完全自動メッシュ化または混合メッシュ化: 比較

概要

次の2つのメッシュ化手法が用意されています:

  • 自動メッシュジェネレーター: 1つのメッシュジェネレーターを使用してドメインの全体をメッシュ化する手法
  • 混合メッシュ化: モデル化する物理現象に最適なメッシュジェネレーターをドメインごとに使用することにより、サブドメイン単位でメッシュ化する手法

どちらを選択するかは、モデル化対象デバイスに関連する制約に応じて状況ごとに判断します。

制約の管理

メッシュ化操作では、モデル化対象デバイスに関連する次のような制約に従う必要があります。

制約 制約の説明 管理主体
形状面の制約 デバイス形状の考慮(ボリュームどうしの境界面など) ソフトウェア
物理的制約 問題の物理特性に対するモデルの適合(狭い空隙や表皮厚さなど) ユーザー

自動メッシュ

自動メッシュでは、形状の境界面が全面的にソフトウェアによって確実に考慮されます。

それを実現するために、フェイスやボリュームのポイントとラインに割り当てられた節点密度情報に合致するように、自動メッシュジェネレーターのアルゴリズムによって、そのフェイス上またはボリューム内部に追加の節点が挿入されます。

混合メッシュ

混合メッシュでは、問題の物理特性にメッシュが適合するように、自動メッシュよりも多くのオプションが用意されます。

その一方で、3Dではソフトウェアに特定の制限が発生することがあります。形状の境界面でメッシュの適合性を実現することがソフトウェアでは困難なことがあるからです。

混合メッシュ: 使用例

電気工学デバイスのモデル化では、自動メッシュジェネレーターを使用して複雑なトポロジの空気やボリュームをメッシュ化しますが、各種の影響を受けやすいパート(磁気回路、空隙、表皮厚さなど)は、マップドメッシュジェネレーターまたは押し出しメッシュジェネレーターを使用してメッシュ化することが一般的です。

回転機械をモデル化する場合は、連結メッシュジェネレーターを使用して、フェイス(機械のスロットなど)上にサイズと形状が同じメッシュを生成することをお勧めします。

メッシュ適合の制約

メッシュには適合性が必要です。具体的には、ドメインどうしの境界上で要素が“連続していること”または一致している必要があります。

2Dで三角形要素と矩形要素の混在が一般的な場合、3Dで六面体要素と四面体要素が混在すると何らかの問題が発生することがあります。

3Dでは、六面体または角柱でメッシュ化したドメイン間境界との整合性、および四面体でメッシュ化したドメイン間境界との整合性は、角錐要素の自動挿入によって実現します。

その例を下図に示します。

不適合の例

2つのドメイン間境界上に発生した不適合の例を下図に示します。一方のボリュームは六面体でメッシュ化され、他方のボリュームは四面体でメッシュ化されます。

2つの四面体要素によるフェイスで構成された2つの三角形サーフェス要素は、六面体のフェイスである矩形サーフェス要素に相当します。

マップドメッシュ化ボリュームが連結メッシュ化ボリュームに接触する場合に、この状況が発生します。Fluxでは、この不適合が禁止されています。

不適合を修復するためのアルゴリズム

Fluxでは、メッシュの適合性を実現するために、六面体と四面体との不適合や、矩形または角柱のフェイスと四面体との不適合を角錐の挿入によって修復するアルゴリズムを使用します。

三角形サーフェス要素と矩形サーフェス要素が存在する場合は、Fluxによって2つの三角形要素から角錐が生成されます。

これにより、次の2つの状況が発生することが考えられます:

  • それぞれ2つの三角形サーフェス要素から成る2つの四面体が同じ頂点節点を持っています。この場合は、これらの四面体を接続して角錐を作成できます。
  • 2つの四面体が同じ頂点節点を持っていない場合は、Fluxによって適切な位置に新しい節点が挿入されます。

どのような状況でも角錐を挿入できるわけではなく、不適合の修復では、このアルゴリズムに何らかの制限が発生します。

第1の制限

矩形メッシュの変形が顕著な場合は、四面体に属している三角形要素によってその矩形要素が切断されることがあります。この状況を下図に示します。

この状況では、Fluxによるメッシュの適合が保証されません。このメッシュは失敗します。

第2の制限

第2の制限には、第1の制限よりも不明確な面があります。角錐の挿入によってメッシュの適合性を実現するために、Fluxによって一定数の節点が追加されます。ただし、鋭角が存在すると、このアルゴリズムが適切に機能しません。この制限を次の例で示します。

次に挙げる3つの六面体ボリュームで構成した簡単なデバイスを下図に示します。

  • 2つの外部ボリュームがマップドメッシュジェネレーターでメッシュ化されています。
  • 内部ボリュームが自動メッシュジェネレーターでメッシュ化されています。
実際には、このデバイスのメッシュは不可能なことに注意します。

この設定では、角錐を構築するための節点を挿入できないことから、不適合修復アルゴリズムによる修復は失敗します。

用途

自動メッシュジェネレーターを使用してメッシュ化した要素が、マップドメッシュジェネレーターまたは押し出しメッシュジェネレーターを使用してメッシュ化した要素より大きい場合、角錐生成アルゴリズムの安定性が向上することが経験上わかっています。

節点の作成を優先して角錐を挿入できるようにするうえで、アドバンシングフロント法に基づくボリュームメッシュ化が1つの解決策になることもあります(ボリュームメッシュ化のアルゴリズムをご参照ください)。