周波数応答解析

定常状態の振動荷重に対する構造の応答を計算します。

一般的な用途は、自動車、回転機械、トランスミッション、パワートレインシステムから発生する騒音振動(NVH)の解析です。

周波数応答解析を使用して、静的な周波数領域における構造の応答を計算します(実際には時刻歴解析となります)。荷重は正弦波荷重を使用します。単純なケースは、特定の周波数における所定の振幅の荷重の場合です。応答は同一の周波数で計算されますが、減衰によって位相のずれが発生します(図 1)。

荷重としては、力、変位、速度および加速度が使用できます。これらは、加振周波数 Ω に依存します。

周波数応答解析の結果は変位、速度、加速度、力、応力、およびひずみが計算されます。通常、応答は複素数であり、絶対値および位相角として、または実数および虚数として算出されます。

OptiStructは直接法およびモーダル法による周波数応答解析をサポートしています。


図 1. 周波数応答解析の荷重と応答

直接法による周波数応答解析

直接法による周波数応答解析を使用すると、一連の複素行列の方程式を解くことで、離散的な励振周波数 Ω に対する構造の応答を直接計算できます。

計算されるべきモーションセットの基本式は次のとおりです:(1) M u ¨ + C u ˙ + K u = f e i Ω t
ここで、
M
は質量マトリックス
C
は減衰マトリックス
K
は剛性マトリックス
u
は変位ベクトル
f
は荷重ベクトル
Ω は荷重が適用される角振動数。適用された調和励振が調和応答を生成すると仮定できます。変位ベクトルは、次のように表されます:(2) u = d e i Ω t
仮定された調和変位応答を最初の式に代入し、減衰マトリックス C を書き換えると、次のようになります。(3) [ K - Ω 2 M + i G K + i C G E + i Ω C 1 ] d e i Ω t = f e i Ω t
システム内の減衰を定義するには、いくつかの方法があります。
  1. 一定の構造減衰係数 G を使用する方法。
  2. 材料特性で定義した減衰係数 G E 、ブッシュおよびスプリング要素の特性定義の G E を使用し、構造要素減衰が定義されます。これらはマトリックス C GE を形成します。
  3. ダンパー要素によって粘性減衰が生成されます。これらはマトリックス C 1 を形成します。

運動方程式は、複素代数を使用して直接解析されます。

直接法による周波数応答解析の実行

荷重および境界条件は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報セクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASESPCステートメントおよびDLOADステートメントを使用します。

OptiStructは、直接法による周波数応答解析の慣性リリーフをサポートしていません。これを試みると、エラーが出されます。

周波数セットは、FREQUENCYステートメントを使用して参照する必要があります。

さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、一定の構造減衰 G を適用することもできます。これにはPARAM,Gを使用します。

モーダル法による周波数応答解析

モーダル法では、まずノーマルモード解析を実行し、システムの固有値 λ i およびこれに対応するシステムの固有ベクトル A を取得します。

応答は、固有ベクトル A とモーダル応答 d のスカラー積として表わせます。(4) u = A d e i Ω t
次に、固有ベクトルを使用して、減衰のない運動方程式をモーダル座標に変換します。(5) [ - Ω 2 A T MA+ A T KA ]d e iΩt = A T f e iΩt MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aqatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVCI8FfYJH8YrFfeuY=Hhbbf9v8qqaqFr0xc9pk0xbb a9q8WqFfeaY=biLkVcLq=JHqpepeea0=as0Fb9pgeaYRXxe9vr0=vr 0=vqpWqaaeaabiGaciaacaqabeaadaqaaqaaaOqaamaadmaabaacba Gaa8xlaiabgM6axnaaCaaaleqabaGaaGOmaaaakiaahgeadaahaaqa bSqaaiaa=rfaaaGccaWHnbGaaCyqaiaa=TcacaWHbbWaaWbaaeqale aacaWFubaaaOGaaC4saiaahgeaaiaawUfacaGLDbaacaWHKbGaamyz amaaCaaabeqaaiaadMgacqGHPoWvieGacaGF0baaaiaa=1dacaWHbb WaaWbaaeqaleaacaqGubaaaOGaaCOzaiaadwgadaahaaqabeaacaGF PbGaeyyQdCLaa4hDaaaaaaa@501F@

モード質量マトリックス A T M A とモード剛性マトリックス A T K A は、対角マトリックスです。固有ベクトルが質量マトリックスを基準に正規化されている場合、モーダル質量マトリックスは単位マトリックス、モーダル剛性マトリックスはシステムの固有値を保持する対角マトリックスです。これによってシステム方程式は、 d の各コンポーネントについての一連の非連成の方程式に単純化されるので、容易に解析できます。

直接法のところで述べたとおり、減衰を考慮した結果は次のようになります:(6) [ A T KA- Ω 2 A T MA+iG A T KA+i A T C GE A+iΩ A T C 1 A ]d e iΩt = X T f e iΩt MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaaca WHbbWaaWbaaeqaleaacaqGubaaaOGaaC4saiaahgeaieaacaWFTaGa eyyQdC1aaWbaaSqabeaacaqGYaaaaOGaaCyqamaaCaaabeWcbaGaae ivaaaakiaah2eacaWHbbGaa83kaiaadMgaieGacaGFhbGaaCyqaSWa aWbaaeqabaGaaeivaaaakiaahUeacaWHbbacbeGaa03kaiaadMgaca WHbbWcdaahaaqabeaacaqGubaaaOGaaC4qamaaBaaaleaacaqGhbGa aeyraaGcbeaacaWHbbGaa83kaiaadMgacqGHPoWvcaWHbbWcdaahaa qabeaacaqGubaaaOGaaC4qaSWaaSbaaeaacaqGXaaabeaakiaahgea aiaawUfacaGLDbaacaWHKbGaamyzaSWaaWbaaeqabaGaamyAaiabgM 6axjaa+rhaaaGccqGH9aqpcaWHybWcdaahaaqabeaacaqGubaaaOGa aCOzaiaadwgalmaaCaaabeqaaiaadMgacqGHPoWvcaGF0baaaaaa@642E@

したがって、マトリックス A T C G E A A T C 1 A MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaaCyqaSWaaW baaeqabaGaaeivaaaakiaahoealmaaBaaabaacbaGaa8xmaaqabaGc caWHbbaaaa@3A55@ は、一般には対角マトリックスとはなりません。この結果、連成問題は、直接法によって解析されるシステムと似たものになりますが、自由度ははるかに小さくなります。これは、直接法を使用して解析できます。

運動方程式の評価は、方程式の非連成が維持されている場合は、より高速になります。非連成は、各モードに個別に減衰を適用する場合に維持できます。これには、減衰値 g i と固有振動数 f i f r e q の関係を示す減衰テーブルTABDMP1を使用します。このアプローチが使用される場合、構造要素と粘性減衰は定義できません。

非連成方程式は:(7) [ Ω 2 m i + i Ω c i + k i ] d i e i Ω t = f i e i Ω t
ここで、
ζ i = c i / ( 2 m i ω i )
モード減衰比
ω i 2
モード固有値
3つのタイプのモーダル減衰値 g i ( f i f r e q ) が定義できます:
G
構造減衰
C R I T
臨界減衰
Q
品質係数
これらは、次の3つの式で関連付けられます:(8) ζ i = c i / c c r = g i / 2 (9) c c r = 2 m i ω i (10) Q i = 1 / 2 ζ i = 1 / g i
PARAM, KDAMP, -1が使用されている場合、モード減衰は構造減衰として複素剛性マトリックスに入力されます。したがって、非連成の方程式は次のようになります:(11) [ Ω 2 m i + ( 1 + i g ( Ω ) ) k i ] d i e i Ω t = f i e i Ω t

モーダル法では、ノーマルモード解析を制御するためにMETHODステートメントが必要です。そのMETHODステートメントはEIGRLまたはEIGRAバルクデータエントリのどちらかを参照します。

剰余ベクトル生成(精度の向上)

モーダル法の精度は、固有ベクトル X のマトリックスへの動的荷重に基づいて静解析の変位ベクトルを追加することによって著しく向上します。これらのベクトルは剰余ベクトルと呼ばれ、この方法はモーダル加速度と呼ばれます。

これらは下記の2とおりの方法で行われます。
  • unit load methodは、動的荷重の自由度における単位ベクトルである静的荷重に基づき、剰余ベクトルを生成します。すなわち、剰余ベクトル生成のための静的荷重は、動的荷重が適用される自由度における単位ベクトルです。剰余ベクトルの数は、適用された自由度の数と等しくなります。一般的に、この方法がより正確であることから、これがデフォルトの方法となっています。
  • applied load methodは、周波数ゼロにおける動的荷重を使用して、最大2つの剰余ベクトルを生成します。動的荷重の実数部分と虚数部分が同じである場合、またはそれらのいずれかがゼロである場合、どちらか一方のみが使用されます。
変位加振の場合、剰余ベクトルは、動的変位加振の自由度と等しい自由度に単位変位をかける静的荷重ケースを解くことによって得られます。


