MV-7021:MotionSolve/EDEMの連成シミュレーション

本チュートリアルでは、MotionViewを介したMotionSolveとEDEMの連成のセットアップと実行について学びます。

MotionSolveは、先進のバルク材挙動シミュレーションツールであるAltair EDEMとインターフェースをとる機能を有しています。EDEMは、砂、細礫、錠剤、草、岩石といった粉体の挙動を解析する離散要素法技術(DEM: Discrete Element Method)をベースとしています。 この解析法の詳細については、https://www.altair.com/edem/、およびMotionSolveユーザーズガイド内のMotionSolveでの離散要素法シミュレーショントピックをご参照ください。

本チュートリアルは、AltairMotionSolve/MotionViewとEDEM両方の最低限の知識を前提としています。

必要条件
MotionSolveとEDEMとの間で首尾よく連成を行うには、以下の条件が必要です:
ソフトウェア バージョン
HyperWorks 剛体連成は、2019.1以降

弾性体連成は2021以降

EDEM 剛体連成は、2019.1以降

弾性体連成は2020.3.1以降

PM Flex Tire PM Flex Tire連成は2021.1以降

PM Flex Tireは、Altair Partner Allianceを通じてご利用可能です。

注: EDEMはHyperWorksと同じ場所にインストールすることをお勧めします(デフォルト:C:/Program Files/Altair/2022)。

EDEMが別の場所にインストールされている場合、ジオメトリ転送や連成シミュレーションなどの機能を有効に使うために、 ~install_location/EDEM/bin~install_location/EDEM/libを環境変数PATHに追加してください。

ここで説明する手順とオプションは、HyperWorksとEDEM バージョン 2022 リリースに対応するものです。

問題の定義
この問題は、中心軸回りにのみ回転が可能なホイールから成ります。ホイールのブレードに多数の粒子が衝突し、それを回転させています。ホイールはMotionSolveでモデル化され、粒子およびホイールと粒子との相互作用はEDEMでモデル化されます。最初に、剛体ホイールと粒子の相互作用を設定します。その後、ホイールを弾性体に置き換え、弾性体と粒子の相互作用を確認します。
ホイールと粒子のデータは以下の一覧に示すとおりです:
プロパティ Units
粒子(バルク材)
半径 [m] 0.10
ポアソン比 [-] 0.25
密度 [kg/m3] 2500
せん断弾性係数 [Pa] 108
ホイール(装置材料)
ポアソン比 [-] 0.30
密度 [kg/m3] 7860
せん断弾性係数 [Pa] 80.77.109

Motionモデルのセットアップ

  1. mv_hv_hg\mbd_modeling\motionsolve\cosimulation\edemフォルダーにあるwheel.stepファイルを自身の<作業ディレクトリ>にコピーします。
  2. MotionViewの新しいセッションを開始します。
  3. StandardツールバーでImport Geometry をクリックします。
  4. 自分の<作業ディレクトリ>からwheel.stepファイルを探して選択し、Openをクリックします。
    ホイール形状がMotionViewにインポートされます。


    図 1. ホイール形状のインポート後のMotionViewでのモデル
  5. ConstraintツールバーのJointアイコンを右クリックします。
    Add Joint or JointPairダイアログが表示されます。
  6. ドロップダウンリストから、Revolute Jointを選択します。
  7. OKをクリックします。
  8. 表示されたJointパネルで、Body 1Body 2コレクターとして、それぞれ、wheelとにGround Bodyを選択します。
  9. OriginのPointコレクターをダブルクリックして、Bodies > Wheel > Inertia Propsに進み、wheel-Inertia Props-cgを選択します。


    図 2. Pointダイアログを選択し、ホイールボディのCGを選択
  10. OKをクリックします。
  11. Alignment AxisタイプをVectorに変更し、Global Zを選択します。
  12. Project Browserで、Solver Gravityデータセットを選択し、Y componentを-9810に設定します。Z componentを0.0に設定します。


    図 3. データセット - Solver Gravity
  13. でモデルをwheel.mdlとして保存します。

EDEMモデルのセットアップ

次に、EDEMモデルをセットアップします。この例題におけるEDEMのモデリングは、以下の手順となります。以下でそれぞれ詳しく説明します:
  • バルク材料の定義
  • 粒子の形状の定義
  • 装置材料の定義
  • 装置形状の定義
  • 仮想形状 / 粒子ファクトリーの定義
  • 環境パラメータの定義
  • シミュレーションオプションの定義
  1. EDEMを開きます。
  2. Creatorツリーで、Bulk Materialを右クリックし、Add Bulk Materialを選択します。
    'BulkMaterial 1'という名称の新規材料が生成されます。材料プロパティは変更せずにおきます。
  3. Interaction+をクリックします。
  4. ポップアップウィンドウでBulkMaterial 1を選択します。
  5. Creatorツリーで、BulkMaterial 1(追加されたばかり)を右クリックし、Add Shape from Library > Single Sphereを選択します。
  6. Physical Radius (m)を0.1に設定します。


