OS-T:4090 複合材構造の製造性制約条件

本チュートリアルでは、製造性制約条件を伴うフリー寸法最適化を実行します。

複合材の利点の1つは、適切なプライ板厚、プライ方向、積層順序、プライ材料などを選ぶことで構造のパフォーマンスを正確にコントロールできることです。多くの異なるパラメータを変化させることが可能であれば、柔軟性はより高くなりますが、同時に、設計変数が増えるとパートの最適化はより困難となります。OptiStructは、複合材のプライ板厚、プライ方向および積層順序を直接的または間接的に最適化する機能を有しています。

フリー寸法最適化は、各要素内の各プライの板厚を設計変数として扱い、積層内の各プライについて最適な板厚分布を決定することで構造を最適化します。

いくつかの理由によって、複合材の製造者は積層複合材についてそれぞれ独自の製造条件を有しています。これら追加の製造性制約条件は、許容され得る製造ソリューションを達成するためのフリー寸法最適化に含まれるべきものです。OptiStructは、フリー寸法最適化で定義可能な異なる製造性制約条件をサポートしています。本チュートリアルでは、複合材構造のフリー寸法最適化で製造用制約条件の定義に使用する手順を説明します。

本チュートリアルにおける最適化問題の設定は以下の通りです:
目的関数
質量の最小化
制約条件
選択された6つの節点の変位 < 3 mm
設計変数
設計空間内での各要素の各層の板厚

4090_model
図 1. 複合材の翼のモデル

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルのオープン

  1. File > Open > Modelをクリックします。
  2. optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したComposite_Wing.hmファイルを開きます。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  3. Openをクリックします。
    Composite_Wing.hmデータベースが現在のHyperMeshセッションに読み込まれます。

モデルセットアップの確認

ここでは、HyperLaminateを使って層の積層情報を定義、確認、編集します。

モデルは既に解析用に設定されています。モデルのプロパティ、荷重、境界条件および荷重ステップは予め定義されています。モデルには15個のコンポーネントが含まれており、その中で、TopSkinおよびBottomSkinコンポーネントは複合材プロパティPCOMPで定義されています。残りのコンポーネントは、材料特性Aluminumを参照するPSHELLプロパティで定義されます。

寸法最適化を実行するための寸法設計変数もこのパネルで設定することが可能です。

os_4090_wing
図 2. ウィング形状
  1. 2DページからパネルHyperLaminateをクリックします。
    HyperLaminateが開きます。
  2. LaminateブラウザのLaminatesセクションで、TopSkinをクリックします。
    Laminate definitionセクションとReviewセクションにTopSkinコンポーネントプロパティが表示されます。Laminate definitionセクションにはプライ材料、プライ板厚、プライ方向などが、Reviewセクションの下にはそれらがグラフィカルに示されます。
  3. メニューバーFile > Exitをクリックし、HyperLaminateを終了してHyperMeshに戻ります。

最適化のセットアップ

寸法設計変数の作成

ここでは、フリー寸法最適化の設計変数を作成します。
  1. Analysisページからパネルoptimizationをクリックします。
  2. free sizeパネルをクリックします。
  3. createサブパネルを選択します。
  4. desvar=欄にSkinsと入力します。
  5. type:をにセットします。
  6. プロパティセレクターを使って、TopSkinBottomSkinプロパティを選択します。
  7. createをクリックします。

最小寸法製造性制約条件の追加

既に、free sizeパネルにいるはずです。
ここでは、最小部材寸法コントロールを5.0に定義します。部材寸法制御では、最終的なフリー寸法での部材寸法が制御でき、結果の構造は、ポスト処理中に解釈が容易な個々の部材を有するようになります。
  1. parametersサブパネルを選択します。
  2. desvars=をクリックしSkinsを選択します。
  3. minmemboffからmindim =に切り替え、5.0と入力します。
  4. updateをクリックします。

