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複合材破壊モデル

Radiossでは、次の複合材破壊モデルを使用して複合材の材料破壊を表現できます。
  • /FAIL/HASHIN
  • /FAIL/PUCK
  • /FAIL/LAD_DAMA
  • /FAIL/CHANG

複合材材料は、2種類の材料からなります(マトリックスと補強繊維)。各材料の破壊挙動は異なります。Radiossでは、同一複合材要素内でマトリックスと繊維に異なる破壊モデルを使用できます(TYPE11、TYPE16、TYPE17、TYPE51、PCOMPP、またはTYPE22というプロパティを持つ要素の場合)。たとえば、繊維破壊に/FAIL/HASHIN、マトリックス破壊に/FAIL/PUCK、層またはプライ間の剥離に/FAIL/LAD_DAMAを使用できます(複合材に複数の層またはプライが定義されている場合)。

上記の一般的な複合材破壊モデルに加えて、/FAIL/FLD(ガラスのような、層(プライ)内の等方性脆性複合材材料に使用されます)、/FAIL/ENERGY/FAIL/TBUTCHER、および/FAIL/TENSSTRAINを使用して、複合材の層(プライ)の破壊を表現することもできます。

/FAIL/HASHIN

HASHIN破壊では、次の2つの主要破壊モードが考慮されます。
  • 繊維モード: 引張時の繊維破断または圧縮時の繊維座屈が原因で、複合材が破壊します。したがって、/FAIL/HASHINでは、引張 / せん断繊維モード、圧縮繊維モード、およびクラッシュモードは繊維モードです。方向1が繊維方向である場合、平面23が繊維モードの主な破壊平面となります。
  • マトリックスモード: 繊維からのマトリックス亀裂が原因で、複合材が破壊します。破壊マトリックスモード(またはせん断破壊マトリックスモード)と剥離モードはどちらもマトリックスモードです。マトリックスモードの破壊平面は繊維と平行であり、応力σ11はこのモードでは考慮されません。


図 1. 一方向薄層モデルの繊維モードとマトリックスモード
一方向薄層モデル1内の繊維は、1方向のみに沿っており、繊維薄層モデル内の繊維は2方向に沿っています。
  一方向薄層モデル 繊維薄層モデル
損傷基準 D=1の場合は、破壊。

0D<1Dの場合は、破壊なし。

ここで、 D=Max(F1,F2,F3,F4)

D=1の場合は、破壊。

0D<1Dの場合は、破壊なし。

ここで、 D=Max(F1,F2,F3,F4)

引張 / せん断繊維モード F1=(σ11σt1)2+(σ212+σ213σf122) F1=(σ11σt1)2+(σ212+σ213σfa2)

F2=(σ22σt2)2+(σ212+σ223σfb2)

ここで、 σfa=σf12,σfb=σf12σt2σt1

圧縮繊維モード F2=(σaσc1)2

ここで、 σa=σ11+σ22+σ332

F3=(σaσc1)2

ここで、 σa=σ11+σ33

F4=(σbσc2)2

ここで、 σb=σ22+σ33

クラッシュモード F3=(pσc)2

ここで、 p=σ11+σ22+σ333

F5=(pσc)2

ここで、 p=σ11+σ22+σ333

せん断破壊マトリックスモード   F6=(σ12σm12)2
破壊マトリックスモード F4=(σ22σt2)2+(σ23S23)2+(σ12S12)2

ここで、

S12=σm12+σ22tanϕS23=σm23+σ22tanϕ

 
剥離モード F5=S2del[(σ33σt3)2+(σ23˜S23)2+(σ13S13)2]

ここで、

S13=σm13+σ33tanϕ˜S23=σm23+σ33tanϕ

F7=S2del[(σ33σt3)2+(σ23S23)2+(σ13S13)2]

