フォースの計算

すべてのフォースはISO座標系で計算します。

垂直力



図 1. 傾斜した状態のタイヤの正面図


は、タイヤの垂直剛性です。この計算では横方向のたわみを無視しています。



は、タイヤの貫通速度です。

垂直力は正の値のみです。タイヤが地面から離れた状態では、得られる負の反力が0に設定されます。

タイヤのプロパティファイルに[DEFLECTION_LOAD_CURVE]ブロックが存在する場合は、そのブロックのデータを使用して垂直力が計算されます。この場合、VERTICAL_STIFFNESSの値は無視されます。DEFLECTION_LOAD_CURVEのデータは、単調に増加する値とする必要があります。このような表の例を以下に示します。



摩擦係数

摩擦係数は、3つの方法で計算することができます。
  1. Comprehensive slipを使用してUmaxとUminの値を補間。


    図 2. 摩擦係数と滑り


  2. テーブルからの垂直力を使用してMuを補間。
  3. テーブルからの滑りを使用してMuを補間。

オプション1はデフォルトオプションです。オプション2または3は、次のようなMuと垂直力の関係、またはMuと滑りの関係を表すテーブルがある場合に使用できます。



図 3.

このような場合は、適宜、パラメータMuを[parameter]ブロック内のこのテーブルを含むブロックの名前に設定する必要があります。

テーブルデータは、次のように、プロパティファイルのブロック内で指定する必要があります。



図 4. MuとFz、およびMuと滑りの関係を含むブロック
ブロックMU_FZまたはMU_SLIPの名前は、上の図の[MU_FZ]や[MU_SLIP]のように、Muパラメータブロックを定義する角かっこで囲む必要があります。このブロックでは次の3つの値を指定します:
INDEPENDENT_VARIABLE 摩擦係数はこの変数の関数です。オプションとして、VERTICAL_FORCESLIPの2つのデータタイプを生成するために使用されます。
DATA テーブルデータを含むこのブロック内のサブテーブル。
INTERPOLATION 曲線の補間に使用するスキーム。次の4種類のオプションが用意されています。LINEAR, CUBIC, AKIMA, QUINTIC.デフォルト = AKIMA.

以前のバージョンのサポートを継続するために、ブロック[MU_SLIP_CURVE]が指定された場合は、Muパラメータブロック(MU_FZまたはMU_SLIP)を設定せずに使用されます。このような場合は、摩擦係数が、ブロック[MU_SLIP_CURVE]のテーブル内のデータを補間することによって計算されます。

[MU_SLIP]による曲線のデータは、単調に増加する値であることが必要です。表の例を以下に示します:



前後力

前後力(Fx)の計算は、タイヤの縦滑り条件によって異なります。通常は、弾性変形状態(縦滑りが臨界滑り値より小さい)と純粋な滑り状態(縦滑りが臨界滑り値を超えている)という2つの明確な滑り状態が存在します。

臨界縦滑りは次のように計算します:



純粋な弾性変形の場合:



純粋な滑りの場合:



ここで:





横力

縦方向の力の臨界滑りの場合と同じように、臨界横滑り係数が計算されます。タイヤの純粋な弾性変形状態と純粋な滑り状態の境界を決定します。



弾性変形状態の場合:

は、それぞれ横滑りに起因する横力とキャンバーに起因する横力です。



は、が成立する場合のキャンバー角です。



また、 > の場合



ここで:



滑りの場合:



オーバーターニングモーメント

オーバーターニングモーメントは、垂直力がかかる位置である接触点が横方向に移動することによって発生します。


図 5. 傾斜した状態でのオーバーターニングモーメント

転がり抵抗モーメント

FIALAタイヤモデルでは、転がり抵抗モーメントは、純粋に垂直力Fzの関数です:

ここで、omegaはスピン軸を中心としたタイヤの角速度です。

アライニングトルク

Fy計算で使用されるのと同じ臨界横滑り角は、タイヤの状態を判断する際にも使用されます。


図 6. 作用点での縦力によって垂直軸を中心として発生するモーメント

弾性変形状態の場合:

ここで、は接触パッチの長さの半分です。ここでのスケールファクターは接触パッチの長さの半分ですが、FIALAモデルでは、タイヤ幅がスケールファクターとして使用されます。

滑りの場合: