S-N法を用いたシーム溶接疲労解析

この手法は、薄いメタルシートに適用可能なホットスポット応力アプローチです。

ホットスポット応力は溶接線における節点力から計算されます。この方式は、1.0~3.0mmのシート厚に対し、ラボでのテスト結果と十分な一致を示しています。通常、この方式では、2つのS-N曲線が必要です。1つは曲げ応力による曲げS-N曲線で、もう1つは面内応力による面内S-N曲線です。

本チュートリアルの実行には、optistruct.zipに含まれる下記のファイルが必要です。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。

SeamWeld_frame.fem

または

本チュートリアルで使用されるモデルファイル群のコピーは、<install_directory>/tutorials/hwsolvers/optistructで入手できます。

本チュートリアルでフレームには、縦方向の曲げに加え、前方および後方ねじり荷重がかかっています。シーム溶接は、フレームを形成するセクション間にモデル化されています。本演習は、シーム(フィレット)溶接位置で生じる損傷を計算するために行われます。


図 1. 自動車のフレーム

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

本演習に使用されるモデルは、図 1に示すような自動車のフレームのモデルです。入力ファイルには、フレームが受ける3つの静的荷重ステップFrontal torsion、Rear torsionおよびVertical bendingです。

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。
  3. Tools > Fatigue Process > Create Newをクリックします。
  4. New Sessionで、作業ディレクトリフォルダーに名称を入力します。
  5. Createをクリックします。
    これで、現在ロードされている疲労プロセステンプレートの内容を保存するための新しいファイルが生成されます。

モデルの読み込み

  1. File > Import > Solver Deckをクリックします。
    Importタブがタブメニューに追加されます。
  2. File typeにOptiStructを選択します。
  3. Filesアイコンfiles_panelを選択します。
    Select OptiStruct Fileブラウザが開きます。
  4. 自身の作業ディレクトリに保存したSeamWeld_frame.femファイルを選択します。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  5. Openをクリックします。
  6. Import、続いてCloseをクリックし、Importタブを閉じます。
    疲労解析のセットアップの大筋は、以下のステップで得られます。


    図 2. 疲労のセットアップ - フィレットシーム溶接

モデルのセットアップ

TABFAT荷重コレクターの定義

荷重順序の定義の最初のステップはTABFATカードの定義です。このカードは荷重履歴を示します。
  1. Viewメニュー内のUtilityメニューが選択されていることを確認します。View > Browsers > HyperMesh > Utilityをクリックします。
  2. ブラウザのModel タブの横にあるUtilityメニューをクリックします。ToolsセクションでTABLE Createをクリックします。
  3. OptionsをImport tableに設定します。
  4. TablesをTABFATに設定します。
  5. Nextをクリックします。
  6. 荷重ファイルをブラウズします。
  7. Open the XY data Fileダイアログボックスで、Files of type filterをCSV (*.csv)に設定します。
  8. optistruct.zipファイルから自身の作業ディレクトリに保存したload1.csvファイルを開きます。
  9. NameにLH1を指定して新規テーブルを作成します。
  10. Applyをクリックし、テーブルを保存します。
    TABFATカードイメージの荷重コレクターLH1が生成されます。
  11. 2番目の荷重ファイルload2.csvをブラウズします。
  12. NameにLH2を指定して新規テーブルを作成します。
  13. Applyをクリックし、テーブルを保存します。
    TABFATカードイメージの荷重コレクターtable2が生成されます。
  14. テーブルLH1およびLH2は、Utility tab > TABLE Create > Create/Edit Table > TABFAT > Edit Existing Tableから編集 / 確認が可能です。
  15. CancelでImport TABFATウィンドウを終了します。
    Modelブラウザ内のLoad Collectorの下にテーブルが現れます。
    注: DACフォーマットのファイルはHyperGraphで簡単に読み込むことが可能で、HyperMeshで読めるCSVフォーマットに変換できます。

FATLOAD荷重コレクターの定義

荷重ケースそれぞれにfatloadを作成します。

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFatload_Frontと入力します。
  3. Card Imageに、FATLOADを選択します。
  4. TID(テーブルID)に、荷重コレクターのリストからLH1を選択します。
  5. LCID(荷重ケースID)に、荷重ステップのリストからFront Torsional Stiffnessを選択します。
  6. LDM(荷重の大きさ)を0.1に設定します。
  7. Scaleを0.6に設定します。
  8. このプロセスを繰り返し、以下の名称のFATLOADカードであと2つ、追加の荷重コレクターを作成します。

    Fatload_RearでLCIDがRear Torsional Stiffness、TIDがLH2

    Fatload_VerticalでLCIDがVertical Bending Stiffness、TIDがLH2

  9. LDMを0.1に、Scaleを0.6に設定します。

FATEVNT荷重コレクターの定義

作成されたfatloadsを割り当てるためのイベントを作成します。

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにEvent1と入力します。
  3. Card Imageに、FATEVNTを選択します。
  4. FATEVNT_NUM_FLOADに1と入力します。
  5. FLOAD荷重コレクターをFATLOAD_Frontにセットします。


    図 3. 3個のFatloadsを含んだイベントカード
  6. 同様にEvent2を作成し、FATEVNT_NUM_FLOADを2に設定してFLOADとしてFatload_Rear、Fatload_Verticalを指定します。


