対称性ドメインまたは周期性ドメインのコイルエンティティ
概要
電磁デバイスの構造に共通の特徴として形状の対称性と周期性があります。Fluxでは、この特徴の重要性を考慮し、プロジェクトでそれらの適切で効率的な表現が得られるように、各種の包括的な専用ツールを用意しています。
- Fluxにおける対称性と周期性の概念に関する留意事項
- コイルエンティティの作成でSymmetries and Periodicities: number of conductors in series or in parallel欄を設定する方法
- Fluxでコイルエンティティを定義するときに、複数の対称性を組み合わせることによって得られる効果。
Fluxにおける対称性と周期性
Fluxには、対称性デバイスと周期性デバイスの表現を簡素化する、次の2つのツールがあります:
- 2Dアプリケーションと3Dアプリケーションの両方で、ドメインに対称性エンティティを割り当てることができます。このツールは、平面に対して対称なデバイスを適切に表現できるように作成されています。
- 2Dアプリケーションと3Dアプリケーションの両方で、周期性エンティティを作成することもできます。このエンティティは、反復パターンを示す形状を持つデバイスの記述に適しています。このパターンは、平行移動または軸を中心とした回転によって得られるものとします。
Fluxプロジェクトでは、対称性と周期性の作成を強くお勧めします。可能な限り対称性と周期性をプロジェクトに導入すべき理由は次のとおりです:
- デバイスの一部のみを表現すればすむことから、プロジェクトの記述を著しく簡素化できます。これによって、計算時間が短くなり、必要なメモリ量が少なくなることがわかります。
- プロジェクトの記述で対称性と周期性を考慮することによって、より正確な結果が得られます。この考え方は、対称性箇所と周期性箇所のメッシュが不均一でも、計算で得られる解が影響を受けないという事実が根拠となっています。形状全体のメッシュ表現では、このような不均一性の発生が避けられません。
有限要素法の観点から見ると、Fluxプロジェクトに対称性または周期性を作成することは、境界値問題で一意な解が得られるように一群の境界条件を適用することに相当します。当然のことながら、適用する条件には、モデル化するデバイスとの物理的な整合性が必要です。Fluxには、対称性エンティティと周期性エンティティで使用できる数種類の境界条件があります(対称性については接線方向磁界条件または法線方向磁界条件、周期性については周期性条件または非周期性条件をご参照ください)。
一方で、Fluxの対称性エンティティや周期性エンティティを使用せず、プロジェクトでデバイスをあらゆる面から表現することが望まれることもあります。そのような状況では、代わりにFluxモデラー(Fluxの組み込みCADモジュール)で形状オブジェクトに対して対称変換と反復変換を実行できる点に注目します。このような変換は、反復パターンを持つ複雑な形状の作成で効果的ですが、その形状を物理的に記述する前に実行する必要があります。
周期性または対称性によるコイルエンティティのイメージと元のエンティティとの関連付け
Fluxでコイルエンティティを適切に作成するには(メッシュ化コイル領域と非メッシュ化コイル磁界源の作成)、既存の対称性と周期性によって生成したコイルの“コピー”である“イメージ”を、互いにどのように接続するか、また関連するFE連成コンポーネントに外部回路でどのように接続するかを指定する必要があります。
プロジェクトに存在する対称性と周期性の数と種類に応じて、いくつかの方法が考えられます。どの場合でも、コイルエンティティに関するSymmetries and Periodicities: number of conductors in series or in parallel欄を次のオプションのいずれかに設定することで、このタスクを実行します:
- All in parallel
- All in series
- Number of symmetrical and periodical conductors in parallelに続いて整数を指定
すでに述べたように、“元の”コイル導体とその“イメージ”を結び付けるさまざまな関連付けが可能です。 表 1 は、図 2の例で考えられる適切な関連付けをすべて示しています。図 2(c)で適用した色別規則を、この表の回路に使用しています。
対称性と周期性: 直列接続または並列接続した導体の数 | 等価回路での導体間関連付け |
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すべての導体を直列接続。または、並列接続した対称性導体と周期性導体の数が1 |
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並列接続した対称性導体と周期性導体の数が2 |
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並列接続した対称性導体と周期性導体の数が3 |
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すべての導体を並列接続。または、並列接続した対称性導体と周期性導体の数が6 |
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表 1の回路にある端子Aと端子Bが、図 2(a)にあるFE連成コンポーネントの各端子に相当することもわかります。したがって、FE連成コンポーネントを流れる電流は常に同じですが、コイル導体領域とその各周期性イメージを実際に流れる電流は、選択した接続方式によって異なります。
上記の例では、外部回路からFE連成コンポーネントに供給される電流をIとすると、表 1に従って、コイル導体領域とそのイメージには±I、±I/2、±I/3、または±I/6の電流が流れます。その結果、図 2(d)に表示される磁束密度分布も、採用した接続方式によって異なります。Flux 2Dで計算した磁界強度も1倍、1/2倍、1/3倍、または1/6倍となり、それぞれに応じて電流の強さが変化します。
対称性の組み合わせによって各ドメインのコイルを表現する方法
- (a)対称性を使用しない方法
- (b)水平面に対する法線方向磁界対称条件のみを1つ使用する方法
- (c)垂直面に対する接線方向磁界対称条件のみを1つ使用する方法
- (d)垂直面に対する接線方向磁界対称条件と水平面に対する法線方向磁界対称条件を使用する方法
すでに述べたように、Fluxでは同じコイルをこれらのどの方法でも表現できます。具体的な状況に応じて、これらの方法のいずれかが他よりも簡便であることや妥当であることが考えられます。どの場合でも、必要となるコイルエンティティの数とその内部設定は、プロジェクトでの対称性の組み合わせに応じてわずかに異なることがある点に留意する必要があります。
たとえば、Flux 2Dで図 3の巻線全体を表現するために必要なコイル導体領域の数は、接線方向磁界に対称性(コイル軸での物理条件を表現する対称性)があるかどうかによって次のように変化します:
表 2 に、これらの説明をまとめています。
フルモデル | ハーフモデル - 水平方向に切断 | ハーフモデル - 軸方向に切断 | 4分割モデル | |
---|---|---|---|---|
対称性 | 対称性なし |
法線方向磁界の対称性 |
接線方向磁界の対称性 |
法線方向磁界と接線方向磁界の対称性 |
入力のコイル導体領域 | 巻数N | 巻数N/2 | 巻数N | 巻数N/2 |
出力のコイル導体領域(反対方向) | 巻数N | 巻数N/2 | 不要 | 不要 |