VTS データ、ビレット、テーパー、HTCの定義

Process Dataツールを使用して、可変時間ステップ(VTS)データ、ビレットテーパー、熱伝達係数を定義します。

可変時間ステップの自動定義

非定常解析では時間ステップデータを指定する必要があります。金属押出は周期的なプロセスで、各サイクルの持続時間は以下に依存します:
  • ラム速度
  • ラム加速時間
  • 据込後のビレットの長さ
  • バットの長さ
Inspire Extrudeは、上記の値に基づいて、使用する時間ステップデータを自動的に決定します。したがって、自動時間ステップ決定が推奨方法となります。ただし、時間ステップデータは、Process Dataツールを使用して編集および変更することができます。
  1. Extrusionリボンから、Process DataツールにあるVTS ツールをクリックします。


    時間ステップデータダイアログが表示されます。
  2. ビレット長さ欄に、据込後のビレットの長さを設定します。この値は、作成されたビレットの長さに一致します。これは測定して確認できます。
  3. ビレット長さ欄に、ビレットの長さを設定します。この値は一般的に1インチです。短いビレットの場合、実際の値がわからなければ、1インチかビレットの長さの10%のうちどちらか小さい方を使用します。例えば、ビレットの長さが5インチの場合、バットの長さとして0.5インチを指定します。
  4. Ram Speed欄に、パンチ(ダミーブロックまたはラム軸とも呼ばれる)の移動速度を入力します。
  5. タイムステップに自動または手動のいずれかを選択します。推奨は自動です。

可変時間ステップの手動定義

タイムステップデータダイアログの手動オプションを使用して、非定常問題の時間ステップを制御および変更します。これにより、そのサイクル中に最大5つの異なる時間ステップサイズ(ゾーンと呼ばれる)を定義できます。

Inspire Extrudeは自動的にサイクル時間を見積もります。このサイクル時間を短縮し、フルサイクル解析より短い時間で解析を行うことができます。

  1. Extrusionリボンから、Process DataツールにあるVTS ツールをクリックします。


    時間ステップデータダイアログが表示されます。
  2. ビレット長さ欄に、据込後のビレットの長さを設定します。この値は、作成されたビレットの長さに一致します。これは測定して確認できます。
  3. ビレット長さ欄に、バットの長さを設定します。この値は一般的に1インチです。短いビレットの場合、実際の値がわからなければ、1インチかビレットの長さの10%のうちどちらか小さい方を使用します。例えば、ビレットの長さが5インチの場合、バットの長さとして0.5インチを指定します。
  4. Ram Speed欄に、パンチ(ダミーブロックまたはラム軸とも呼ばれる)の移動速度を入力します。
  5. 時間ステップには手動を選択します。
  6. サイクル時間を短縮するには、新しい値を入力します。
  7. 時間ゾーンの数を選択します。
    • 各時間ゾーンに対し、終了時間Num Of Stepsのみを変更できます。残りのデータは自動的に計算されます。


  8. OKをクリックします。

    次の図に、上記テーブルの4つのゾーンの時間ステップサイズが荷重曲線にどのように対応しているかを示します。ソルバーが解を計算する際、0~5.0秒の間では1秒の時間ステップサイズが使用されます。つまり、ポストプロセッサでは、毎秒後の解を確認できます。次の5.0~15.0秒の間では、2秒ステップで時間を進めます。つまり、5.0、7.0、9.0、11.0、13.0、15.0と進みます。同様にして、残りの2つの時間ゾーンについても、それぞれ2.5秒、3.0秒の時間ステップサイズで時間を進めます。Inspire Extrudeでは、時間ステップを定義する際、1~5の時間ゾーンを指定できます。計算される解の質は、ステップのサイズに影響されないことに注意してください。



ビレットテーパーの設定

ビレットテーパーを設定する前に、ビレットを作成します。
押出では、応力仕事によりサイクル中にプロファイルの温度が上昇するため、加熱されます。これにより製品品質が劣化したり、均一でなくなる場合があります。これを解決するため、ビレットのテーパー加熱が使用されます。Inspire Extrudeでは、3つすべてのテーパー加熱のタイプの組み合わせをサポートしています。
  • 軸テーパー
  • 横テーパー
  • 径方向テーパー
Inspire Extrudeでは、このデータを押出プロセスで使用するとおりに指定できます。このデータは非定常解析にのみ関係し、非定常解析に対してのみ有用です。定常解析やベアリング最適化解析を実行している場合は、このデータを指定する必要はありません。
  1. Extrusionリボンから、Process DataツールにあるBillet Taper.ツールをクリックします。


    ビレットテーパーデータダイアログが表示されます。
  2. サイクル数列に、解析の実行サイクル数を指定します。Inspire Extrudeでは、サイクル数を最大5に制限しています。

    ただし、ソルバーではシミュレーションでこの値を制限していません。ソルバーには、サイクルごとに変化し得るさまざまな開始ビレットとテーパーに基づく制限があります。サイクル1~5で使用されるテーパーデータをそれぞれ異なるものにすることができます。その後、残りのサイクルに対して、ソルバーは5番目のサイクルデータを使用します。各サイクルの計算時間は、定常解析のCPU時間の約5倍となります。これは、大規模なマルチサイクル解析を実行する場合には留意する必要があります。このリリースでは、5サイクルを超える解析を実行する場合、手動で*.hxファイルを変更し、このパラメータを増加させる必要があります。

  3. 必要に応じて残りの欄を入力します。
  4. OKをクリックします。

ビレットテーパー例

Axial Taper
軸テーパーが使用される場合、ビレットの温度は軸方向に沿って変化します。この変化は、それぞれ線形に変化する5つのゾーンとして指定できます。ビレットはダイス端部で温度が高く(この温度がビレット予熱温度)、ラム端部で(相対的に)温度が低くなります。下の図に、この変化と、ソルバーでゾーンがどのように考慮されるかを示します。




Lateral Taper

ビレットがコンテナーに投入されると、ビレットの底部はコンテナーに接触します。したがって、ビレットの底部と上部で熱伝導率が異なり、横方向の温度変化が生じます。この勾配は、1つのビレットから複数のプロファイルを押し出す場合に重要となります。熱伝導率の差を補うため、横方向に不均一にビレットを加熱することもできます。後でテーパーデータを使用してこの勾配を指定します。下の図に、ビレットの底部から上部まで、温度がどのように変化するかを示します。データを指定する際に、片側(上部または底部)をもう一方より高い温度にすることができます。


Radial Taper

押出の際、ビレットの周辺領域は中心領域に比べて過度の変形を受けるため、より高温になります。これを補うため、ビレットの半径方向に不均一な加熱が使用されます。


熱伝達係数の定義

フェイスを選択して熱伝達の境界条件を指定します。

  1. Extrusionリボンから、Process DataツールにあるHTC ツールをクリックします。

  2. HTCの境界条件を適用するサーフェスを選択します。
    Ctrlを押し、モデル上のサーフェスをクリックして選択と選択解除を切り替えることで、境界条件を追加または削除します。


    Ctrlを押したままにして、同じ境界条件に複数のフェイスを追加します。


  3. マクロダイアログに値を入力し、その熱伝達プロパティを割り当てます。

    Note: 選択したサーフェスかパート全体のいずれかにHTCを適用します。パートを選択すると、HTCはそのパートのすべてのサーフェスに適用されます。