最小板厚製造性制約条件の追加

既に、free sizeパネルにいるはずです。
ここでは、下記の製造性制約条件のパーセンテージを定義します。
  • 最小積層板厚が0.2
  • すべての層について、(全積層板厚の)最小10%、最大60%の板厚を定義。これは、各要素において、全積層板厚の10%未満、もしくは60%より大きい板厚板厚をもつ層は存在しないことを意味します。
  • 配向角が45度である層の板厚が、配向角が-45度である層の板厚と同じ
  1. compositesサブパネルを選択します。
  2. desvars=をクリックしSkinsを選択します。
  3. laminate thicknessの下で、minimimum thickness offをminimum thickness =に切り替え、0.2と入力します。
  4. updateをクリックします。
    上記で定義された最小積層板厚制約条件はフリー寸法設計変数に更新されます。
  5. editをクリックします。
  6. Card Imageダイアログで、PLYPCTをクリックします。
  7. PLYPCTの下でBYSETを選択します。
  8. DSIZE_NUMBER_OF_PLYPCT=欄に4と入力します。
    これは、プライパーセンテージ制約条件が4プライに定義されるよう指定します。Card Imageダイアログで4つの追加の行が開き、プライパーセンテージが入力できるようになります。
    PANGLE
    PLYPCT制約条件が適用されるプライ方向
    PPMIN
    PLYPCT制約条件についての最小プライパーセンテージ板厚
    PPMAX
    PLYPCT制約条件についての最大プライパーセンテージ板厚
    PTMAN
    製造可能なプライ板厚

    os_4090_ply_constraints
    図 3.
  9. 最初のCOMP PLYPCT行で、制約条件を編集します。
    1. PANGLEに0と入力します。
      これは、配向角が0度である層についてプライパーセンテージ制約条件が定義されるよう定義します。
    2. PPMINに0.1と入力します。
    3. PPMAXに0.6と入力します。
    4. PTMAN欄はブランクのままとします。
    これは、各要素について、配向角が0の層の板厚は全板厚の10%以上60%以下であるべきことを定義します。
  10. 2番目のCOMP PLYPCT行で、制約条件を編集します。
    1. PANGLEに45と入力します。
    2. PPMINに0.1と入力します。
    3. PPMAXに0.6と入力します。
    4. PTMAN欄はブランクのままとします。
  11. 3番目のCOMP PLYPCT行で、制約条件を編集します。
    1. PANGLEに-45と入力します。
    2. PPMINに0.1と入力します。
    3. PPMAXに0.6と入力します。
    4. PTMAN欄はブランクのままとします。
  12. 2番目のCOMP PLYPCT行で、制約条件を編集します。
    1. PANGLEに90と入力します。
    2. PPMINに0.1と入力します。
    3. PPMAXに0.6と入力します。
    4. PTMAN欄はブランクのままとします。
  13. BALANCEを選択します。
    BALANCE制約条件は、2つの層が常に同じ板厚となることを確実にします。
    BALANCE
    バランシング制約条件が適用されることを示すBALANCEフラグ。
    BANGLE1
    BALANCE制約条件が適用される1つ目のプライの方向
    BANGLE2
    BALANCE制約条件が適用される2つ目のプライの方向
  14. BALANCE行で、制約条件を編集します。
    1. BANGLE1に45と入力します。
    2. BANGL21に-45と入力します。
    これは、配向角が45および-45である層は常に同じ板厚を持つよう定義します。
  15. returnをクリックし、パネルから戻ります。
  16. updateをクリックし、上記で定義された製造性制約条件をフリー寸法設計変数に更新します。
  17. returnをクリックし、free sizeパネルから戻ります。

最適化の応答の作成

  1. Analysisページからoptimizationをクリックします。
  2. Responsesをクリックします。
  3. モデルの全体積について定義される質量の応答を作成します。
    1. responses=欄に、massと入力します。
    2. response typeの下で、massを選択します。
    3. regional selectionをとno regionidに設定します。
    4. createをクリックします。
  4. 変位の応答を作成します。
    1. responses=欄に、dispと入力します。
    2. response typeの下で、static displacementを選択します。
    3. nodes > by setsをクリックし、Nodesを選択してselectをクリックします。
      ウィングの末端側の6つの節点が選択されます。
    4. displacement typeをdof3に設定します。
      dof1、dof2、dof3
      X、Y、Z方向の並進自由度
      dof4、dof5、dof6
      X、Y、Z方向の回転自由度
      total disp
      x、y、z方向の並進変位の結果
      total rotation
      x、y、z方向の回転変位の結果
    5. createをクリックします。
  5. returnをクリックし、Optimization panelに戻ります。

設計制約条件の作成

  1. dconstraintsパネルをクリックします。
  2. constraints=欄にdisp_constrと入力します。
  3. response =をクリックしdispを選択します。
  4. upper boundの横のボックスにチェックマークを入れ、2.0と入力します。
  5. 荷重ステップセレクターを使って、Subcase1 and Subcase2を選択します。
  6. createをクリックします。
  7. returnをクリックし、Optimization panelに戻ります。

