パワートレインアプリケーション

OptiStructでは、パワートレインアプリケーションに対して業界をリードする機能およびソリューションを提供しています。本書では、パワートレイン業界のさまざまなアプリケーションに向けたOptiStructの機能を紹介します。各セクションでは、簡単な紹介の後、対応する解析タイプのフィールドでの一般的な目的が示されています。

さらに、一般的な入力、出力、および主な機能が紹介され、アプリケーション指向のレイアウトでその機能についての理解を深められるようになっています。例題およびチュートリアルへのリンクが用意されており、ユーザーはモデルをダウンロードしてHyperMeshに設定したり、直接OptiStructで実行して、結果を解析することができます。


図 1. エンジンブロックでの応力のポスト処理の例

本書により、ユーザーはアプリケーション指向のアプローチでOptiStructのソリューションシーケンスを理解でき、強力なパワートレインソリューションとその業界内での適応との間のギャップを効果的に埋めることができます。

詳細なソリューション固有の情報は、対応するユーザーズガイドのページをご参照ください。ここではパワートレインのアプリケーション固有情報について説明します。

非線形定常熱伝導解析

シリンダーヘッド、バルブガイド、バルブシート、バルブ、シリンダーヘッドボルト、シリンダーブロック、ベアリングキャップおよびベッドプレートから成るエンジンブロックでの非線形定常熱伝導解析。

理論

後続の耐久性解析用に、エンジンブロック内の温度を計算します。

最良の実施例

SimLabを使用して、CFD / 燃焼解析の結果である温度およびHTCを、非線形定常熱伝導解析に使用するメッシュにマッピングできます。

入力

荷重条件および境界条件は次のとおりです。
  • CFD解析の結果のウォータージャケット内の温度とHTC。
  • 燃焼解析の結果であり得るシリンダー内の温度とHTC。


図 2. シリンダー内の境界条件

出力

エンジンブロック内の温度。


図 3. 結果温度

熱流体-構造相互作用解析

シリンダーヘッド、バルブガイド、バルブシート、バルブ、シリンダーブロック、ベアリングキャップおよび台板から成るエンジンブロックでの熱流体-構造相互作用解析。



図 4. 領域情報

理論

流体領域との連成効果を考慮することにより、エンジンブロック内の温度を評価します。これにより、後続の耐久性解析において、これらの温度を入力として使用することができます。

流体領域(すなわち、ウォータージャケット)内の圧力降下と流れの均一性を計算します。

入力

流体領域の初期条件と境界条件。

燃焼解析の結果であり得るシリンダー内の温度とHTC。
注: 流体領域と構造領域の間のインターフェースでの温度および流束は、AcuSolveOptiStructによって自動的に管理されます。

出力

ウォータージャケットおよびエンジンブロック内の温度。


図 5. ウォータージャケットおよびエンジンブロック内の温度の結果

流体領域内の圧力降下と流れの均一性。

温度-構造連成解析

シリンダーヘッド、バルブガイド、バルブシート、バルブ、ガスケット、シリンダーヘッドボルト、シリンダーブロック、ベアリングキャップおよび台板から成るエンジンブロックでの接触ベースの熱解析。このモデルでは、すべてのパートがスライディング接触またはタイド接触の状態にあります。

理論

熱伝導係数で接触クリアランス / 圧力の影響を考慮することによって、エンジンブロック内の温度を評価します。これにより、後続の解析において、これらの温度を入力として使用することができます。

サブケースのシーケンス:

プリテンションがシリンダーヘッドボルトに適用される非線形準-静的解析。このサブケースの目的は、すべてのパートを接触させたうえで、環境温度でエンジンブロックアセンブリをモデル化することです。

熱伝導係数が接触圧力 / クリアランスに基づく接触ベースの熱解析。このサブケースでは、シリンダーヘッドボルトのプリテンションはロックされています。このサブケースの目的は、“高温”の状態でエンジンブロックアセンブリをモデル化することです。

最良の実施例

接触圧力および熱伝導係数は熱伝導解析に影響を与えるため、ガスケットとその周囲のパートとの接触を適切にモデル化することが重要です。SimLabには、ここで役立つガスケットのモデル化専用の固有ツールが数多くあります。詳細については、SimLabAdvancedメニューから利用可能なガスケットツールをご参照ください。