ここで、

S13=σm13+σ33tanϕ˜S23=σm23+σ33tanϕ

注: a={aifa>00ifa<0

/FAIL/HASHINでは、材料強度σt1,σt2,σt3,σc1,σc2は、複合材の引張 / 圧縮試験から得られます。

破砕強度σcと繊維せん断強度σf12は、準-静的パンチせん断試験(QS-PST)から得ることができます。6 サポートスパン径対パンチ径比率(SPR)からの破砕強度σcは0であり、SPRからの繊維せん断強度σf12は1.1です。

ϕ はクーロン摩擦角です。複合材が(引張ではなく)圧縮も受けている場合は、複合材のせん断強度が高まることが確認されています。その原因は、マトリックスと繊維間の摩擦です。

せん断強度は、圧縮応力に比例すると見なされ、次のように計算されます:(1) S12=σm12+σ22tanϕ


図 2.
摩擦角ϕは、軸に対してさまざまな角度θ(例: 30,45,60など)で圧縮試験を行うことでフィッティングできます。


図 3.

σm12,σm13,σm23 は、3方向のマトリックスせん断試験から得ることができます。

Sdel は、剥離基準のスケールファクターです。これは、実験で剥離破壊を損傷領域と相関付けるための複合材剥離実験データによってフィッティングできます。

/FAIL/PUCK

Puck破壊では、次の2タイプの破壊が考慮されます。
  • 繊維破壊: 繊維が引張強度または圧縮強度の限界に達することにより、複合材が破壊します。
  • 繊維間破壊(IFF): 繊維マトリックスの亀裂が原因で、複合材が破壊します。
損傷基準 D=1の場合は、破壊。

0D<1の場合は、破壊なし。

ここで、 D=Max(ef(tensile),ef(compression),ef(ModeA),ef(ModeB),ef(ModeC))

繊維部破壊 引張繊維破壊モード: σ11>0

ef(tensile)=σ11σt1

圧縮繊維破壊モード: σ11<0

ef(compression)=|σ11|σc1

繊維間破壊(IFF) 2 モードA(σ22>0の場合):

fail_puck_modeA
図 4.

ef(ModeA)=1ˉσ12[(ˉσ12σt2p+12)2σ222+σ122+p+12σ22]

モードC(σ22<0の場合):

fail_puck_modeC
図 5.

ef(ModeC)=[(σ122(1+p22)ˉσ12)2+(σ22σc2)2](σc2σ22)

モードB:

fail_puck_modeB
図 6.

ef(ModeB)=1ˉσ12(σ212+(p12σ22)2+p12σ22)

繊維間破壊では、モードAは横繊維方向(繊維方向に対して直角)の引張がかかった状態の破壊を示し、この場合、せん断荷重によって破壊限界が引き下げられる可能性があります。

横繊維方向の圧縮がかかっている場合、最初は圧縮が増大すると、複合材のせん断荷重も増大します(モードB)。圧縮が増大し続けると、せん断荷重は減少に転じます(モードC)。

入力パラメータ

繊維破断破壊の場合、繊維強度σt1,σc1は、繊維方向の引張および圧縮の複合材試験から得られます。

繊維間破壊の場合、強度σt2,σc2は、横繊維方向の引張および圧縮の複合材試験から得られます。

せん断強度ˉσ12は、純せん断試験(σ2=σ1=0)によって得られます。

σt2,σc2,ˉσ12を使用して、モードBとモードCのp22p12が求まります。

σt2,ˉσ12と、横繊維方向の追加の引張-せん断試験により、p+12が求まります。横繊維方向の追加の引張-せん断試験では、等しい引張-せん断(σ22=σ12による)荷重を使用できます。

これで、下記のようにσ22σ12平面内の破壊曲線を得ることができます。


図 7. σ22σ12平面内のIFF破壊曲線

p+12,p12,p22パラメータについて3。カーボンファイバー複合材の場合はp+12=0.35,p12=0.3,p22=0.2を使用し、グラスファイバー複合材の場合はp+12=0.3,p12=0.25,p22=0.2を使用します。

