ソルバー

OptiStructには、さまざまなエンジニアリングフィールドおよびテクノロジーフィールドのアプリケーション用に幅広い社内ソルバーおよびサードパーティソルバーが含まれています。

一般に、有限要素ソリューションには、複素行列の操作と併せて、多次元行列の効率的な因数分解や、反転が関与します。解析のタイプにより、アルゴリズムやソリューションのシーケンスは大きく変わる可能性があり、多種多様なソルバーオプションを組み込むことが必要となります。例えば、線形静解析では剛性マトリックスの直接反転 / 因数分解のいずれかが必要であり、ノーマルモード解析では固有値解析が使用されます。

ソルバーとサポートされるソリューションシーケンス

OptiStructでサポートされているソルバー、および使用できるソリューションシーケンス。

サブケースタイプ BCS MUMPS PCG PARDISO AMSES Lanczos AMLS LAPACK FASTFR FastFRS
線形静解析(STATICS) オプション デフォルト オプション オプション N/A N/A N/A N/A N/A N/A
非線形静解析(NLSTAT) オプション デフォルト オプション オプション N/A N/A N/A N/A N/A N/A
固有値解析(MODES) オプションの線形方程式ソルバー デフォルトの線形方程式ソルバー N/A オプションの線形方程式ソルバー オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプションの固有値ソルバー。 N/A N/A N/A
線形座屈解析(BUCK) オプションの線形方程式ソルバー デフォルトの線形方程式ソルバー N/A オプションの線形方程式ソルバー N/A デフォルトの固有値ソルバー。 N/A N/A N/A N/A
モーダル法による周波数応答解析(MFREQ) オプションの線形方程式ソルバー デフォルトの線形方程式ソルバー オプションの線形方程式ソルバー オプションの線形方程式ソルバー オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプション オプション
直接法による周波数応答解析(DFREQ) オプション デフォルト N/A オプション N/A N/A N/A N/A N/A N/A
フーリエ変換による直接法過渡応答(DFOUR) デフォルト N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
フーリエ変換によるモーダル法過渡応答(MFOUR) N/A N/A N/A N/A オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプション オプション
直接法による線形過渡応答解析(DTRAN) オプション デフォルト N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
直接法による非線形過渡解析 オプション デフォルト N/A オプション N/A N/A N/A N/A N/A N/A
モーダル法による過渡応答解析 オプションの線形方程式ソルバー オプションの線形方程式ソルバー オプションの線形方程式ソルバー オプションの線形方程式ソルバー オプションの固有値ソルバー。 デフォルトの固有値ソルバー。 オプションの固有値ソルバー。 N/A N/A N/A
直接法による複素固有値解析(DCEIG) N/A デフォルトの複素固有値ソルバー。 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
モーダル複素固有値解析(MCEIG) N/A デフォルトの実固有値ソルバー。 N/A N/A オプションの複素固有値ソルバー。 デフォルトの複素固有値ソルバー。 オプションの複素固有値ソルバー。 N/A N/A N/A
線形熱伝導解析(HEAT) デフォルト N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
非線形熱伝導解析(NLHEAT) オプション デフォルト N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
区分モード合成(CMSMETH) N/A N/A N/A N/A オプション デフォルト オプション N/A N/A N/A
電気伝導解析(ELEC) オプション デフォルト N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A

SOLVTYPバルクデータエントリでは、さまざまな静的ソルバーがオプションとして使用できます。固有値解析の固有値ソルバー選択は、EIGRA/EIGRLバルクデータエントリによって行います。PARAM, AMLSを使用すると、AMLSのオンとオフを切り替えることができます。モーダル法による周波数応答解析にはFASTFRFASTFRSが使用でき、それぞれPARAM, FASTFRPARAM, FASTFRSを用いてアクティブ化されます(モーダル法によるソリューションのデフォルトはLAPACKです)。ソルバーは、解析のタイプまたは最適化実行に基づいて選択できます。

ソルバーの分類

ソルバーは、使用されるアルゴリズム、または解が求められる高次方程式の性質に基づいて、大きく3つのタイプに分類されます。

直接法ソルバー

直接法ソルバーは、有限要素ソリューションに関わる行列の消去または分解に基づいています。直接法ソルバーは、ソリューションの安定性が高く、通常数値上の問題の影響を受けないため、構造解析で広く使用されます。考えられる短所は、解を求めるのに時間がかかり、多くのメモリを必要とすることです。

