プレロード

要素の1つのセクションをプレロードする機能は、/PRELOADオプションを用いて使用できます。この機能は、アセンブリ内で使用されているボルトのプリテンション力をモデル化するために用いることができます。

ボルトテンショニング

ボルトテンショニング問題の物理的な詳細

典型的なシーケンス


図 1. プリテンショニングされたアセンブリ – プリテンショニング荷重の適用(Step 1)

Step 1では、構造物の組み立ての最初にそれぞれのボルトがナットで締めつけられますが、これは通常、規定のトルクに従って行われます(これは、ねじ山のピッチによって、規定の引張り力に変換されます)。

結果として、ボルトのある作業対象パートは距離 Δ L だけ短くなります。この距離は作用した力と、プリテンションを受けるボルトとアセンブリのコンプライアンスに依存します。

FEA解析において、 以下を理解することが重要です:
  • プリテンショニングは、使用されている構造からボルトの一定の長さを取り除くことで、ボルトの締め付け部分を短くします(現実的には、このセグメントはナットを介してスライドしますが、総合的な効果はボルトの作用長さの短縮です)。ボルトは伸長するため、より小さくなったボルト材料の有効長はボルトのマウントからナットまでの距離に及びます。
  • 適用される力 f のために、各ボルトの短縮 Δ L の計算には、プリテンショニングフォースのかかったモデル全体のFEAソリューションが必要となります。これは、与えられた荷重に対するナットの移動量はボルトのコンプライアンス、ボルトのあるアセンブリのコンプライアンスに依存し、プリテンションを受ける複数のボルトの間の相互作用にも影響を受けるためです。

Step 1の最後に、各ボルトの短縮量 Δ L が、プリテンショニング過程中に達した位置に単にナットを残すことで定められ、“ロック”されます。

Step 2では、すべてのボルトの短縮量 Δ L で“ロック”されたまま、他の荷重がアセンブリにかけられます(図 2)。この段階では、ボルト内の応力とひずみは通常変化し、取り除かれた材料の長さ Δ L は、各ボルト共一定のままとなります。


図 2. プリテンショニングされたアセンブリ – “ロック”されたボルトの短縮と荷重の適用(Step 2)

初期荷重の定義

ボルト内に初期荷重を生成するにはまず断面オプション/SECTを用いて、初期荷重が適用される要素のセットを定義します。

断面IDがそこで/PRELOAD入力内で参照されます。初期荷重を生成するために、断面内で参照される要素のセットに適用される初期引張応力が、定義された/SECTの局所Z軸でボルトの長さを短くします。


図 3. 初期荷重用の要素のグループを定義する断面

初期荷重の量は、/PRELOADItyp入力オプションで、力(デフォルト)または応力として入力できます。力が入力されると、/SECTの初期断面面積が、初期荷重を生じさせるために適用される応力の計算に使用されます。定義された/PRELOAD Tstart時間において、断面内で定義された要素の材料剛性は減じられ、引張応力が定義された断面の要素に適用されます。これにより要素の長さが短くなり、その結果、必要とされる初期荷重になります。材料剛性が減じられるため、要素内に生成されるひずみの量も少なくなります。

TstartTstopの間のプレロード時間は、材料剛性が減じられた剛性から元の材料剛性に戻る際です。図 4に示すように、一定の低減された剛性があり、続いて元の材料剛性までの線形増加があり、それに一定剛性が続きます。


図 4. 材料剛性の増大

初期荷重は、/SENSORの使用によってもアクティブ化され、その場合、TstartおよびTstop時間はセンサーのアクティブ化時間に基づいてシフトされます。

/TH/SECTIOは、プリテンション断面力を出力するために作成される必要があります。ボルト付けされるアセンブリ、ボルトパート群の間の接触ギャップやとボルト材料によっては、ボルトプリテンション入力は必ずしも出力の断面力と完全に一致するわけではありません。


図 5. 断面出力とボルト応力