    図 4. 3個のFatloadsを含んだイベントカード

FATSEQ荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATSEQと入力します。
  3. Card Imageに、FATSEQを選択します。
  4. FATSEQ_NUMに2と入力します(2つのFATEVENTが作成されているため)。
  5. FID(疲労イベント定義)にEvent1 and Event2を選択します。
    疲労解析のためのイベントのシーケンスの定義が完了しました。次に疲労パラメータが定義されます。

疲労パラメータの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Nameにfatparamと入力します。
  3. Card Imageに、FATPARMを選択します。
  4. TYPEがSNに設定されていることを確認します。
  5. STRESS COMBINEをSGVON (Signed von Mises)に設定します。
  6. STRESS CORRECTIONをGERBERに設定します。
  7. STRESSUをMPA (Stress Units)に設定します。
  8. RAINFLOW RTYPEをLOADに設定します。
  9. GATERELを0.0に設定します。
  10. CERTNTY SURVCERTを0.5に設定します。
  11. SMWLDの横のボックスにチェックマークを入れ、以下のオプションを選択します:

    METHOD = VOLVO

    Mean Stress Connection = FKM

    SURVCERT = 1e-9

    THCKCORR = YES

  12. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクであるElements and Materialsに進みます。詳細については、Altair Simulation 2022ヘルプをご参照ください。

疲労材料特性の定義

疲労解析の材料カーブはMAT1カードで定義できます。

  1. Modelブラウザで、材料Steelをクリックします。
    エンティティエディターが開きます。
  2. エンティティエディターで、MATFATの横のボックスにチェックマークを入れます。
  3. UNITを、リストからMPAに設定します。
  4. UTS (ultimate tensile stress)を600に設定します。
  5. SMWLDの横のボックスにチェックマークを入れ、STRUCTURAL SN CURVEをUser Definedに設定します。
  6. SN-based Seam Weld Fatigueプロパティを、次のように設定します:
    SRI1_SM1
    1203.0
    B1_SM1
    -0.133
    NC1_SM1
    1e6
    B2_SM1
    -0.108
    SE_SM1
    1
    SRI1_SM2
    803.0
    B1_SP2
    -0.15
    NC1_SM2
    1e6
    B2_SM2
    -0.11
    SE_SM2
    2.0

    2ポイント勾配カーブが曲げSNおよび面内SNに追加されます(ここでは、1 = 曲げ、2 = 面内)。1ポイント勾配も追加可能です。

PFATSMWプロパティの定義

BRATIOは、補間されたSNカーブがどちらをベースに作成されたか、Bending MomentsまたはMembrane Forcesが最大応力に寄与しているかどうかを理解するのに役立ちます。

同様に、TREFとTREF_Nは板厚修正の説明に役立ちます。

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Propertyを選択します。
  2. NameにPFATSMW_7と入力します。
  3. Card Imageに、を選択します。
  4. BRATIOを0.6に設定します。
  5. TREF を 1.1に設定します。
  6. TREF_Nを0.1に設定します。
  7. Closeをクリックします。

FATSEAM荷重コレクターの定義

FATSEAMは、シーム溶接タイプの選択に役立ちます。

ここではフィレット溶接です。

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATSEAMと入力します。
  3. Card Imageに、FATSEAMを選択します。
  4. WTYPE を FILLETに設定します。
  5. NUM_FATSEAM_PSHELL_PIDSを1に設定します。
  6. PIDの横の<Unspecified>欄をクリックし、PIDにproperty1を選択します。
    property1は、シーム溶接コンポーネントのプロパティIDです。


    図 5.
  7. Closeをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクLoad-Time Historyに導かれます。

FATDEF荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATDEF1と入力します。
  3. Card ImageをFATDEFに設定します。
  4. PTYPE エンティティエディターで、FATSEAMをアクティブにします。
  5. FATDEF_FATSEAM_NUMIDSに1と入力します。
  6. FATSEAMIDにFatSeam、PFATSMWIDにPFATSMW_7を選択します。
  7. Closeをクリックします。

疲労荷重ステップの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Stepを選択します。
  2. NameにFatigue_3LCs_SeamWeldと入力します。
  3. Analysis typeをfatigueに設定します。
  4. FATDEFにfatdefを選択します。
  5. FATPARMにfatparamを選択します。
  6. FATSEQにfatseqを選択します。

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルに入ります。
  2. input file欄に続くsave asをクリックします。
    Save Asダイアログが開きます。
  3. File nameに名称Automotive-Frame-SeamWeld-fillet.femを入力します。
  4. Saveをクリックします。
  5. OptiStructをクリックし、解析をサブミットします。

結果の確認

  1. OptiStructパネルから、HyperViewをクリックします。
    HyperViewが起動され、結果が読み込まれます。HyperViewにモデルと結果が正しく読み込まれたことを示すメッセージウィンドウが現われます。
  2. Resultsタブに移動します。
  3. Resultsタブで、サブケースフィールドから を選択します。
  4. ResultsツールバーでresultsContour-16をクリックし、Contour panelを開きます。
  5. Result typeをにセットし、Applyをクリックして要素コンターを表示させます。
  6. Result typeにToe/Root/Throat(s)を、サブのResult TypeにToeをセットします。
  7. Applyをクリックします。

    コンター表示された要素は、対応するSeam要素についてのToe要素です。

  8. 同様にToeRootの間で切り替え、対応する要素群をハイライト表示させます。

    ToeとRootは、フィレット溶接について考慮される評価位置です。