図 6. 重複メッシュ

図 6で、ガスケットのメッシュはSimLabを使用してシリンダーヘッドのメッシュ上に重ねて表示されており、これら2つのパート間で重複メッシュが生じています。これは、この領域の接触モデリングをより良いものにするために行われています。

入力

  • シリンダーヘッドボルト内のプリテンション
  • クリアランスおよび圧力ベースの熱伝導係数値


    図 7. 接触クリアランスおよび圧力に基づく熱伝導係数値
  • CFD解析の結果のウォータージャケット内の温度とHTC。
  • 燃焼解析の結果であり得るシリンダー内の温度とHTC。

出力

エンジンブロック内の温度。


図 8. 接触圧力結果

非線形静解析

微小変形を伴い、温度荷重を使用する / 使用しない非線形静的解析。この種の解析は、ほとんどのPWTコンポーネントで実行できます。

理論

ほとんどすべてのPWTコンポーネントの応力を予測します。
変形
ボア変形、ベアリング真円度
接触圧力
シーリングのためのガスケット圧力
相対変位
シーリングを見積もるための2つのギアボックスケース間の開口部、エンジンマウントとエンジンブロック間の相対スライディング

最良の実施例

ボア変形では、揃ったメッシュを使用してシリンダーをメッシュします(HyperMeshではR-triaメッシュ、SimLabではアイソメッシュと呼ばれています)。


図 9.
シリンダーのボア変形を計算するには、円筒座標系を追加します。


図 10. メッシュと座標系

特にボア変形の計算に使用されるモデルなど最大級のモデルでは、領域分割法を使用して計算時間を短縮します。

SimLabに用意されているインプリント機能を使用して、接触領域に重複メッシュを生成することができます。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。
  • ボルトプリテンショニング
  • CLEARANCE、ADJUST、SMOOTHなどの接触オプションのあるN2S接触およびS2S接触
  • ガスケット材料
  • 塑性材料
  • 前の非線形荷重ケースの非線形解の続き(CNTNLSUB
  • 非線形エキスパートシステム(PARAM,EXPERTNL,YES
  • 非線形解析のボア変形のリスタート

出力

応力、ボア変形、および接触圧力


図 11. 結果ガスケット圧力

疲労解析

理論

ほとんどのPWTコンポーネントの寿命を予測します。コンポーネントによって異なるアプローチが使用されます。
  • 低サイクル疲労解析(E-N)

    シリンダーヘッド

  • 高サイクル疲労解析(S-N)

    エンジンブロック、特にシリンダーヘッドのウォータージャケット、シリンダーブロック、ベッドプレートおよびベアリングキャップ。

    コネクティングロッドやクランクシャフトなどの回転パート。

  • 無限寿命(Dang Van)

    エンジンブロック、特にシリンダーヘッドのウォータージャケット、シリンダーブロック、ベッドプレートおよびベアリングキャップ。

    コネクティングロッドやクランクシャフトなどの回転パート。

    エンジンマウント。

    ギアボックスケース。

最良の実施例

領域分割法を使用して、最大級のモデルの計算時間を短縮します。

疲労結果は要素の中心でのみ使用可能です。ソリッドコンポーネントの外部フェイスの結果を得るには、これらのコンポーネントの外部フェイスを抽出することによってシェル要素を追加し、これらのシェル要素上の疲労を計算します。

OptiStructでは、TIED接触で異なる要素タイプを混在させることができます。クランクシャフトのフィレットでの疲労の計算に使用される図 12では、フィレットはより正確に応力を捕捉するためHEXA要素でメッシュされ、残りのパートはTETRA要素でメッシュされています。この2つの要素タイプ間は、TIED接触で結合されます。


図 12. TIED接触によるHEXA要素とTETRA要素の結合

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

出力

  • 疲労損傷および寿命
  • FOS


    図 13. フォンミーゼス応力結果

騒音振動(NVH)解析

理論

ほとんどのPWTコンポーネントのモード解析および周波数依存荷重に対する応答を予測します。コンポーネントによって異なるアプローチが使用されます。放射音解析および等価放射パワー解析を含みます。

