局所量(空間量)

説明

局所量(空間量)は、計算ドメインの各ポイントで直接アクセス可能な量です。

これらの量の評価を使用して次の処理を実行できます:

  • 検討対象である現象を詳しく解析する
  • 問題の入力データを適切に導入しているかどうかを確認する
  • 解析プロセスを適切に実施していることを確認する

物理アプリケーションの観点から見た局所量

物理アプリケーションの観点から見た局所量は、物理アプリケーションのタイプによって決まります。*

磁気アプリケーションで重要な局所量には、磁界Hや磁束密度Bなどがあります。これらの量を使用すると、たとえば、磁気材料の中で高い磁気飽和が発生する領域の特定や、デバイスの中で渦電流によるホットポイントになる可能性がある位置の特定ができます。

電気アプリケーションで重要な局所量には、電位Vや電界Eなどがあります。

熱アプリケーションでは温度(T)が重要な局所量になります。

注: * 本書の第3部では、§ 最新の物理アプリケーションに関する章に、各物理アプリケーションで利用可能な局所量の詳しい一覧を挙げています。

数学的な観点から見た局所量

数学的な観点から見た局所量(空間量)は、スカラーまたはベクトルの実数量または複素量です。

有限要素解析の観点から見た局所量

有限要素解析の観点から見た局所量にはさまざまなタイプがあります。次のような分類が考えられます:

  • 状態変数(磁位、電位、温度)
  • 状態変数の導関数(磁界、電界など)
  • 計算から得られる量(ソリッド導体の電流密度、表面力密度の平均値など)
  • 問題の入力データとして定義した物理特性(透磁率、誘電率、電流源密度など)

状態変数が必ずしも重視すべき関連の物理量であるとは限りません。このような例として、電磁気における磁位ベクトルがあります。この場合の磁位ベクトルは、それ自体で何らかの優位な量を表現しているわけではありません。重要な量は、その導関数(磁束密度B)のみです。一方で、熱解析では温度が重要な量となります。

状態変数

状態変数は、解析プロセスの際にメッシュの節点で計算する量です。

状態変数は、離散した点における量です。有限要素内部の任意のポイントにおけるこれらの量は、目的の要素に関連付けた多項式補間関数および要素の各節点における状態変数の値に基づいて計算された結果を評価して得られます。

例:

状態変数が磁位ベクトルAである場合、そのベクトルを次のように記述できます。

ここで:

  • αiはメッシュに依存する関数
  • Aiはメッシュの各節点における状態変数の値

これらの関数は連続しており、要素ごとに定義されるので、状態変数Aの連続性を確保できます。

状態変数の導関数

状態変数の導関数は、各要素に定義された関係を直接微分することで計算できます。

例1:

状態変数が磁位ベクトルAである場合、磁束密度Bを次のように記述できます。

例2:

状態変数が磁気スカラーポテンシャル である場合、磁界強度Hを次のように記述できます。

多項式関数αiの次数が、その適用先となる要素の次数と同じであれば、この要素に対する計算で得られる量は、1次要素であれば定数値となり、2次要素であれば1次変化量となります。

また、多項式関数αiを各要素上でまばらに定義している場合、2つの要素の境界上では、得られる量の連続性が損なわれることがあります。これにより、メッシュの細密度が不十分な場合は、この量が破線で表現されることが考えられます。

計算から得られる量

計算から得られる量は、状態変数およびその導関数から計算で得られる結果です。