p

ここで、 N S w e e p は、掃引の数です。

周波数応答サブケースで、SR=0.0(掃引なし)または1つの加振周波数のみが定義されている場合、損傷値はその特定の周波数に対して計算されます。SR=0.0の場合、周波数応答サブケースの最初の加振周波数が使用されます。周波数応答サブケースに単一の加振周波数入力がある場合、その特定の周波数が選択されます。そのような場合、損傷の合計は、周波数当たりの損傷に、イベントについて定義された合計時間T#を掛けた値となります。

ひずみ-寿命

振動に基づく疲労に使用され、最も高い応力範囲によって生じる損傷に基づいて計算されます。

ひずみ-寿命疲労のプロセスは、応力-寿命のプロセスと同様で、サイクル数対応力範囲の特性評価が正弦波掃引による損傷の計算に使用されます。

振動解析では載荷と除荷のパス情報は失われるため、振動疲労でのひずみ-寿命アプローチは応力範囲ベースのデータの保守的な拡張となります。

ひずみ-寿命疲労解析は、一般的には塑性ひずみが生じる状況に対して実行されます。そのような場合、最大のエネルギー損失(最大の応力-ひずみヒステリシスループ)は、ひずみ範囲が最大のサイクルに対して発生します。このサイクルのひずみ範囲は最大であるため、他のひずみ範囲が小さなサイクルに比べて、この1サイクルの損傷も最大となります。まずNeuber補正が適用され、応力範囲データがひずみ範囲データに変換されます。


Figure 3. Neuber 補正:サイクル対応力範囲からサイクル対ひずみ範囲へのヒストグラムの変換
Figure 3より、応力範囲SR3がER3ひずみ範囲につながり、ER3ひずみ範囲が最大損傷および最大応力-ひずみヒステリシスループにつながることがわかります。他のすべての応力-ひずみヒステリシスカーブはこのカーブの内側に入ります。これらはこの最大サイクルに比べて、生じる損傷が小さく、ひずみエネルギー損失も小さいためです。


Figure 4. ひずみ範囲ヒストグラムを応力-ひずみヒステリシスループとして示した場合
Note: EN正弦波掃引疲労には平均応力ゼロが考慮されます。したがって、応力-ひずみカーブは、すべてのひずみ範囲で応力軸およびひずみ軸について対称です。
ひずみ-寿命正弦波掃引疲労では、内側の各ヒステリシスループのひずみ範囲は、荷重が適用された対応する応力範囲値に基づいています。ここで、これらのループを、ループの上部が最大のループに接触するまで持ち上げます(このプロセスはハンギングと呼ばれます)。このプロセスは、内側のすべてのループが最大のヒステリシスループの対応する上部のポイントに接触するまで、同様に繰り返されます。


Figure 5. 小さなひずみ範囲ヒステリシスループの最大ヒステリシスループへのハンギング

この更新された応力ひずみサイクルデータを使用して、応力-寿命正弦波掃引疲労解析で同様に残りの正弦波掃引処理が続行されます。

周波数ごとのサイクル数 n f c y c は、応力-寿命正弦波掃引疲労で同様に計算されます。
Note: 計算は、掃引速度がヘルツ / 秒単位の場合とオクターブ / 分単位の場合で異なります。

更新された応力情報(前のセクションで説明したハンギング処理の結果)の効果を組み込むには、SWT損傷モデルまたはMorrow損傷モデルが使用されます。Morrow損傷モデルには更新された新しい内側のループの平均応力が使用され、SWT損傷モデルには更新された新しい内側のループの最大応力が使用されます。

周波数 f におけるサイクル当たりの損傷値 D c y c ( f ) は、ENカーブのひずみ値と更新された平均 / 最大応力範囲に基づいて計算されます。詳細については、平均応力補正をご参照ください。(14) D c y c ( f ) = D E N Δ ε f
ここで、
D c y c ( f )
右記の周波数におけるサイクル当たりの損傷; f
D E N Δ σ f
ENカーブのひずみと更新された平均応力に対応する損傷値
ある周波数におけるサイクル当たりの損傷 D c y c ( f ) に基づいて、損傷-周波数カーブが作成されます(Figure 2)。これは、最初に周波数あたりの損傷を計算することによって作成されます。(15) D ( f ) = D c y c ( f ) * n f c y c
ここで、
D ( f )
周波数当たりの損傷。
Minerの累積損傷則に基づいて、単一の正弦波掃引の損傷の合計が、損傷対周波数カーブの下の領域を積分することによって計算されます。(16) D S w e e p = D ( f ) d f
ここで、
D S w e e p
掃引当たりの損傷の合計。

周波数応答サブケースで、SR=0.0(掃引なし)または1つの加振周波数のみが定義されている場合、損傷値はその特定の周波数に対して計算されます。SR=0.0の場合、周波数応答サブケースの最初の加振周波数が使用されます。周波数応答サブケースに単一の加振周波数入力がある場合、その特定の周波数が選択されます。そのような場合、損傷の合計は、周波数当たりの損傷に、イベントについて定義された合計時間T#を掛けた値となります。

正弦波掃引疲労解析の現在のサポート

  • フォンミーゼスのみが応力の組み合わせでサポートされています。
  • 単軸疲労解析のみがサポートされています。
  • ソリッド要素およびシェル要素についてSNとENがサポートされています。
  • 1つの正弦波掃引イベントに使用できるのは、1つのFRFサブケースのみです。