直接法ソルバーはまず行列を分解してから、前進消去-後退代入(FBS)を行います。剛性マトリックスは通常、非常に疎であり、ゼロでない剛性項を適切に並び替えることで、ソリューション時間およびメモリの使用量が大幅に改善されます。

OptiStruct内で、Boeingソルバー(BCS)と超並列マルチフロント法スパース直接法ソルバー(MUMPS)から選択できます。線形静解析および非線形解析ではBCSがデフォルトのソルバーとなります。摩擦がある場合、デフォルトのソルバーはMUMPSとなります。
  • 長所
    • ソリューションの安定性が高い
    • 数値上の問題が最小限
    • 対称行列も非対称行列も処理可能
  • 短所
    • 計算量が多い
    • メモリ必要量が多い

反復ソルバー

反復ソルバーは、方程式系を解くために、直接法ソルバーとは対照的なアルゴリズムを使用します。一般的な手法では、最初に任意のソリューションを使用し、プロセスが進むにつれてそのソリューションが反復的に更新されます。一般的な反復ソルバーで最も重要なコンポーネントは前処理です。トレランスレベルが収束およびソリューションの精度を示しているかどうかを判断するため、収束条件が割り当てられます。ソリューションの精度に関係なく、(通常はエラーを伴って)ソルバーが停止するまでの最大反復回数も指定できます。

OptiStructでは、前処理付き共役勾配法(PCG)が反復ソルバーです。反復ソルバーは、SOLVTYPバルクデータエントリのMIXEDオプションを使用して、特定のソリューションシーケンスに対し、直接法ソルバーと組み合わせることもできます。
  • 長所
    • ブロック構造モデルの場合、直接法ソルバーより計算速度が速い。
    • 直接法ソルバーよりメモリ必要量が一般的に少ない。
  • 短所
    • 非対称行列は容易に処理できない。
    • 直接法ソルバーよりソリューションの安定性が低い。
    • 場合によっては収束しないことがある。
    • 反復ソルバーの長所は、使用する前処理の質に大きく依存する。

固有値ソルバー

固有値解析には、通常のエネルギー方程式(静的または動的)とは異なる一連の方程式の解が関与します。固有振動数および振動モードを決定するモデルの固有値および固有ベクトルを抽出するために使用されます。

固有値解析を実行するために、AMSES(自動マルチレベルサブストラクチャリング固有値ソルバー)AMLS(自動マルチレベルサブストラクチャリング)およびLanczosが使用可能です。さらに、モーダル解析を解くには、FASTFRおよびFastFRS(高速周波数応答ソルバー)ソルバーを使用できます。

メモリ

ほとんどの直接法ソルバーには、いわゆるインコアメソッドおよびアウトオブコアメソッドが付属しています。

インコアメソッドでは、因数分解された行列および内部データ構造を格納するためにメモリが使用されます。アウトオブコアメソッドでは、因数分解された行列をディスクに出すため、メモリ消費量はインコアメソッドよりはるかに少なくなります。BCS/Lanczosには、もう1つの最小コアメソッドがあり、これは内部データ構造もディスクに出すため、メモリ必要量は最小になります。

一般的に、BCSの最小コアメモリ必要量は、MUMPSに比べ、少なくなります。

AMSESソルバーのメモリ必要量を見積もることは不可能です。これは計算の前にはモードの数が不明なためです。AMSESでは、最低メモリ必要量を増加させる必要が生じた場合には必ずこれを拡張する必要があります。ただし、インコアモードを指定している場合、AMSESは最良のパフォーマンスを達成できるだけのメモリ量を割り当てます。

スケーラビリティ

一般的にすべてのOptiStructソルバーは共有メモリ並列型(SMP)です。

–nt オプションを指定することにより、複数のプロセッサで実行できます。コンピューターシステムの1つのCPUソケット内のコア数としてスレッド数を指定することをお勧めします。一般的な数は、Westmere Xeonでは6、Sandy Bridgeでは8、Ivy bridgeでは12などとなっています。