目的関数の定義

  1. objectiveパネルをクリックします。
  2. minが選択されていることを確認します。
  3. responseをクリックし、massを選択します。
  4. createをクリックします。
  5. returnを2回クリックし、Optimization panelを終了します。

最適化の実行

  1. AnalysisページからOptiStructをクリックします。
  2. save asをクリックします。
  3. Save Asダイアログで、OptiStructモデルファイルを書き出す場所を指定し、ファイル名としてWing_FreeSize_with_PLYPCTと入力します。
    OptiStruct入力ファイルには、拡張子 .femが推奨されます。
  4. Saveをクリックします。
    入力ファイル欄には、Save Asダイアログで指定されたファイル名と場所が表示されます。
  5. export optionsのトグルをallにセットします。
  6. run optionsのトグルをoptimizationにセットします。
  7. memory optionsのトグルはmemory defaultにセットします。
  8. OptiStructをクリックして最適化を実行します。
    ジョブが完了すると、ウィンドウ内に次のようなメッセージが現れます:
    OPTIMIZATION HAS CONVERGED.
    FEASIBLE DESIGN (ALL CONSTRAINTS SATISFIED).
    エラーがある場合、OptiStructはエラーメッセージも出します。エラーに関する詳細は、テキストエディタでファイル Wing_FreeSize_with_PLYPCT.outを開いて確認することができます。このファイルは同じディレクトリ内に.femファイルとして書き出されます。
  9. Closeをクリックします。

結果の表示

OptiStructは、すべての反復計算について要素板厚、積層板厚情報を、また線形静解析の変位およびフォンミーゼス応力結果を示します。本演習では、これらの結果をHyperViewで可視化する方法について解説します。

要素およびプライ板厚のコンタープロットの表示

  1. OptiStructパネルから、HyperViewをクリックします。
    HyperViewHyperMesh Desktop内で起動し、全ての.h3d結果ファイルを読み込みます。
  2. ResultsツールバーでresultsContour-24をクリックし、Contour panelを開きます。
  3. Result typeをElement thicknessesおよびThicknessに設定します。
  4. Applyをクリックします。
    選択された反復計算について、全積層板厚のコンターが表示されます。
  5. Resultsブラウザから、最終設計反復計算結果を選択します。

    os_4090_iteration0
    図 4.
    コンター表示された板厚は、現在の設計について最適な積層板厚分布です。

プライ板厚のコンタープロットの表示

TopSkinおよびBottomSkinコンポーネントのみがフリー寸法設計スペースにあり、これら2つのコンポーネントの板厚のみが変化しているため、これらコンポーネントに限って表示させるのが便利です。また、よく見えるようにするためには、互いに非常に近い位置にある2つのサーフェスを離すことが役立ちます。
  1. ResultsツールバーでresultsIso-24をクリックし、Isoパネルを開きます。
  2. Applyをクリックします。
    モデルのアイソメトリックビューを表示させます。
  3. ResultsブラウザtabComponents-24をクリックし、Componentビューを表示させます。

    os_4090_comp_view
    図 5.
  4. ResultsブラウザのビューコントロールからdisplayIsolate-24(Isolate Shown)をクリックし、BottomSkinおよびTopSkinコンポーネントをクリックします。
    2つのコンポーネントが分離されます。
  5. Visualizationツールバーでexpをクリックし、Exploded Viewパネルを開きます。
  6. Addをクリックし、新しい展開ビューを追加します。
  7. コンポーネントの1つをクリックし、移動用として選択します。
  8. Translateの下で、DirectionをX Axisに設定します。
  9. Distance欄に5と入力します。
  10. +をクリックし、選択されたコンポーネントを正のX方向に移動させます。両方のコンポーネントが十分見えるようコンポーネントが移動するまでこれを繰り返します。

    os_4090_laminate_optimized
    図 6. 積層材の最適化された板厚コンター
  11. ResultsツールバーでresultsContour-24をクリックし、Contour panelを開きます。
  12. Result typeをPly ThicknessおよびThicknessに設定します。
  13. Entity with Layerを1に設定します。
  14. Applyをクリックします。
    1つ目のプライ板厚コンターが表示されます。同様に、Ply 2、Ply 3およびPly4またはMaxについても、同じ手順で板厚をプロットすることができます。

    os_4090_laminate_optimized2
    図 7. 1つ目のプライの最適化された板厚コンター
すべての製造用制約条件(プライパーセンテージ、バランスおよび最小積層板厚)が満足されているかを確認します。追加で、Wing_FreeSize_with_PLYPCT.outファイルをテキストエディタで開き、最終反復計算で変位の制約条件が満たされているかを確認します。