コイルを貫く磁束の計算で乗じる係数

説明

対称性または周期性(あるいはその両方)による境界を有する有限要素ドメインでコイルを貫く磁束が表される場合、その計算に係数CM(コイルを貫く磁束の計算で乗じる係数)が導入されます。

Fluxでのコイルの概念

一般的に、コイルは直列に接続された一連の巻線(より線コイル導体)です。

Fluxでコイルを完全に(形状的、電気的に)定義するには、次の2つのオブジェクトを定義する必要があります:

  • より線コイル導体タイプの電気コンポーネント(電流値を定義する物理エンティティ)
  • コイル(コイルの形状を定義する形状エンティティ)

問題

対称性や周期性による境界を有する有限要素ドメインでコイルを記述するとどうなるでしょうか。

  • 電気的には、1つの電気コンポーネントのみが存在します。
  • 形状的には、“元の”コイル(FEドメインで記述したもの)と、対称性や周期性による“複製”が存在します。

この状況において、電気コンポーネントは、複数の形状的コイルから成るコンポーネントです。

このコンポーネント(つまり、“元の”コイルとその“複製)を貫く磁束を計算するため、Fluxは以下の評価を行います:

  • 対称性や周期性の数とタイプを考慮する係数CM
  • 関連付けられる導体の構成タイプ(すべて直列またはすべて並列)を考慮するConductors in series or in parallel欄

係数CMの使用

係数CMは、次のように使用されます:

  • 結果の後処理で、コイル導体を貫く磁束を計算するため(3D)

    (コマンドシーケンス:Advanced > Predefined computation > Magnetic flux > Compute flux through a coil conductor

  • 回路連成内で

コイル導体を貫く磁束の計算(ポストプロセッサ)

一般に、Fluxで計算される全体量(ポスト処理する量)は、有限要素ドメインでモデル化されているデバイスのパートについて計算されます*。

このルールは、ポストプロセッサで実行される、以下を除くすべての計算に適用されます:

  • 運動連成内のメカニカルセットに関連する量(力またはトルク)
  • 電力バランス
  • コイル内の磁束(関心のある問題)
注: *デバイス全体に相当する実際の結果を取得するには、Fluxの結果に、特定の係数(対称性や周期性の数やタイプによる)を乗算します。

回路連成によるFluxの計算(1)

回路連成で、コイルは2回表現されます:

  • 有限要素ドメインで1回: より線コイル導体(3Dでは非メッシュ化コイル)タイプの領域

  • 電気回路で1回: より線コイルタイプの電気コンポーネント

留意事項:

導体において、電流I、張力U、および磁束Φ間の関係は次のように示されます:

(1)

電気コンポーネントの端子での電圧Uは、コイルを貫く磁束Φ と式1の関係があります。

対称性や周期性が存在する場合、磁束Φの計算は、有限要素ドメインでモデル化されたデバイスのパートに対して実行されます。電気回路コンポーネントの特性が実際の特性の場合、式(1)を修正し、係数CMを導入して、対称性や周期性を考慮する必要があります。

結果として、

導体において、電流I、張力U、および磁束Φ間の関係は次のように示されます:

(2)

電気コンポーネントの端子での電圧Uは、コイルを貫く実際の磁束CMΦと式2の関係があります。

Fluxで自動的に計算される係数*CMにより、対称性や周期性を有する有限要素ドメインと電気回路間での一貫性が確保されます。

回路連成によるFluxの計算(2)

具体的には、対称性や周期性を有する有限要素ドメインと電気回路間の一貫性が確保されます。この2つの方法を以下に示します。

方法1(汎用): 一貫性はFluxにより管理されます。

電気回路コンポーネントの特性は、実際の特性です(受動コンポーネント(R、L、C)の実際の値、供給源の実際の値など)。

Fluxで自動的に計算される係数CMにより、有限要素ドメインと電気回路間での一貫性が確保されます。

方法2(特定のケース*): 一貫性はユーザーの責任です。

電気回路コンポーネントの特性は、対称性や周期性が考慮されるように調整されます。

係数CMはユーザーにより1に設定されます。

注: *リニアモーターの場合

用意されているオプション

ほとんどの場合、係数CMの計算はFluxによって実行されます(デフォルトオプション: 自動係数)。

ただし、この係数をユーザーが指定する必要がある場合には、次の表で詳しく説明されているオプションを使用できます。

オプション 内容
Automatic coefficient (symmetry and periodicity taken into account) CMは、問題のアクティブな対称性とアクティブな回転周期性を考慮し、自動的に計算されます。
Imposed coefficient (integer)

CMは整数です:

CM = N

Nは、有限要素ドメインに記述された反復パターンの数です。

(有限要素ドメインは、実際のデバイスの1/Nの部分に相当します。)

Imposed coefficient (fraction)

CMは、2つの整数の比です:

CM = N1 /N2

有限要素ドメインは、実際のデバイスの1/N1の部分に相当します。

N1は、有限要素ドメインに記述された反復パターンの数です。

N2は、電気回路によって供給された反復パターンの数です。