OptiStructでは、静的ソリューションシーケンス用に領域分割法(DDM)が用意されています。DDMモードではMUMPS を使用できます。最良のパフォーマンスを得るには、インコア実行をお勧めしますが、メモリがシステムに適合する必要があり、適合しない場合はアウトオブコア実行をお勧めします。クラスター内の各ノードに関連付けられたローカルディスクが存在する必要があります。これがない場合、入出力の待機によりスケーラビリティが低下します。

BCS

OptiStructに組み込まれた堅牢で正確な直接法スパースソルバー。

これは、ほとんどのソリューションシーケンスのデフォルトソルバーです。従来のインコアおよびアウトオブコアモードに加え、BCSではアウトオブコアよりずっと小さな最低メモリ必要量で大規模モデルを解析する、ユニークな最小コアモードを用意しています。BCSソルバーは、SOLVTYPバルクデータエントリのSOLVERフィールドによってアクティブ化できます。

MUMPS

MUMPS(Multi-frontal Massively Parallel Solver: 超並列マルチフロント法ソルバー)は、共有メモリコンピューターでも分散メモリコンピューターでも実行できる、対称行列または非対称行列用のスパースソルバーです。MUMPSはGaussの消去法のマルチフロントアプローチのインプリメンテーションです。

MUMPSは、MPI並列化には動的分散スケジューリング手法を使用し、各プロセスにはOpenMP並列化を使用することで、大規模モデルに対しても非常にスケーラブルになります。OptiStructの領域分割モードでは、MPIプロセスごとに複数のスレッドを指定して、MUMPSを実行することをお勧めします。

MUMPSにはさまざまなフィルイン削減アルゴリズムがあります。デフォルトではMETISが選択されますが、純粋なシェルモデルにはPORDを試みてください。SOLVTYPバルクデータエントリのMUMPSORDMフィールドによって、異なるフィルイン削減アルゴリズムを選択することができます。

MUMPSは、線形静解析、ノーマルモード解析、座屈解析、直接法による周波数応答解析、直接法による過渡応答解析、非線形熱伝導解析、非線形過渡解析、および複素固有値解析(直接法およびモーダル法)のデフォルトです。MUMPSは、DDM実行のデフォルトでもあります。

モデルについてのmin-coreオプションは、MUMPS実行ではサポートされていません。

PCG

スパース近似逆行列(SPAI)前処理を含む共役勾配法のインプリメンテーション。

PCGは、立方体や円筒など、単純な形状のブロック構造で選択されます。残念ながらシェルモデルでは収束問題が生じる可能性があるため、PCGソルバーでは結果の精度にも十分に注意する必要があります。BCSソルバーは、SOLVTYPバルクデータエントリのSOLVERフィールドによってアクティブ化できます。

AMSES(自動マルチレベルサブストラクチャリング固有値ソルバー)

大規模固有値問題の求解には、AMSESソリューションを Lanczos固有値ソルバーの代わりに用いることができます。

結果の固有値と固有ベクトルは固有値解析、CMSスーパーエレメント生成、モーダル法周波数応答とモーダル法過渡解析に用いられます。また、AMSESソルバーは、トポロジー、トポグラフィー、形状および寸法最適化においても使用できます。AMSESソルバーはLanczosの 2-100 倍も高速になり得ます。

AMSESはマルチスレッドのアプリケーションで、任意の数のプロセッサを用いることができます。AMSESはOptiStructが用いるのと同じ数のプロセッサを用います。

AMSESのアクティブ化

AMSESを使用するには、次のいずれかを定義する必要があります。
  • EIGRLデータの代わりにEIGRAデータを使用
  • CMSMETHデータでのAMSESソルバーキーワードの使用

