多重レベル高速多重極法(MLFMM)

マルチレベル高速多重極法MLFMM)はモーメント法MoM)の背景技術の代替定式化であり、波長の観点からMoMよりはるかに大きい構造に適用して、電気的にサイズが大きい構造を全波形電流に基づいて解析できるようにします。



MLFMMは、これまではMoMで扱われてきた大きいモデルに、メッシュを変更することなく適用できます。

MoMMLFMMの共通点は、三角形どうしのすべての相互作用を基底関数でモデリングできることです。MLFMMMoMと異なる点は、基底関数をグループ化したうえで、個々の基底関数間の相互作用ではなく、それらグループ間の相互作用を計算することにあります。これにより、計算を必要とする相互作用が少なくなります。MLFMMでは、モーメント法の計算で使用される行列を実際に計算するわけではないので、MLFMMの直接解は得られません。MLFMMの解析段階では、高速な行列ベクトル積を利用する反復解析が使用されます。

Fekoでは、計算空間全体を最上位レベルで単一のボックスに囲い込むボックス化アルゴリズムを採用しています。このボックスを3次元で最大8つの子立方体に分割し、各子立方体の辺の長さが最下位レベルで1/4波長程度になるまで、このプロセスを繰り返します。形状が存在する立方体のみが各レベルで保存されて、効率的なツリー状のデータ構造が形成されます。


Figure 1. 第3レベルでのMLFMMボックス。
MoMのフレームワークでは、さまざまなレベルの集約、変換、および分解のプロセスを通じてMLFMMが実装されます。


Figure 2. MLFMMによる船舶の解析(左側)と、民間航空機のアンテナ配置のモデリング(右側)。