MV-2000:弾性体について

本チュートリアルでは、弾性体の基礎を学習します。

なぜ弾性体なのか?

  • 従来のマルチボディダイナミクス(MBD)解析では、フォースおよび / またはトルクの適用下で剛体システムのシミュレーションが行われます。
  • 実際には、任意の連続体がフォースの適用下で変形します。剛体シミュレーションはそのような変形を捕捉しないため、不正確な結果を導く可能性があります。MBDシミュレーションに弾性体を含めることにより、弾性変形が考慮されます。
MotionViewは、MBDモデルに弾性体を含めるために必要なモデリングツールを提供しています。弾性MBDシミュレーションでは、下記のことが可能です:
  • シミュレーションでのボディ変形効果を捕捉
  • 荷重の予測においてより高い精度を得る
  • 弾性体内の応力評価
  • 疲労解析の実行

ただし、弾性体はシステム内に追加の式のセットを導入するため、剛体システムと比べると、計算コストは高くなります。

弾性体とは?

  • 有限要素モデルは自由度数が非常に多い。これらをMBDソルバーで扱うのは困難。
  • 弾性体は、有限要素モデルのモード表現。有限要素モデルはごく少数のモード自由度に縮退されている。
  • 物理的座標値における節点変位は、少数のモード座標の重ね合わせとして表現される。 (1)
    U = Φ Q

    ここで:

    U は節点変位ベクトル

    Φ はモードマトリックス

    Q はMBD解析によって決定されるべきモード座標

  • MotionViewComponent Mode Synthesis(CMS: 部分モード合成)のプロセスを使って、有限要素モデルを直交モード形状に縮退。
    OptiStructでは、下記の2つのタイプのCMS法がサポートされています:
    • Craig-Bampton法
    • Craig-Chang法
注: 弾性体とCMS法の詳細については、OptiStruct User's GuideオンラインヘルプのComponent Mode Synthesis(部分モード合成)の項をご参照ください。

OptiStructを使った弾性体の作成

OptiStructを使って弾性体を作成するには、下記の2つの方法があります:
  1. MotionViewのFlexPrepユーティリティの使用
  2. 入力デックの手動による編集
MotionViewインターフェース内のFlexPrepユーティリティの使用
FlexPrepは、有限要素メッシュから弾性体を生成することが可能なMotionViewユーティリティです。また、様々な弾性体フォーマット間の変換も行えます。これらの変換については、後続の"FlexPrepを使った弾性体の変換"セクションで説明されています。


図 1.
FlexPrepのGUIを使用すると、下記のことが行えます:
  • 任意のOptiStructまたはNastranバルクデータから弾性体を生成
  • RBE2スパイダーの作成
  • 応力およびひずみのリクエスト
  • 弾性体のファイルサイズを縮小するために使用可能なOptiStruct準備ファイルの作成
入力デックの手動による編集
ユーザーはOptiStruct入力デックに手動で任意のカードを挿入し、CMSルーチンを実行することができます。これらのカードは、弾性体のサイズ縮小を可能とします。これは、プリ / ポスト処理のスピードアップとプロセスの全体的な効率の向上に役立ちます。
注: ユーザーは、FlexPrepによって生成された準備ファイルを手動で編集し、弾性体ボディH3Dのサイズを縮小することができます。
入力デックを修正することにより、下記のことが可能となります:
  • 弾性体の表示に表面要素のみをリクエスト
  • 選択された要素のセットについて、応力およびひずみ情報をリクエスト
  • 結合点に自由度を定義
弾性体H3Dファイルには、下記のデータが含まれます:
  1. 節点位置
  2. 要素の結合情報
  3. 全モードの固有値
  4. 慣性インバリアント(オプション)
  5. 節点質量
  6. 節点慣性(オプション)
  7. 並進変位モード形状
  8. 回転変位モード形状
  9. 結合点ID(オプション)
  10. 要素応力 / ひずみテンソル(オプション)
  11. 全体(剛体)慣性プロパティ(オプション)
Flexprep.exeは常にポイント1、2、3、4、5、6、7、8、9、11を生成し、それらをH3Dファイルに書き出します。ポイント4、6、9、11は必ずしも必要ではありません。

Flexprepを使った弾性体の変換

FlexPrepでは、弾性体をあるフォーマットから別のフォーマットに変換することができます。FlexPrepの使用により、下記のことが可能になります:
  1. 既存の弾性体H3Dを平面について鏡面コピー
  2. MNFファイルのAltair H3Dファイルへの変換
  3. H3DファイルのMTXファイルへの変換
  4. Altair H3DファイルのMNFファイルへの変換
  5. PCHファイルのAltair H3Dファイルへの変換
  6. Altair H3DファイルのDADS DFDファイルへの変換
弾性体H3Dが一旦作成されると、MBDモデル内で使用し、モデルをMotionSolveまたはADAMSにサブミットすることができます。これについては、後続のチュートリアルでカバーされます。

応力リカバリーと疲労計算

応力リカバリーと疲労計算は、MBD解析中に2つのステージで行われます:
  • プリプロセッシングステージにおける応力リカバリーでは、直交化された変位モードを使って要素応力が得られます。各変位モードは、基本応力テンソルを表わす特定の応力モード数と関連付けられます。この特定の数は、弾性体に使用される要素のタイプ、例えば、1次元要素、2次元要素、3次元要素などによって異なります。これらの応力モードは、H3Dファイルに保存されます。
  • ポストプロセッシングステージでは、実際の応力リカバリーおよび疲労指標計算が実行されます。シミュレーションから得られたモード寄与係数は、応力モードを線形的に重ね合わせて各要素について応力テンソルを見つけ出すために使用されます。この応力テンソルは、応力の他の成分、Principal、Shearまたはvon Misesの計算に使用されます。