AMSESの使用法のガイドライン

次のガイドラインは、AMSESの使用法に影響する要因を示しています:
  1. 一般的に、AMSESの求解はLanczosよりもずっと高速ですが、結果は近似です。低い方のモードの精度は非常に高いので、AMSESは、モードの数が多く(数百以上)、(周波数応答解析応答スペクトル解析のように)近似化された固有値で十分なソリューションに適した候補となります。近似ではあるものの、モーダル解析で多くの数のモードの使用はモード空間を包含し、結果の動きはLanczosの結果と非常に近くなります。Lanczosは、少ない数のモードの正確なモード形状が必要とされるソリューションで推奨されます。
  2. 次のような場合は、AMSESも推奨されます: a)小さい固有値が要求されるが、モデルは百万以上の自由度で構成されている。および / または、b)上限(V2)が指定されているか、EIGRLエントリでモード数(NDND)が50よりも多くなっている。このような場合、Lanczosランの速度はAMSESランよりも遅くなります。
  3. 最適化実行のために、固有ベクトルの精度が重要な場合は、AMSESによるノーマルモード解析を最初に実行して、次に精度の高い上限と下限でLanczosを実行し、AMSESランの精度を確認することができます。次に、必要な固有ベクトルの許容される精度を達成するために、AMSESの上限を調整できます。これで、この解析のすべての最適化実行にAMSESを使用できます。
  4. 弾性体の生成や多くの剰余ベクトルが含まれるモーダルソリューションでは、AMSESの求解の方がずっと高速です。
  5. 非常に多くのRBE3が存在する状況(RBE3が構造の1/4と結合している場合)では、AMSESの使用には注意が必要です。そのようなRBE3は削除したほうがよいでしょう。
  6. AMSESの求解の速度は、計算対象の固有ベクトルの自由度(DOF)の数値に依存しています。DISP=ALLでは完全な固有ベクトルが計算され、処理速度の向上はそれほど大きく望めません。しかしながら、いくつかの自由度の結果のみが必要な場合(NVH解析が典型例)、AMSESはLanczosよりも最大100倍高速になります。AMSESランの時間を短縮するには、必要なDOFのみの結果を要求することをお奨めします。
  7. V1V2NDEIGRAエントリに指定されているAMSESランでは、AMSESはNDの値に関係なく、指定されたV2(上限)まですべてのモードを計算します。出力されるのは、要求されたモードのND数です。このため、上限(V2)を同じ値に維持したままNDを少なくしてもAMSESランの時間が大幅に短縮されることはありません。余分なモードの抽出を防ぐには、上限も相応に小さくする必要があります。
  8. AMSESはモデルの不規則性を確認するのにも役立ちます。AMSESを使用して、無質量機構や特異性に関連付けられる節点のリストを書き出すこともできます。

AMSESに影響するパラメータ

AMSESでは精度と計算コストをパラメータAMPFFACTでコントロールします。AMPFFACTの典型的なNVH解析に対する最適な値、5.0は多くのテストを通して確立されてきました。AMPFFACTEIGRACMSMETHデータに対して設定されます。

エンジンブロックのようなソリッドが優位なモデルの場合、AMPFFACT10.0に設定されるべきです。

PARAM,RBMEIGは、剛体モードに関連付けられた固有値の上限を調整するために使用できます。PARAM,RBMEIGがデックに含まれていない場合、デフォルトの上限は1.0です(固有振動数0.16Hzと等価)。

AMSES実行時の特異節点のGRID ID番号のリストは、..amses_singularity.cmfファイルに出力されます。

CMS縮退についてのAMSES

PARAM,AMSE4CMSは、AMSES固有値ソルバーを使用してCMSスーパーエレメントを作成する代替方法を制御します。従来のアプローチとは異なり、この定式は静的モードと動的モードをそれぞれ線形スパースソルバーと固有値ソルバーを使用して別々に計算しません。静的モードと動的モードを組み合わせ、物理的なモデル空間をCMS空間に投影することで、スーパーエレメントを効果的に作成できます。この投影は、追加の計算コストを最小限に抑えて材料減衰および流体-構造インターフェースマトリックスにも適用されます。これは、計算量の多いプロセスとして固有値ソルバー外で投影が行われる従来のアプローチとは対照的です。

この代替メソッドは、特に効果的で、モデル内に多くのASET自由度がある(数千のASETなど)従来のアプローチに比べ、大幅な高速化が達成される可能性があります。

これは、マルチボディダイナミクスでのNVHアプリケーション(CMSMETHバルクエントリのMETHOD=CBN)と弾性体生成(METHOD=CB)の両方に対するCraig-Bampton形式でのCMSスーパーエレメントの作成でのみサポートされます。

強制運動解析についてのAMSES

PARAM,AMSE4EFM,YESは、モード法による周波数応答解析および過渡応答解析用のノーマルモードソリューションと共に、AMSESで強制運動について静解析を可能にします。詳細については、PARAM, AMSE4EFMをご参照ください。

レジデュアルベクトル計算

AMSES 固有値ソルバーが用いられた場合、以下のそれぞれに対するレジデュアルベクトルが計算されます。
  • USET U6データ
  • 周波数応答動的荷重
  • 過渡応答動的荷重
  • CBUSHからの減衰自由度、CDAMPiまたはCVISC データ

USET U6自由度、各DAREA自由度、CBUSHCDAMPiおよびCVISCデータに関連した各減衰自由度について1つのレジデュアルベクトルが計算されます。

レジデュアルベクトル計算は解のコントロールデータRESVECで制御されます。AMSESでのレジデュアル計算のコントロールには次のコマンドを用いる事ができます:
  • RESVEC=NOで、AMSESでのレジデュアルベクトル計算をオフにします。
  • RESVEC(NODAMP)=YESで、ダンピング自由度ありでのレジデュアルベクトル計算をオフにします。
  • 大きなRBE3の中心に荷重がある場合、それぞれの独立自由度に対する項を含むレジデュアルベクトルが生成されます。この数が大きい(500を超える)場合、AMSESの実行時間は急激に増加します。大きな荷重を受けるRBE3では、RBE3 UMデータを用いて中央のGRIDを独立にします。

Lanczos

OptiStruct LanczosではベースBCSアルゴリズムを使用します。Lanczosは、堅牢なShift選択戦略とブロックLanczosアルゴリズムを組み合わせたshift-invert Lanczos法の業界が認めたインプリメンテーションです。

Shift-invert法は、スペクトル範囲内の正確な固有値の数が高速な収束率で抽出されることを保証します。Lanczosは、振動解析または座屈解析で固有値および固有ベクトルを取得するための正確な手法です。対象となるモードが数十程度の場合にも使用することをお勧めします。Lanczos固有値解析をアクティブにするには、EIGRLバルクデータエントリを使用します。

AMLS(自動マルチレベルサブストラクチャリング)

大規模な固有値問題には、内部OptiStructLanczos固有値ソルバーに代わって、テキサス大学により開発されたAMLS(Automatic Multilevel Substructuring)固有値ソルバーを使用することができます。

AMLS固有値ソルバーはOptiStructとは別個のプログラムであり、別々にインストールおよびライセンス設定を行う必要があります。AMLS入力ファイルの書き出しとAMLSの起動を行うOptiStructのAMLSインターフェースは、AMLSの実行が完了すると、AMLS結果をOptiStructに読み戻します。結果の固有値および固有ベクトルは、固有値解析、モード法による周波数応答解析および過渡解析用にOptiStructで使用されます。また、AMLSソルバーは、トポロジーおよび寸法最適化においても使用できます。

OptiStructでは、AMLSバージョン3.2.0128以降のみがサポートされています。AMLSバージョン5以降を使用するには、OptiStructバージョン13.0以降を使用する必要があります。AMLSを使用するには、以下の定義を行う必要があります:
  1. ユーザーは、AMLS実行ファイルを指すよう環境変数AMLS_EXEを設定する必要があります。

    UnixおよびLinuxプラットフォームでは、OptiStructの起動に使用されるスクリプト(~altair/scripts/invoke/optistruct)に、AMLS_EXEが定義できる“プレースホルダー”が含まれます(AMLS_EXEで検索可能)。起動スクリプトに含まれる定義は、起動時に既存のAMLS_EXE環境変数が存在しない場合にのみ使用されます。

    例: setenv AMLS_EXE /share/ams/cdhopt/2005/AIX-5.3/3.2.r159_exe/amls.main_AIX.5

  2. OptiStruct入力ファイル内で、PARAM, AMLSYESに設定する必要があります。実行オプション–amlsを使用してAMLSをアクティブ化することもできます。

    AMLSはマルチスレッドのアプリケーションであり、1つ、2つ、または4つのプロセッサを使用できます。PARAM,AMLSNCPUOptiStruct入力ファイル内で定義し、これによりAMLSで使用するプロセッサの数を指定できます。PARAM, AMLSNCPUがセットされない場合、AMLS固有値ソルバーは1S CPUのみ用います。PARAM,AMLSNCPUを定義すると、OptiStructとAMLSで異なる数のプロセッサを使用できます。