/FAIL/LAD_DAMA

/FAIL/LAD_DAMAを使用して、複合材層間の剥離を表現します(マトリックス内の損傷の伝播)。仮想インターフェース(接触)を介して層同士が結合されていると想定します。


図 8.
たとえば、下記のように複合材に荷重がかかっている場合、引張σと方向3の変位δは次の曲線で示されているとおりです。


図 9.
引張と変位の関係を示す曲線の下の面積は、剥離による吸収エネルギーを表します。これは、損傷インターフェースのひずみエネルギーとも呼ばれます。このひずみエネルギーによる破壊を以下に示します。ここでは3つの剥離モードが考慮されています:(2) ED=12[σ332K3(1d3)+σ332K3+σ322K2(1d2)+σ312K1(1d1)]
ここで、σ33,σ32,σ31は、以下の3つの剥離挙動モードにおける応力です。

fail_lad-dama_delam1A
図 10.
剥離のひずみエネルギーEDにより、これらの3モードについて、損傷エネルギー解放率とも呼ばれる熱力学的な力(仮想インターフェースの接触力)を計算できます:
  • モデルI(DCB試験体5

    Yd3=EDd3|σ=cst=12σ332K3(1d3)2

  • モデルII(ENF試験体5

    Yd2=EDd2|σ=cst=12σ322K2(1d2)2

  • モデルIII

    Yd1=EDd1|σ=cst=12σ312K1(1d1)2

ここで、K3,K2,K1は、仮想インターフェースの剛性(層間剛性とも呼ばれます)です。これらの値は次のように計算できます:(3)
K3=2E33t
K2=2G23t
K1=2G13t
ここで、
t
仮想インターフェースの板厚。これは、層厚の5分の1と想定できます。
G13G23E33
上層または下層から。
di
損傷変数(i=1,2,3)。
この値の範囲は0~1です。この値は、複合材がY0に達すると累積し始めます。
モードIの例で、方向3での引張時において、最初、d3は、熱力学的な力Yd3Y0に達するまで常に0のままになります(左の図)。


図 11.

Y0に達すると、損傷変数は増加し始め、1に達すると、d3=1となります(この時点の熱力学的な力Yd3は臨界損傷Ycになります)。複合材は完全に剥離したと見なすことができ、複合材を直ちに削除するか、応力を小さくすることができます。Radiossでは、オプションτmaxを使用して指数関数的な応力減少をシミュレートし、Ycにおける応力はσd(tr)となります(損傷時の応力減少)。

熱力学的な力Ydidiとの関係は次のとおりです:
  • d1の場合、 d=1
  • d<1の場合、dYの関数(損傷評価則):(4) d=w(Y)=YY0YcY0

    Y=Yd3+γ1Yd1+γ2Yd2 ここで、 Ydi|t=supYdi|τt

    ここで、γ1,γ2は他の2つの剥離モードを考慮するためのスケールファクターです。これは実験によって検証できます(DCBとENFの試験体試験5)。

モードIの例では、これは方向3における純粋剥離であるため、γ1,γ2は0にすることができ、Y=Yd3となります。Yd3d3の関係は次のようになります:


図 12.
損傷変数はどれだけの速度で増加するのでしょうか?損傷速度˙d損傷評価則とも呼ばれます)は次のように計算されます:
  • d=1であれば、 ˙d=const.
  • d<1であれば、 ˙d=ka[1exp(aw(Y)d)]
ka は最大損傷率で、破壊現象の最小継続時間を意味します。これの逆数ak特性時間と呼ばれ、1次元の引張試験によって得ることができます。 7


図 13.
複合材損傷の最小時間Δtを求めるための異なる応力による引張サンプルから、σΔt曲線は、特性時間akに対応する垂直漸近線となります。


図 14.
パラメータaおよびkによって損傷評価則が決定されます。たとえば、定数パラメータa(ここではa=1)を使用した場合、kの値が小さくなるほど、複合材破壊の脆性は高くなります。


図 15.
定数パラメータk(ここではk=1)を使用した場合、aの値が大きくなるほど、複合材破壊の脆性は高くなります。


図 16.