    図 4. 粒子のSphere Library
    1. オプション: 粒子サイズの変更した場合、Viewパネルのを選択して粒子のビューをリセットすることが可能です。
  7. CreatorツリーでNew Particle 1の下のPropertiesに移動して、Auto Calculationを選択します。
    これで、粒子の形状が定義されます。次に、ホイールの材料プロパティを表す装置材料をEDEMで定義します。
  8. Creatorツリーで、Equipment Materialを右クリックし、Add Equipment Materialを選択します。
    'EquipmentMaterial 1'という名称の新規材料が生成されます。
  9. Solids density()7860に、Shear Modulus(G)80.77e9に変更します。
  10. Interactionの下の+をクリックします。
  11. ポップアップウィンドウで、BulkMaterial 1に対してOKをクリックします。
  12. 上部のツールバーで、Start Coupling Serverアイコンをクリックして、連成サーバーをオンにします。


    図 5. 連成サーバーをオンに
    この設定により、MotionViewMotionSolveの連成が可能になります。
  13. MotionViewに戻って、Bulk Material InterfaceツールバーのEDEM Subsystemアイコンをクリックします。


    図 6. EDEM Subsystemツールバー
  14. 表示されたパネルの右側で、EDEMサーバーを定義します。
    1. EDEMサーバーに対して、LocalまたはRemoteを選択します。EDEMとMotionView/MotionSolveが同じマシン上に存在する場合は、Localを選択します。EDEMが別のマシン上に存在する場合は、Remoteを選択します。
    2. Remoteを選択した場合は、Bulk Material Interactionトピックで定義されるリモート連成シミュレーションの設定を定義する必要があります。
    3. Graphicsコレクターをクリックし、ホイールグラフィックスを選択します。
  15. Transfer and Create Systemをクリックします。正常に設定されると、メッセージログに確認メッセージが表示されます。メッセージログを閉じます。
    'DEM 0'というシステムがMotionViewモデルに追加されます。このシステムには、MotionSolveがEDEMと連成するために必要なエンティティがすべて含まれています。
  16. でモデルを保存します。
  17. EDEMグラフィカルユーザーインターフェースに切り替えます。
  18. インポートプロセスが完了したら、ツールバーのViewセクション内でドロップダウンメニューをクリックし、-Zビューを選択してズームインします。


    図 7. ビュー選択
    グラフィック画面は下に示すように見えるはずです:


    図 8. EDEMでのホイール形状

    Creatorツリー内のGeometriesの下にあるコンポーネントを注視します。ホイールには、MotionViewでのボディ名と同様に‘wheel’という名前が付けられます。

    次に、粒子ファクトリーの形状をセットアップします。
  19. Creatorツリーで、Geometriesを右クリックして、Add Geometryを選択してから、Polygonを選択します。
    'New Section 1'という名称の形状が追加されました。
  20. TypeVirtualに変更します。


    図 9. 粒子ファクトリーの多角形形状
  21. 'New Section 1'の下でTransformを選択し、以下のプロパティを設定します:
      Position Rotation
    X 1.6 1.5708
    Y 1.7 0
    Z 0 0
  22. 'New Section 1'の下でPolygonを選択し、以下のプロパティを設定します。
      Length
    Edge A 0.2
    Edge B 0.2


    図 10. 多角形のプロパティ
  23. New Section 1を右クリックし、Add Factoryを選択します。
  24. Target number (per second)5に設定します。
  25. Positionbccを設定します。


    図 11. ファクトリーの追加
  26. ギアのアイコンをクリックし、Position - Lattice Parametersダイアログを表示させます。
    1. Start Pointで、XYをそれぞれ1.61.7に設定します。
    2. 残りの欄はデフォルト値に設定されたままにします。


    図 12. Position - Lattice Parameters
  27. Creatorツリーで、Environmentを選択して、Gravity – Y-9.81に設定します。


    図 13. 重力の設定
  28. Fileメニューまたは最上部のツールバーのSaveアイコンを使用して、モデルをwheel.demとして保存します。

EDEMでのシミュレーションのセットアップ

  1. Simulatorに切り替えます。


    図 14. ツールバー上のSimulatorアイコン
  2. Estimate Cell Sizeをクリックし、与えられたセルサイズを受け入れます。


    図 15. セルサイズの推定
  3. Coupling Serverがオンになっていることを確認します。
    ヒント: アイコン上でマウスを動かすと、“Listening on port 32969”に似たツールチップテキストが表示されるはずです。
これで、EDEMモデルをMotionSolveでシミュレートする準備が整いました。

シミュレーションの実行

  1. Runパネルに移動します。
  2. Simulation Settingsをクリックし、Transientタブに移動します。
    1. Maximum step size0.001に設定します。
    2. Closeます。
  3. End time10に変更します。
  4. Runボタンをクリックして、シミュレーションを開始します。
    MotionSolveが起動され、EDEM側でもシミュレーションが始まります。シミュレーションプロセスは、EDEMでも見ることができます。


    図 16. シミュレーション中のEDEMグラフィックスクリーン
  5. EDEMで、シミュレーションの進行に合わせてグラフィックス表示を更新するには、最上部のツールバーのAuto updateをクリックします。


    図 17. Auto update
  6. シミュレーションが完了したら、MotionViewのメッセージログとMotionSolveソルバーウィンドウを閉じます。

ポスト処理

EDEMで相互作用するコンポーネントについて、EDEMでAnalystページからアニメーション表示することができます。

  1. ツールバーのAnalystアイコンをクリックします。


    図 18. ツールバー上のAnalystアイコン
  2. 下部のツールバーでアニメーションをリセットします。


    図 19. EDEMのAnimationバー
  3. Animate Forwardsアイコンをクリックします。
  4. EDEM粒子の結果をHyperView H3Dに変換します。
    1. MotionViewで、EDEMメニューから、Generate H3D from EDEM resultsを選択します。
    2. 入力としてEDEMで保存されたwheel.demファイルを指定します。
    3. OKをクリックします。
      Windowsでは、コマンドウィンドウが開いて、粒子の情報のH3Dへの変換に関する進捗状況が表示されます。ファイルwheel_edem.h3dが生成されます。
  5. HyperViewでアニメーションを表示します。
    1. MotionView Runパネルで、Animateをクリックして、MotionSolve H3D結果をHyperViewウィンドウに読み込みます。
    2. HyperViewで、Load ModelパネルのOverlayチェックボックスをアクティブにします。
    3. Open Modelファイルブラウザを使用して、作業ディレクトリからwheel_edem.h3dファイルを探して選択します。
    4. Applyをクリックします(ポップアップ警告メッセージに対してYesと答えます)。
    5. Start/Pause Animationボタンを使用してアニメーション表示します。

弾性体の連成

弾性体を使用した連成シミュレーションの設定と実行は、前のステップで剛体を使用して行ったのと同じ手順で行います。
注: 弾性体の相互作用を直接設定します。剛体の相互作用を最初に行う必要はありません。

対応するホイールの弾性体H3Dファイルが用意されています。

  1. mv_hv_hg\mbd_modeling\motionsolve\cosimulation\edemフォルダーに配置されたファイルflex_wheel_flex_blades.h3dを自身の<作業ディレクトリ>にコピーします。
  2. 弾性体には、以下の特徴があります:
    • ローターの要素には、材料特性としてSteelが割り当てられています。
    • ブレードの要素には、Steelの10%の弾性係数と密度の材料特性を使用しています。
    • 中心の節点は剛体(RBE2要素)によってローターの内面の節点と接続されています。
    • 適切なモード表現のために、中心節点と各ブレード上の節点(任意)がインターフェース節点として選択されています。


    図 20.
  3. MotionViewウィンドウに戻ります。
  4. DEMシステム(DEM_0)を選択し、右クリックのコンテキストメニューDeactivate > Selected onlyを使用して無効化します。
  5. モデルブラウザまたはグラフィックス領域からbody (wheel)を選択します。
  6. Bodyパネルで、Flex Body (CMS)をアクティブにします。
  7. Graphical sourceとして、弾性体H3Dファイルflex_wheel_flex_blades.h3dを選択します。
  8. 確認のダイアログが表示され、Functional sourceと同じファイルの使用を確定する場合は、Yesをクリックします。
  9. Nodes…をクリックします。
  10. Joint Marker行のFind AllまたはFindをクリックすることによって、弾性体の中心ジョイント位置に対応する節点を探します。
  11. ダイアログを閉じます。
  12. EDEM GUIで、Creatorをクリックして、creatorのコンテキストに戻ります。
  13. 時間を0秒に戻します。
  14. Geometriesで、wheel geometryを選択して、それを削除します。
  15. EDEMファイルをwheel_flex.demとして保存します。
  16. MotionViewで、EDEM Systemパネルを開きます。
  17. コレクターをBodyに変更します。wheel[Flex body]を選択します。
  18. Transfer and Create Systemをクリックします。
    弾性体をEDEMに転送する必要があります。新しいDEMシステムもMotionViewで作成しす。
  19. Runパネルに移動します。XMLファイル名をwheel_flex.xmlに変更します。
  20. Runをクリックします。
  21. 実行が完了したら、ポスト処理のステップ4とステップ5の手順に従って結果を表示します。