AMLSに影響するパラメータ

AMLSでは精度と計算コストを主に3つのパラメータでコントロールします。これらのパラメータの典型的なNVH解析に対する“最適な” 値は多くのテストを通して確立されてきました。そのパラメータと値は:
PARAM,SS2GCR,5.0
PARAM,GMAR,1.1
PARAM,GMAR1,1.7
エンジンブロックのようにソリッドモデルが支配的な場合、SS2GCR10.0に、そしてGMAR12.1に設定すべきです。車体のような典型的なシェルモデルでは、パラメータの2つを次のように設定することにより経過時間の大幅な増加無しにFRF精度の若干の改善が得られます:
PARAM,SS2GCR,7.5
PARAM,GMAR1,2.1

しかしながら、精度の改良が必要なリソースの増加に見合うと分かっている場合でない限り、これらの値を調節することは推奨しません。

剛体モードに伴う固有値のデフォルトの上限値には1.0(固有振動数でおよそ0.16Hzに相当)が取られます。このパラメータはパラメータRBMEIGで調節でき、次のコマンドで設定できます:
PARAM,RBMEIG,0.2

AMLSは数値的な条件を改善するため剛体モードと弾性モードを区別し、これによって計算される弾性固有値の精度が上がります。

特異性の処理のコントロールはPARAM, AMLSMAXRを用いて実行されます。剛性マトリックスの因数分解のプロセスでAMLSMAXRを超えた場合、これはKでの特異性を示しています。この自由度の質量がゼロの場合、“無質量機構”が存在し、SPCが適用されて.outファイルにメッセージが書き込まれます。質量がある場合にはこのメカニズムは剛体モードとして取り扱われ、メッセージが.outファイルに書かれます。

デフォルトでは、AMLSは離れた構造は扱いません。離れた構造を扱うための解決策には、次の2つがあります:
  • PARAM, AMLSUCONYESに設定され、離れた節点の合計数が4000個より少ない場合、離れたコンポーネントにSPCがOptiStructにより適用されます。これは、AMLSのすべてのバージョンで機能します。
  • PARAM, DISJOINTが、少なくとも離れたパートの数より大きい値に設定されると、AMLSは固有値計算の問題を解決できるようになります。この機能は、AMLSバージョン4.2r22以降で利用可能です。

MLSバージョン5以降では、実行オプション–amlsmem、環境変数AMLS_MEM、またはパラメータPARAM,AMLSMEMを使用することで、AMLSで使用されるメモリ量(GB単位)を設定できます。デフォルトでは、AMLSは、OptiStructで使用されるのと同じメモリ量を使用します。実行オプションは、環境変数およびパラメーターによって設定された値より優先されます。AMLS_MEMおよびPARAM,AMLSMEMの両方が設定された場合は、環境変数で指定された値が使用されます。許容される最小メモリ値は1 GBで、1 GBより小さい値が指定されていると、自動的に1 GBにリセットされます。

レジデュアルベクトル計算

AMLS固有値ソルバーが使用される際、OptiStructのレジデュアルベクトル計算は無視されます。AMLS固有値ソルバーは、下記のそれぞれについて固有のレジデュアルベクトルを計算します:
  • USET U6データ
  • 周波数応答動的荷重
  • 過渡応答動的荷重
  • CBUSHからの減衰自由度、CDAMPiまたはCVISC データ

USET U6自由度、各DAREA自由度、CBUSHCDAMPiおよびCVISCデータに関連した各減衰自由度について1つのレジデュアルベクトルが計算されます。

レジデュアルベクトル計算は解のコントロールデータRESVECで制御されます。AMLSでのレジデュアル計算のコントロールには次のコマンドを用います:
  • RESVEC=NOで、AMLSでのレジデュアルベクトル計算をオフにします。
  • RESVEC(NODAMP)=YESで、ダンピング自由度ありでのレジデュアルベクトル計算をオフにします。

特異性

AMLSがモデルに多くの特異性を検知した場合、多くは薄い CQUAD4/CTRIA3要素がソリッドモデルの “表皮” として用いられている事によるものです。これらの特異性は数値的な条件悪化と計算時間の増加を引き起こします。この特異性は薄いシェル要素の非常に低い曲げ剛性により引き起こされます。この特異性を除去するためには、関連するPSHELLデータからMID2MID3MIDの材料IDを削除することにより薄い曲げ要素から膜のみの要素に変換します。薄い膜要素はなお表面剛性を正確に計算しますが、曲げ剛性が無い要素として特異性はなくなります。