/FAIL/CHANG

Chang-Chang破壊では、次の2つの主要破壊モードが考慮されます。
  • 繊維モード: 引張時の繊維破断または圧縮時の繊維座屈が原因で、複合材が破壊します。
  • マトリックスモード: 引張時または圧縮時のマトリックス破壊が原因で、複合材が破壊します。
この破壊基準はシェル要素専用です。
損傷基準 D=1の場合は、破壊。

0D<1の場合は、破壊なし。

ここで、D=Max(ef2,ec2,em2,ed2)

繊維破損 引張繊維モード σ11>0 ef2=(σ11σt1)2+β(σ12ˉσ12)2
圧縮繊維モード σ11<0 ec2=(σ11σc1)2
マトリックス亀裂 引張マトリックスモード σ22>0 em2=(σ22σt2)2+β(σ12ˉσ12)2
圧縮マトリックスモード σ22<0 ed2=(σ222ˉσ12)2+[(σc22ˉσ12)21]σ22σc2+(σ12ˉσ12)2
ここで、
方向1
繊維方向。
σt1,σc1
繊維の引張 / 圧縮強度。
σt2,σc2
マトリックス強度。
方向2(方向1に対して垂直)の引張荷重または圧縮荷重。
ˉσ12
複合材プライ平面のせん断強度。
β
せん断スケールファクター(実験によって特定できます)。

損傷時の応力減少

損傷基準に達した後:
  • HASHIN:

    D=Max(F1,F2,F3,F4)1

  • PUCK:

    D=Max(ef(tensile),ef(compression),ef(ModeA),ef(ModeB),ef(ModeC))1

  • LAD_DAMA:

    d1

  • CHANG:

    D=Max(ef2,ec2,em2,ed2)1

応力が減少し始め、指数関数を使用することで徐々に減少して、数値的不安定が回避されます。(5) σ(t)=σd(tr)f(t)       =σd(tr)exp(ttrτmax)

ここで、 ttr

τmaxオプションは、損傷時に応力がどれだけ緩やかに減少するかを制御します。


図 17.
ここで、
σd(tr)
損傷がD1に達したときの応力成分。
tr
σd(tr)の時間。
τmax
動的緩和の時間。
τmaxの値が大きいほど、損傷時の応力減少が緩やかになります。通常、これには10~20時間ステップを要します。

参考文献

1
Hashin, Z., "Failure Criteria for Unidirectional Fiber Composites," Journal of Applied Mechanics, Vol. 47, 1980, pp. 329-334.
2
A. Puck, J. Kopp, and M. Knops., “Failure analysis of FRP laminates by means of physically based phenomenological models”. Composites Science Technology, 62. pp. 1633-1662. 2002.
3
A. Puck, J. Kopp, and M. Knops. “Guidelines for the determination of the parameters in Puck's action plane strength criterion”. Composites Science Technology 62. pp. 371-378. 2002.
4
L. Gornet, “Finite Element Damage Prediction of Composite Structures”.
5
Ladevèze, P., Allix, O., Douchin, B., Lévêque, D., “A Computational Method for damage Intensity Prediction in a Laminated Composite Structure”, Computational mechanics—New Trends and Applications In: Idelsohn, S., Oñate E., and Dvorkin E., (eds.) CIMNE, Barcelona, Spain (1998).
6
Gama B.A., Gillespie J.W., Punch Shear Behavior of Composites at Low and High Rates[M]// Fracture of Nano and Engineering Materials and Structures. Springer Netherlands, 2006.
7
Allix, O. & Deü, Jean-François. (1997). Delay-damage modeling for fracture prediction of laminated composites under dynamic loading. Engineering Transactions. 45. 29-46.