流体-構造連成モデルの周波数応答解析

構造-流体モデルの連成周波数応答解析は、通常音場解析とも呼ばれ、一般に、自動車内部や楽器の様な構造の空間内の音響伝播をモデル化して実行されます。

OptiStructでは流体-構造モデルの直接周波数とモーダル周波数応答解析の両方が可能です。構造と流体の両方の領域の応答が計算され、構造領域では、この応答は構造節点の変位と回転になり、流体領域では、この応答は流体節点の圧力になります。

流体-構造インターフェース上の構造節点の加速度が流体領域を加振し、逆に、流体-構造インターフェース上の流体節点の圧力が構造領域を加振します。それ故、問題は連成し、構造と流体自由度の動きは同時に解かれます。

荷重は加振周波数 Ω のsin関数形で、荷重、音響のソース、強制変位、強制速度や強制加速度の形をとることができます。周波数応答の荷重条件および境界条件は、入力デックのバルクデータセクションで定義します。これらは次にサブケース定義でSPCまたはDLOADデータ選択を通して参照されます。

減衰は構造と流体領域の両方で定義することができます。構造領域では減衰は、構造減衰要素、材料減衰、構造減衰(PARAM,G)、またはモード減衰(SDAMPING(STRUCT) サブケースデータ選択で参照される(SDAMPING)を通して定義されます。流体領域では減衰は、材料減衰、流体減衰(PARAM,GFL)、またはモード減衰(SDAMPING(FLUID)サブケース選択で参照されるSDAMPING)を通して定義されます。加えて、多孔質材料の正規化されたアドミッタンス係数がMAT10データのALPHAにより指定されます。

周波数依存の流体音響アブソーバー要素はCAABSF要素を用いて流体-構造境界面上の流体表面で指定できます。アブソーバー要素はポイント、ライン、三角形、四角形の形状を持つ事ができます。CAABSFデータは、周波数依存のレジスタンス(インピーダンスの実部)とリアクタンス(インピーダンスの虚部)と共に、ポイントやライン要素の面積係数の指定に用いられるPAABSFデータを参照します。

PARAM, LFREQFLPARAM,HFREQFLを使用して、モーダル周波数応答解析(音響解析)からモードを除外できます。

波動式

音場解析は次のように線形圧力-密度関係の非粘性流れに基づいています:(1) 1 ρ p + u ¨ = 0
そして連続方程式は次のようになります:(2) p + β ( · u ) = 0
ここで、
p
流体領域の圧力
u
流体領域の変位
β
流体領域の圧縮性
ρ
流体領域の密度
上の方程式を組み合わせると、流体領域の支配方程式は次のようになります:(3) p ¨ β 1 ρ 2 p = 0

インターフェース上の流体領域に対する構造の影響

有限要素への離散化の後、流体領域の方程式の重ね合わせは次のようになります:(4) M F p ¨ + C F p ˙ + K F p A i n t u ¨ = s F

ここで、 M F C F K F および s F は、それぞれ流体領域の質量マトリックス、減衰マトリックス、剛性マトリックス、ソースベクトルです。

マトリックス A i n t はインターフェースマトリックスを表し、 u ¨ は流体-構造インターフェース上の構造節点における加速度です。(インターフェース上の圧力勾配が構造節点における加速度によって影響されます)。

インターフェース上の構造領域に対する流体の影響

構造の方程式の重ね合わせは次のように書くことができます:(5) M S u ¨ + C S u ˙ + K S u A i n t T p = s S

ここで、 M S C S K S および s S は、それぞれ構造領域の質量マトリックス、減衰マトリックス、剛性マトリックス、ソースベクトルです。

A i n t T はインターフェースマトリックスの置き換えを表し、 p は流体-構造インターフェース上のインターフェース流体節点の圧力です(インターフェース上の構造節点の変位、速度、加速度がインターフェース流体節点における圧力によって影響されます)。

流体-構造連成インターフェースの方程式

したがって、組み合わされた流体-構造インターフェースの方程式は次のようになります:(6) [ M S 0 A i n t M F ] [ u ¨ p ¨ ] + [ C S 0 0 C F ] [ u ˙ p ˙ ] + [ K S A i n t T 0 K F ] [ u p ] = [ s S s F ]

