非線形陰解法解析の注記事項
非線形陰解法解析において、剛性マトリックスの作成と内力の計算(陽解法と同じ)の間で要素の定式が異なる時、収束性の問題がしばしば見られます。これは特に摂動アワグラスでの次数低減積分要素の場合に起こります。これに対し、シェルに対するQEPHとQBAT、またはソリッドに対するHA8、HC8、S8、HEPHなどの同様の定式化の要素では収束解を得ることができます。いずれにしても、同じ定式化が望まれます。
前に述べたように、Radiossでは、全ての利用可能なRadioss材料での剛性マトリックスの作成に、材料パラメータの弾性部分のみが用いられます。弾性剛性性マトリックスを用いるもう1つの利点は、(弾塑性の様な)特定の材料で生ずる収束性の問題を避けることができる点です。いくつかの例題のテストで、ラインサーチと共に用いた弾性剛性マトリックスは、非線形材料計算で妥当な収束性を示しています。もちろん、Newton-Raphson 法(接線剛性を用いた方法)も今後追加される予定です。
材料の弾性部分を用いる唯一の例外はスプリング要素の場合で、これらは材料則に関係していません。陰解法解析のばね特性で非線形関数が定義されているとき、接線剛性要素マトリックスが計算されます。しかしながら、非線形解析での収束性の問題を避けるため、弾塑性スプリング(H>0)ではなお弾性剛性マトリックスが用いられます。ばね要素のある線形解析で、非線形剛性関数が定義されている場合、この関数の(0, 0を除いた)最初の点のみが考慮されて線形剛性が計算されます。
収束性の問題は、非線形解析では頻繁に起こり、これには制御パラメータが重要な役割を演じます。これらのパラメータは問題に依存し、入力値が計算が収束するか失敗するかを決める可能性があります。品質とパフォーマンスのバランスが取れる値が、最良とされます。
最初に、非線形ソルバーの制御パラメータを入力する必要があります。
/IMPL/NONLIN/n
L_A Itol Tol
- 修正 Newton 法(n=1)
- 準 - Newton(BFGS)法(n=2)
- L_A
- このパラメータは剛性マトリックスを再構成する最大反復回数を設定します。反復ソルバーではこの値は3が、直接ソルバーでは6が推奨されます。
- Itol
- 反復計算終了の基準
- 1
- エネルギーの相対残差
- 2
- 力の相対残差
- Tol
- 相対残差の値が(残差の値対参照値の値で)等しいか、許容値よりも小さくなった時、反復が収束したと判断される許容値。
参照値は0回目の反復で計算されます (出力メッセージ)。
Radiossで、更新された剛性は(非線形材料の弾性パラメータを用いるので)主に形状の意味である点は注意してください。このため、L_Aに対する小さな値は変位増分のレベルによっては速い収束性をもたらしますが、剛性マトリックスの再構成により多くの計算コストを必要とし、特に直接ソルバーを用いた場合はこれに当てはまります。
通常、力の終了基準(Itol =2)がバランスの点で良い結果を与え、これがデフォルトの基準となっています。エネルギーの基準は、より容易に収束する可能性があり、単調増加の荷重の下での弾塑性材料のシミュレーションにより向いています。なぜならこの場合、(これは塑性降伏応力によりもたらされる) エネルギー増加が力の増加よりもより強いからです。その収束性は参照値の同じ変化に対してより容易になります (高い参照値ではより収束は容易になります)。
2番目に、時間ステップコントロールはキーワード /IMPL/DT/nと/IMPL/DTINIが用いられたときに選択する必要があります。時間ステップコントロールの手法が定義されていない場合には、非線形シミュレーションの間、一定の時間ステップが用いられます(推奨しません)。
時間ステップをより効率的に取り扱うために、2つの自動時間ステップコントロール法が利用可能です (n=1,または2)。最初の方法はラインサーチ法で、収束の反復回数によってのみ働きます。2番目の方法は孤長法の様な変位のコントロール法で、一般的な使用に対して推奨されます。
自動時間ステップコントロールがそれぞれのステップ(サイクル)で用いられた時、Radiossソルバーは入力のスケールファクターで自動的にその時間ステップを調節します。反復が発散した場合、Radiossは時間ステップをスケールダウンして反復計算をやり直します。
デフォルトのスケーリングファクターは0.67(減少の係数)と 1.1(最大増加、即ち、時間ステップが増加される最大の係数)です。
1により近い最大増加ファクター(例えば1.01など)を使用することにより、座屈などの難しい解析に対して収束がより容易になります。
キーワード/IMPL/DTINIを用いて、初期時間ステップを定義する必要もあります。これでシミュレーションに必要なおおよそのステップ数を与えます。
- 幾何学的または接触の非線形性のあるモデルは小さなステップでより容易に収束します。
- ある材料挙動、特に経路依存のある場合、正確な積分になるためには小さなステップを必要とします。
- DT_min
- 発散が起きた時に計算を停止。
- DT_max
- 時間ステップの上限を設定。計算はこの値に達しても停止することはないですが、これは高い非線形性のあるシミュレーションの収束または単に出力の必要性のために有用です。
Radiossのリスタートは陰解法解析でも利用化できます。この場合、収束のストラテジーとして異なるパラメータを定義できます。
接触のある非線形解析
接触のある非線形解析では力の相対残差(デフォルト)が推奨されます。
陽解法と同様に、より大きなギャップがより良い収束性をもたらします。これは特にインターフェースタイプ 11に対して当てはまり、時間ステップ減少による計算停止を避けるために十分に大きなギャップの値を設定する必要があります。小さな初期ギャップを有するインターフェースタイプ 7を用いた接触を伴うシミュレーション(例:重力を受けるスタンピングの初期状態、接触により拘束されるパーツなど)では、Gapminを初期ギャップよりも若干大きく取ることでより良い収束性が得られます。初期貫通はただちにリカバーします。
接触が摩擦と共に定義されている場合、増分剛性定式化(Iform =2)が推奨されます。
特に剛体パートを含み、可変形のパートが強制変位で接触するシミュレーションでは、接触のある解析でユーザーが適切な参照値を選択することが難しいため、Radiossが最初の反復で参照値を修正する例外があります。参照残差が大きくなりすぎる場合(>>1)、Radiossはより小さな時間ステップと高い参照値で反復をリスタートさせます。修正される参照値は時として予想外に高くなりすぎ、これにより悪い結果での収束になる可能性があるため、ユーザーはそれぞれのステップにおいて反復0で出力することでこの値を試す必要があります。これは接触定義で高い初期貫通が存在する場合にもあてはまります。
インターフェースタイプ 7が用いられた時、接触剛性が収束で重要な役割を果たし、このため、Istf = 4(接触のために最小のメインとセカンダリ剛性を選択)が推奨されます。これは、前の段落で述べた理由と、ペナルティ接触力が影響を受ける変形パートの内力とつり合うことに起因します。また、有効な剛性に近い剛性は、より高い剛性と比較して収束が容易になる傾向があることを意味します。場合によっては、スケーリングファクターに基づいた剛性の減少(例: Stfac 0.01など)またはインパクタの厚さが縮小される(剛体など)剛性を使用すると、力の不均衡を低減し、収束が向上する場合があります。これは特に、実効剛性が膜剛性よりはるかに小さい構造や、曲げられているシェル構造などで顕著です。ただし、値が小さ過ぎても発散につながる可能性があるので注意してください。