PARAM, AMLSMAXRは、剛性マトリックス内の特異性を判断するために使用されます。

剛性マトリックスの因数分解のプロセスでAMLSMAXRの値を超えた場合、これはKでの特異性を示しています。この自由度の質量がゼロの場合、“無質量メカニズム”が存在し、SPCが適用されて.outファイルにメッセージが書き込まれます。質量がある場合にはこのメカニズムは剛体モードとして取り扱われ、メッセージが.outファイルに書かれます。

AMLS実行時の特異節点のGRID ID番号のリストは、.amls_singularity.cmfファイルに出力されます。

リモートファイルシステム

実行ディレクトリがリモートファイルシステムの場合、 スクラッチファイルが NFS マウントされたファイルシステムにアクセスしなければならないため、計算時間が長時間に及ぶ傾向があります。環境変数TMPDIR を用いてスクラッチディレクトリをローカルマシンに再定義してください。
注: 註:環境変数TMPDIR は、コマンドラインの引数–tmpdir およびTMPDIR入出力オプションエントリで指定されるスクラッチファイルディレクトリとは異なります。

入力ファイルとAMLSからの出力ファイル(generic_real_filegeneric_integer_filegeneric_amls_output)は環境変数AMLSDIRで指定されたディレクトリに保存されます。環境変数AMLSDIRは環境変数TMPDIRと同じディレクトリにします。

制限事項

  1. AMLSは、大規模な問題用として設計されています。自由度が数百以下での問題は、AMLSで解くことはできません。
  2. モデルは1つの構造のみで構成されていなくてはなりません。結合されていない部品のモデルは、AMLSで解くことはできません。CMSスーパーエレメントの生成にCBN法がCMSMETHデータで用いられている時、RBE2の中央の節点がASETの節点の中にある場合、結合されていないモデルが生成される事があります。非結合パートが見つかった場合、filename.unconnected.cmfという名のファイルが生成されます。このファイルはHyperMeshで結合されていないパートの表示に用いることができます。パートが小さい場合、PARAM, AMLSUCON,1を用いて、結合されていない構造をSPC拘束することができ、AMLSを正常に実行できるようになります。結合されていないパートが大きい場合は、以下のいずれかを実行します:
    • RBE2のスパイダー状の節点の1つを削除して構造を結合状態にする。
    • 小さなCBARCBEAMまたはCRODを用いて2つの構造を結合する。

FASTFR

モーダル法による周波数応答解析の代替である、より高速なモーダル解法。

これは適用可能な範囲においてデフォルトでアクティブになります。FASTFRが使用できない場合は、標準の手法がアクティブになります。PARAM,FASTFRを使用して、この高速手法のアクティブ化を制御できます。FASTFRは、一般的に、モード数の多い(5000より多い)、あるいは荷重周波数の多いモーダル法による周波数応答実行に対して高速となります。
注:
  1. 共有メモリ並列化(SMP)がプロセッサ数指定–nproc実行オプションを用いて要求された場合は、この高速手法が速度を上げて実行されます。
  2. PARAM, K4METHはこの高速手法の速度に影響を与えます。PARAM, K4METHにはデフォルトの設定を使用することを推奨します。
  3. FASTFRは、区分動的合成ソリューションでサポートされています。

制限事項

次の場合、モーダル法による周波数応答解析でこの高速モーダル解法は使用できません(標準の解法を使用してモデルを実行します)。
  1. Single Program, Multiple Data (SPMD)並列化(MPIベースの実行)が要求されている。
  2. モーダルFRFサブケースは、材料減衰のほか、SDAMPINGから成る。
  3. モデルには、多孔質弾性材料、周波数依存材料(MATFi)、周波数依存ブッシュ(PBUSHTを介す)、または周波数依存減衰(CAABSF/PAABSFを介す)が含まれる。
  4. MODESELECTオプションエントリを介したモード選択、PARAMLFREQPARAMHFREQPARAMLFREQFL、およびPARAM,HFREQFLはアクティブ。
  5. ローターダイナミクスソリューションはアクティブ。

FastFRS(高速周波数応答ソルバー)

オースチンのテキサス大学で開発されたソルバー。これは、NVH問題のような、大規模周波数応答問題に対して非常に有効です。OptiStructにはFastFRSに対するインターフェースがあります。