上の方程式は、直接周波数応答またはモーダル周波数応答のどちらかで、構造と流体領域の未知量に関して同時に解かれます。モーダル周波数応答では、OptiStructは構造と流体の領域の固有空間を自動的に計算します。

流体メッシュ上の荷重

流体節点はSLOADデータで荷重の大きさとGRIDを指定されることで荷重を受けることができます。

SLOADデータは荷重の動的特性(DELAY, DPHASEと荷重のスケールファクター対周波数の表形式リスト)を定義するACSRCEデータを参照します。加えて、荷重を受ける流体の密度と体積弾性係数がASRCEデータで指定されます。流体の材料特性は、同じ流体GRIDが2つの異なる流体メッシュで共有されている場合にはASRCEで指定される必要があります。

流体-構造インタフェースの可視化と改良

OptiStructは節点と節点が一致したインターフェースと、一致しないインターフェースの両方をサポートしています。このインターフェースはACMODLカードを通して指定されます。ACMODLカードが入力ファイルで指定されない場合、流体-構造インターフェースは、ACMODLパラメータのデフォルト値に基づいてOptiStructにより自動的に定義されます。

ACMODLカードで指定されたサーチボックスに基づき、OptiStruct*.interfaceファイルを出力し、これには流体-構造インターフェースに関する情報が含まれます。HyperMeshにモデルがロードされている時、この*.interfaceファイルをインポートし、流体-構造インターフェースを可視化することができます(インポート時にFE overwriteオプションがアクティブになっている事を確認してください)。“^Fluid Faces at Interface”コンポーネントが生成され、構造と流体領域の間のインターフェースを表示させる事ができるようになります。コンポーネント“^Acoustically Rigid Fluid Faces”が生成された場合、その流体表面で見つかった構造節点が無い事を意味しています。インターフェース上に見つかった構造節点を表示するための構造節点セット“^Structural grids at Interface”も生成されます。

そのインターフェースの改良にはいくつかのステップがあります:
  1. OptiStructチェックランを実行します。これで*.interfaceファイルが生成され、インターフェースを可視化できるようになります。
  2. インターフェースが望むものではなかった場合、流体境界を記述する流体節点を含む新しいSETを生成します。
  3. 次に新しく作成したセットをACMODLカードのFSETの下に指定することができます。
  4. OptiStructチェックランを再実行して新しいインターフェースを再び表示させます。

外部流体構造連成定義ファイルの利用

OptiStructは、内部での連成計算の代わりにAKUSMOで生成されたバイナリftn.70連成ファイルを用いることができます。

このオプションを用いるには入力ファイルにPARAM,AKUSMOD,YESを加えます。

モードとパネル寄与度

モード寄与度はそれぞれのモードが与えられた周波数でモーダル周波数応答計算にどれだけ寄与しているかを示す量です。モード寄与度の出力要求は構造の自由度だけでなく流体自由度に対しても行う事ができます。

PFMODE I/Oオプションエントリを用いて、どんな数の自由度に対してもモード寄与度の計算と出力を要求することができます。

パネル寄与度は、PANELバルクデータ入力で定義された、指定された構造節点のセットの影響の量です。流体節点の応答はそれぞれのパネルまたは音場インターフェース上のそれぞれの節点を通して影響されます。特定の荷重周波数におけるそれぞれのパネルからの寄与の計算と出力は、モーダル周波数応答において、PFPANEL I/Oオプションエントリを通して要求できます。インターフェース上のそれぞれの節点からの寄与の計算と出力もPFGRID I/Oオプションエントリを通して要求できます。

PFMODEおよびPFPANEL I/Oオプションエントリの定義に基づいて、ファイル*.pfmode.pchが生成されます。PFGRIDの出力はH3D ファイルになされます。PFMODEPFPANELの結果は HyperGraphでプロットするのが良く、PFGRIDのコンター結果はHyperViewで可視化するのが良いと言えます。

無反射境界

境界の垂直面を通して、無反射で音波を伝播できます。この条件は、Sommerfeld境界条件と呼ばれています。

無反射境界を作成するには、PAABSFバルクデータエントリのTZREIDフィールド(インピーダンスの実部であるレジスタンス)によって参照されるTABLEDiエントリの値を、全ての周波数で ( ρ f l u i d ) * ( c f l u i d ) と等しくなるように設定します。

ここで、
ρ f l u i d
流体の密度
c f l u i d
流体内の音速