3D周期性ドメインのコイル導体領域への端子の方向付けと割り当て

概要

本章では、Flux 3Dプロジェクトに周期性がある場合に、コイル導体領域(損失のない領域損失と簡潔な形状記述がある領域、または損失と詳しい形状記述がある領域)をボリュームに割り当てる方法と、その電気端子を作成して電流センスを定義するために必要な手順について説明します。

Flux 3Dプロジェクトに周期性が含まれる場合、方向を指定する手順は、(デバイスの一部のみを表現できる)FEMドメインの境界の接線方向磁界を適用する対称条件の存在に影響されるため、ユーザーは特別な注意を払う必要があります。

以下の項では、回転機械の三相巻線の例を使用して説明を行います:

  • 周期性を持つ平面によって切断される場合にコイル導体領域をボリュームに割り当てる方法。
  • プロジェクトにおける接線方向磁界の対称性の存在と周期性のタイプ(偶数 / 周期または奇数 / 非周期性)に応じて、端子を一貫的に割り当てることで、コイル導体領域の電流センスを方向付けする方法。

回転機械の例

ここでは三相巻線による回転機械の例を使用します。プロジェクトには、物理的側面がTangent magnetic fields(接線方向磁界)の対称面がある(またはない)周期性が存在しています。相A、相B、相Cを示す(次の名前の)3つの相と、相ごとに5つの領域があります:
PHASE_A PHASE_B PHASE_C
こうした領域は、周期性を持つ平面、または物理的側面がTangent magnetic fieldsの対称面によって切断できます。
回転機械の三相巻線。3つの相: 相A(オレンジ)、相B(紫)、相C(緑)と、相ごとに1つの領域があります。
デバイスの4分の1は周期性によって記述されます。 デバイスの8分の1は周期性とTangent magnetic fieldsの対称性によって記述されます。






図 1. 回転機械のコイル導体領域の名前
重要: 損失と詳しい形状記述があるコイル導体領域の場合、ユーザーは非接続ボリュームのグループごとに1つの領域を割り当てる必要があります。この場合、領域は以下のように設定する必要があります:
PHASE_A_1 PHASE_B_1 PHASE_C_1
PHASE_A_2 PHASE_B_2 PHASE_C_2
PHASE_A_3 PHASE_B_3 PHASE_C_3
PHASE_A_4 PHASE_B_4 PHASE_C_4
PHASE_A_5 PHASE_B_5 PHASE_C_5


図 2. 回転機械の損失と詳しい形状記述があるコイル導体領域の名前

周期性を持つ平面によって切断される場合にコイル導体領域をボリュームに割り当てる方法

コイル導体領域のボリュームは、コイル全体に対応する必要があります。周期性を持つ平面がこうした領域を切断する場合、ボリュームは連続するボリュームの2つの別々のグループに分割されます。この2つのグループは、次の図に示すように、周期性を持つフェイスによってリンクされます。

本項では、周期性を持つ平面によって切断される場合に、次のいずれかのコマンドによってコイル導体領域をボリュームに割り当てる方法について説明します:

  • Assign regions to volumes (completion mode)
  • Assign regions to volumes (modification mode)
  領域PHASE_Aのパート。1つの連続するボリュームで構成されます。 領域PHASE_Aの別のボリューム。周期性を持つ平面によって切断されるため、連続するボリュームの2つの別々のグループに分割されます。
対称面あり



対称面なし



コイル導体領域のすべてのボリュームを、コマンドAssign regions to volumes (completion mode)またはAssign regions to volumes (modification mode)によって選択する必要があります。

電気端子の定義方法

本項では、Flux 3Dプロジェクトに周期性が存在する場合に、次のいずれかのコマンドによってコイル導体領域の電気端子を定義する方法について説明します。
  • Orient wires of coil conductor region (completion mode)
  • Orient wires of coil conductor region (modify mode)
これらのコマンドを使用してコイル導体領域の方向を指定する一般的な手順は、次のドキュメントページに示されています:Flux 3Dにおけるコイル導体領域の電流の方向
ただし、この一般的な手順は以下のプロジェクトの特性によって少し異なります:
  1. 偶数 / 周期の周期性があるもの
  2. 奇数 / 非周期の周期性があるもの
  3. 偶数 / 周期の周期性とTangent magnetic fieldsの対称性があるもの
  4. 奇数 / 非周期の周期性とTangent magnetic fieldsの対称性があるもの

以降の副項目では、この4つのケースを取り上げます。

周期または非周期の周期性

周期または非周期の周期性がある場合、コイルの断面を表す少なくとも1つの内部フェイス(コイルのボリュームの境界上のフェイスは許可されません)が必要です。こうしたフェイスが存在しない場合は、Modeler Contextを入力するかその他の方法で、いくつか作成する必要があります。これらのフェイスは同じ平面内にある必要も、電流密度に直交する必要もあります。コマンドOrient wires of coil conductor region (completion/modification mode)によってコイルの端子を定義する方法を以下に示します。この方法は、領域が周期性を持つ平面によって切断されているかどうかによって異なります。
  • internal terminalsを選択します。
  • コイルと交差する入力 / 出力端子のフェイスを選択します。
  • 入力端子側と正電流の方向を示すラインを選択します。
相A、B、Cの領域の端子に対して選択するフェイスとラインによって、相AおよびBのコイルと同じ方向、相Cのコイルとは逆方向に電流が曲がり、回転磁界の理論に従って機械の空隙に回転磁束密度が生じるようにする必要があります。
周期の周期性がある領域の入力端子のフェイスとラインの選択

