スカラー量、フェーザーの概念
概要
ポスト処理に使用できる量は、スカラー量またはベクトル量です。
本項では、スカラー量を取り上げて、回転ベクトル、複素画像、フェーザーなどのいくつかの定義をもう一度確認します。
回転ベクトル、複素画像
脈動ωの経時変化する正弦スカラー量は、角速度ωで回転するベクトルによって幾何学的に表現できます。
このベクトルは、複素数の形状表現です。
例: 正弦波電流と複素画像
振幅が、脈動がω(ω = 2 π f)、t = 0における位相がβである経時変化する正弦波電流i(t)があるとします。
この電流iの瞬時値i:i = Î.sin(ω.t + β)
は、次の複素数iの虚部に等しくなります:i = Im(i)
速度ωの回転ベクトル |
周期T=2 π/ωの正弦量i(t) |
---|---|
正弦波電流の複素瞬時値は、次の関係によって求められます:
- 直交形式: i = Î.cos(ω.t + β) + j.Î.sin(ω.t+ β)
- 指数関数形式: i = Î.e j(ω.t+ β)
ここで:
- は複素数値iの絶対値
- ωt + βは複素数値iの偏角(または位相)
- βは初期位相
回転ベクトルの複素表示
正弦量に割り当てられた回転ベクトルは、複素数Aの形式で表されます。この複素数は次のように記述できます:
- 直交形式:
- 指数関数形式:
フェーザーの概念
正弦量A(t)に関連付けられた複素関数は、次のように2つの因数に分解できます:
この分解を次の表に示します。
因数 | 記述 | 説明 |
---|---|---|
t = 0における量A(t)に関連付けられた回転ベクトル | ||
角度ωtのベクトル回転 |
- 因数には、という量の振幅と初期位相に関する情報が含まれます。
- 因数には、この量の時間変動に関する情報が含まれます。
フェーザーの概念
時間ドメイン内の正弦関数は、フェーザーによって複素ドメイン内で表すことができます。
フェーザー: 定義
を、という量に割り当てられたフェーザーと呼びます。すなわち、という量に関連付けられたフェーザーは、t=0の時点におけるこの量に関連付けられた回転ベクトルです。