NVH解析にはさまざまなレベルの複雑さのモデルを使用できます。
  • 単一パートまたはサブシステム

    シリンダーヘッド、シリンダーブロック、ベッドプレートおよびギアボックスから成るエンジントランク。

    エンジントランクおよびすべてのアクセサリなどでのPWTモデル全体。

  • これらのモデルでは、以下を介してアセンブリが可能

    1D要素でモデル化されたボルト。

    1Dまたは3D要素でモデル化されたボルト、および初期応力解析を実行するためのプリテンション断面。この場合、NVH解析の前に非線形静的解析を実行する必要があります。

    初期応力解析を実行するためのスライディング接触。この場合、NVH解析の前に非線形静的解析を実行する必要があります。

    フリーズ接触またはタイド接触

  • OptiStructで実行できる一般的なNVH解析

    スーパーエレメント生成

    ノーマルモード解析

    FR解析

    ERPおよび放射音解析

最良の実施例

大きなモデルの場合や抽出するモード数が多い場合はAMSESを使用します。

大きなモデルでは、Lanczosソルバーでのモードの抽出に領域分割法を使用します。

入力

  • CMSMETHによる動的縮退
  • AMSES
  • FASTFR
  • 放射音解析およびERP
  • 初期応力ノーマルモード解析

出力



図 14. 初期応力を与えた結果への周波数の影響

OptiStructとサードパーティソルバーとの連成

理論

OptiStructは、さまざまなサードパーティソルバーと連成できます。ここでは、パワートレインベースの連成の使用可否について簡単に確認します。詳細については、サードパーティーソフトウエアのための出力生成をご参照ください。

FEMFAT、Design Life、FE-Fatigue、およびFE-SAFEを使用した疲労解析。

AVL/EXCITE、SIMPACK、ROMAX、ADAMS、RicardoおよびVirtual Labのための縮退されたCMSスーパーエレメントの情報の作成。

AVL EXCITE実行後の、AVL/EXCITEからのモード寄与結果に基づいたCMSスーパーエレメントでの内部節点および要素の変位、速度、加速度、ERP、応力およびひずみ結果のリカバーのためのレジデュアルラン。

ボア変形応答でのシリンダーブロックのトポロジー最適化

リブを追加するシリンダーブロックの外部フェイスの設計空間。

設定

シリンダーブロックの質量の最小化、ボア変形の制約。

または

ボア変形の最小化、シリンダーブロックの質量の制約。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

ベッドプレートのトポロジー最適化

ベッドプレート内側および外側の設計空間。

設定

ベッドプレートの質量の最小化、応力の制約および固有振動数の制約。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

出力

この種の最適化問題を実行するには、MMO機能で次の2つの異なるモデルを使用する必要があります。
  1. 非線形静的解析用モデル。
  2. NVH解析用モデル。

ギアボックスハウジングのトポロジー最適化

リブを追加するギアボックスハウジングの外部フェイスの設計空間。

設定

ギアボックスの質量の最小化、ベアリングの偏心、エンジンマウントの動的剛性、および固有振動数の制約

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

出力

この種の最適化問題を実行するには、MMO機能で次の2つの異なるモデルを使用する必要があります。
  1. 非線形静的解析用モデル。
  2. NVH解析用モデル。

ボア変形応答でのシリンダーブロックの形状最適化

ウォータージャケットの形状を修正する形状またはフリー形状変数。

設定

シリンダーブロックの質量の最小化、ボア変形の制約。

または

ボア変形の最小化、シリンダーブロックの質量の制約。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

疲労応答でのシリンダーヘッドの形状最適化

ウォータージャケットの形状を修正する形状またはフリー形状変数。

設定

シリンダーブロックの質量の最小化、寿命または損傷(HCF)の制約。

または

寿命の最小化または損傷の最小化、シリンダーブロックの質量の制約。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

疲労、接触圧力および真円度応答でのコネクティングロッドの形状最適化

コネクティングロッドの形状を修正する形状またはフリー形状変数。

設定

コネクティングロッドの質量の最小化。

次の応答の制約:
  • 寿命または損傷(HCF)
  • ベアリング真円度
  • 接触圧力

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。

周波数制約やERP制約での熱シールドのトポグラフィー最適化

熱シールドを補強するためのトポグラフィー変数。

設定

ERPの最小化、固有振動数の制約。

入力

モデルには温度荷重を含めることができます。この場合、コンポーネントごとに一定にできる温度荷重とするか、または熱伝導解析の結果として得ることもできます。

プリテンション荷重などの静荷重、燃焼室内の圧力、MBD解析の結果として得られるクランクシャフトやベアリングに適用される荷重。