初期条件と境界条件

概要

前項で取り上げた方程式は、温度計算ドメインのソリッドボディでの熱伝導による熱伝達を記述しています。これらの方程式の値は、材料特性のkρCpおよび熱源qの出力のボリューム密度で決まります。

熱伝達関数の解が一意性を持つための条件として、このほかにソリッドボディのサーフェスでの初期条件と境界条件があります。

初期条件

過渡熱スタディの開始時(t=0)における温度場を記述する初期条件にはさまざまな種類があります。その例を次に挙げます:

  • 計算ドメインのすべての場所で温度が一定な均一温度場
  • FE解による初期化に伴って、スタディドメインの場所ごとに温度の値が異なる不均一温度場

境界条件

境界条件には、次のようにさまざまな種類があります:

  • 境界に適用する温度T0

    この温度は時間依存とすることができるほか、境界上の場所ごとに異なる温度とすることもできます。最も簡潔な条件は、境界全体で一定温度となるT=T0です。

  • 境界に適用する熱流束密度

    熱流束密度を境界に適用します。この熱流束は、計算ドメイン境界の位置で出入りする熱を反映した熱源を表現しています。

    φ0=0とした特殊な状態は、計算ドメインが熱的に絶縁されていることを意味しています(断熱境界)。この境界タイプでは、ソリッドボディとその外部環境との間で熱交換が発生していません。

  • 周囲環境との熱交換は次のように定義できます:
    • 対流による熱交換:、ここで
      • h: 対流熱交換係数(W/m2/K
      • T: 環境温度(K
    • 無限距離への放射による熱交換:、ここで
      • ε: 放射熱交換係数(輻射能)
      • σ=5,675×10-8W/m2/K4: シュテファン-ボルツマン定数
      • α: 吸収係数
      • T∝: 熱交換に関与する仮想ボディの温度