OptiStructFastFRSの入力ファイルとしてFastFRS_gen.inを書き出し、結果をFastFRS_gen.outから読み取ります。FastFRSは、環境変数AMLSDIRで指定されたディレクトリで実行されます。 AMLSDIRが指定されていない場合は現在のディレクトリで実行されます。FastFRSは、AMLSDIRで指定されたディレクトリで入力ファイルおよび出力ファイルを探します。

OptiStruct内でFastFRSソルバーを制御するため、以下のパラメータを用いることができます。
  1. 環境変数FASTFRS_EXEの設定で、FastFRS実行モジュールの場所を指定します。
  2. 実行オプション–ffrs yesまたはパラメータPARAM,FFRS,YESを使用することで、FastFRSをアクティブ化できます。
  3. 以下のオプションのパラメータでFastFRS実行のための設定を調節します。
    PARAM,FFRSLFRQ
    PARAM, K4METH (see Notes 4 through 7)
    PARAM,LOWRANK (This parameter is obsolete. Use PARAM, K4METH, see Notes 4 through 7.)
    PARAM,K4CUTOFF
    PARAM,CSTOL
    PARAM,FFRSNCPU (or the run option –ffrsncpu)
    PARAM,FFRSMEM (or the run option –ffrsmem or the environment variable FFRS_MEM)
注:
  1. FastFRSバージョン2以上を実行するには、OptiStructバージョン13.0以上が必要です。
  2. FFRSNCPUが設定されておらず(パラメータまたは実行オプションのどちらかの使用による設定)、AMLSNCPUが設定されている場合、FastFRSは、AMLSNCPUで指定されたCPUの数を使用します。
  3. FastFRSバージョン2以降では、実行オプション–ffrsmem、環境変数FFRS_MEM、またはパラメータPARAM,FFRSMEMを使用することで、FastFRSで使用されるメモリ量(GB単位)を設定できます。デフォルトでは、FastFRSは、OptiStructで使用されるのと同じメモリ量を使用します。実行オプションは、環境変数およびパラメーターより優先されます。FFRS_MEMおよびPARAM, FFRSMEMの両方が設定された場合は、環境変数で指定された値が使用されます。許容される最小メモリ値は1 GBで、1 GBより小さい値が指定されていると、自動的に1 GBにリセットされます。
  4. LOWRANKの値が0の場合、FastFRSは対角剛性と構造減衰データブロックで見られたデータを用いて完全な固有値解を計算します。
    LOWRANKの値が-1の場合、構造減衰で見られたマトリックスの低いランク表現が用いられます。このオプションの特別なケースでは、音場の流体がモデルに存在し、流体質量マトリックス、流体剛性マトリックスと流体減衰マトリックスデータブロックに見られたマトリックスが全て対角マトリックスである時に起こります。FastFRSはこの特別なケースで、LOWRANK1に設定され、構造減衰データブロックと流体マトリックスが低いランク表現とする事で有利となります。最適化問題では質量と剛性マトリックスはフルマトリックスで、低いランク表現は用いる事ができません。
    • K4METHLOWRANKがどちらも指定されていない場合、LOWRANKは材料減衰マトリックスと流体モードの数に基づいて決定されます。
    • LOWRANKは指定されているがK4METHは指定されていない場合は、LOWRANKの値が使用されます。
    • K4METHが指定されている場合は、LOWRANKK4METHに従って設定されます。
  5. FASTFRは、区分動的合成ソリューションでサポートされています。
重要: 次の場合、モーダル法による周波数応答解析でこの高速周波数応答ソルバーは使用できません(標準の解法を使用してモデルを実行します)。
  1. 粘性減衰の自由度の数はモード数より大きい。
  2. モデルには、多孔質弾性材料、周波数依存材料(MATFi)、周波数依存ブッシュ(PBUSHTを介す)、または周波数依存減衰(CAABSF/PAABSFを介す)が含まれる。
  3. MODESELECTオプションエントリを介したモード選択、PARAMLFREQPARAMHFREQPARAMLFREQFL、およびPARAM,HFREQFLはアクティブ。
  4. 区分動的合成法(CDSMETH)が使用される。
  5. ローターダイナミクスソリューションはアクティブ。