周期の周期性

PHASE_A



周期の周期性

PHASE_B

PHASE_C



非周期の周期性がある領域の入力端子のフェイスとラインの選択

非周期の周期性

PHASE_A



非周期の周期性

PHASE_B

PHASE_C



周期の周期性と“Tangent magnetic fields”の対称性

周期の周期性とTangent magnetic fieldsの対称性がある場合、選択する端子のフェイスは、対称面上に存在するものになります。コマンドOrient wires of coil conductor region (completion/modification mode)によってコイルの端子を定義する方法を以下に示します。この方法は、領域が周期性を持つ平面によって切断されているかどうかによって異なります。
  • external terminalsを選択します。
  • 入力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
  • 出力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
相A、B、Cのコイルの端子に対して選択するフェイスによって、相AおよびBのコイルと同じ方向、相Cのコイルとは逆方向に電流が曲がり、回転磁界の理論に従って機械の空隙に回転磁束密度が生じるようにする必要があります。

領域の端子のフェイスの選択

(下部参照)

PHASE_A



PHASE_B

PHASE_C



非周期の周期性と“Tangent magnetic fields”の対称性

非周期の周期性とTangent magnetic fieldsの対称性がある場合、選択する端子のフェイスは、対称面上に存在するものになります。

コマンドAssign regions to volumes (completion/modification mode)によってコイルの端子を定義する手順を以下に示します。この方法は、領域が周期性を持つ平面によって切断されているかどうかによって異なります。
  • 領域が周期性を持つ平面によって切断されない場合、領域PHASE_Aのパートで:
    • external terminalsを選択します。
    • 入力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
      • 出力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
  • 領域が周期性を持つ平面によって切断され、正電流が対称面上の領域に入る場合、領域PHASE_AおよびPHASE_Bのパートで:
    • external terminalsを選択します。
    • 入力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
    • 出力端子のフェイスは選択しません。
  • 領域が周期性を持つ平面によって切断され、正電流が対称面上の領域から出てくる場合、領域PHASE_Cで:
    • external terminalsを選択します。
    • 入力端子のフェイスは選択しません。
    • 出力端子のフェイスを選択します。これらは対称面上にあるものです。
相A、B、Cのコイルの端子に対して選択するフェイスによって、相AおよびBのコイルと同じ方向、相Cのコイルとは逆方向に電流が曲がり、回転磁界の理論に従って機械の空隙に回転磁束密度が生じるようにする必要があります。

領域の端子のフェイスの選択(下部参照)

PHASE_A



PHASE_B

PHASE_C



物理的対称性がないプロジェクトで電気端子を定義するための代替アプローチ

特定の条件下では、以下の特性を再結合するコイル導体領域がFluxプロジェクトに存在する可能性があります:

  • コイル導体領域が、周期性を持つ平面によって切断されている。
  • コイル導体領域に、内部端子と関連付けられる内部フェイスが存在しない。
  • コイル導体領域が、Tangential magnetic fields(接線方向磁界)、normal electric fields(法線方向磁界)の物理条件を適用する対称面によって切断されていない。

こうしたコイル導体領域の例は、下に示すリング形状の導体によって提供されます(上で検討した回転機械のコイル導体領域PHASE_Cの例でも提供されています)。これらの場合、周期性を持つ平面上に必要な電気端子を作成する方が容易で、その手順は周期性のタイプによって異なります。次の2つのパラグラフでは、これら2つの可能性について説明します。

図 3. 90oの周期性があるFEMドメイン内のリング形状のコイル導体領域の例。

周期の周期性

プロジェクトに周期の周期性があり、対称性は存在せず、周期性を持つ平面によって領域が切断されている場合、選択される端子のフェイスは、周期性を持つ平面上に存在するものになります。

コマンドOrient wires of coil conductor region (completion mode/modify mode)によってコイルの端子を定義する手順を以下に示します。
  • external terminalsを選択します。
  • コイル導体領域内の電流の方向に従って、入力端子のフェイスを選択します。これらのフェイスは周期性を持つ平面上にあります。
  • 出力端子のフェイスを選択します。これらは周期性を持つ別の平面上にあるものです。
周期の周期性があるコイル導体領域の端子を表すフェイスの選択。
設定 フェイスの選択
最初のアプローチ

上の端子を使用

2つ目のアプローチ

下の端子を使用

図 4. 周期の周期性がある輪形上のコイル導体領域の端子を表すフェイスの選択。

非周期の周期性

プロジェクトに非周期の周期性があり、対称性は存在せず、周期性を持つ平面によって領域が切断されている場合も同様に、選択される端子のフェイスは周期性を持つ平面上に存在するものになります。

コマンドOrient wires of coil conductor region (completion mode/modify mode)によってコイルの端子を定義する手順を以下に示します。
  • external terminalsを選択します。
  • コイル導体領域内の電流の方向に従って、入力端子に属すフェイスまたは出力端子に属すフェイスを選択します。どちらの場合も、これらは周期性を持つ2つの平面上にあります。
非周期の周期性があるコイル導体領域の端子を表すフェイスの選択。
設定 フェイスの選択
最初のアプローチ

上の端子を使用

2つ目のアプローチ

下の端子を使用

参考資料