図 2. モーダル法による周波数応答解析(FRA)の結果精度に剰余ベクトルの使用が及ぼす影響の. 正確な直接法の結果との比較

強制運動を使用したモーダル法による周波数応答解析

モーダル法による周波数応答解析に強制運動(SPCD)が使用される場合、解を求める方法は2つあります。
  • 相対的な方法:

    この場合、解析が2段階で進められます。まず、強制運動を使用した静解析が行われ、静的変位が求められます。次に、先に計算された静的変位と固有ベクトルを使用して動的解析が行われます。この方法は、あまり効率的ではありませんが、より正確な解が得られるデフォルトの方法です。

  • 全体的 / 絶対的な方法:

    この場合、解析が1段階で進められ、静的変位の計算が不要です。モード動的荷重の寄与が、SPCDの自由度で適用された変位 / 速度 / 加速度から直接もたらされます。この方法は、静的変位ベクトルの計算が必要ないため、計算効率が高くなります。

これらの方法を使用して計算を制御するには、PARAM, ENFMETHをご参照ください。

モーダル法による周波数応答解析の実行

入力

荷重および境界条件は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報セクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASESPCステートメントおよびDLOADステートメントを使用します。

周波数セットは、FREQUENCYステートメントを使用して参照する必要があります。モーダル法では、ノーマルモード解析を制御するためにMETHODステートメントが必要です。計算結果を保存するために、それより以前に保存された固有ベクトルを、EIGVRETRIEVEサブケースステートメントを使って読み込むことができます。

さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、一定の構造減衰 G を適用することもできます。これにはPARAM, Gを使用します。

モード減衰を適用するには、減衰テーブルTABDMP1SDAMPING参照を使用します。減衰テーブルを適用する方法を定義するには、PARAM,KDAMPを使用します。

直接法およびモーダル法周波数応答解析では、MATiエントリ上の対応するフィールドのTABLEDiエントリを通して、周波数依存材料(MATFiバルクデータエントリ)を使用できます。MATF1MATF2MATF3MATF8MATF9MATF10バルクデータエントリを使用して、現在使用可能な周波数依存材料を定義できます。

PBUSHTエントリ上の対応するフィールドのTABLEDiエントリを通して、周波数応答解析で周波数依存特性(PBUSHTバルクデータエントリ)を使用することもできます。

モーダルFRF解析用のデフォルトソルバー

デフォルトでは、モーダル法による周波数応答解析には、標準の内部ソルバーが使用されます。ただし、一部のモデルのクラスについては、高速なモーダル解法(FASTFR)または高速周波数応答ソルバー(FastFRS)を使用することにより、パフォーマンスの向上が得られる場合があります。

剰余ベクトル

剰余ベクトルはモーダルFRF / 音場 / 過渡解析に関係します。これらは解析の精度を上げるため、デフォルトで計算されます。RESVEC計算はケースコントロール文で制御できます。

RESVEC(APPLOD/UNITLOD,DAMPLOD/NODAMP)=Value

ここで、ValueYesまたはNoのいずれかです。ValueNoの場合、カッコ内のキーワードは無視され、全てのRESVEC計算がオフになります。キーワードAPPLODではモーダルFRF / 音場 / 過渡解析の動的荷重を元にRESVECが生成されます。キーワードUNITLOD動的荷重の自由度への単位荷重を元にRESVECが生成されます。キーワードDAMPLODでは、粘性減衰自由度への単位荷重を元に粘性減衰のRESVECが生成されます。キーワードNODAMPでは粘性減衰のRESVEC生成がOFFになり、ない場合はデフォルトで生成されます。DAMPLODNODAMPがケースコントロール内でオプションであったとしても、それらは、モデル内のすべてのモーダルFRF / 音場 / 過渡サブケースに適用されるグローバルスイッチです。

基本的な固有値がLanczos法で計算されると 、デフォルトのRESVECが作用荷重と粘性減衰の自由度に基づいて生成されます。基本的な固有値解析がAMSESまたはAMLSを用いてなされた場合、デフォルトの RESVECは荷重自由度への単位荷重と粘性減衰自由度に基づいて生成されます。強制変位、速度または加速度が定義されている場合、剰余ベクトルは常に生成されます。加えて、USET U6データがある場合、AMSESまたはAMLS固有値ソルバー使用時には剰余ベクトルが計算されます。USET U6 剰余ベクトルは、Lanczos 固有値ソルバーが用いられている場合には計算されません。

剰余ベクトルが含まれる場合、拘束されていないモデルにデフォルトで慣性リリーフが適用されます。慣性リリーフがRESVECにとって好ましくない場合、PARAM, INREL, 0を用いてOFFにできます。

剰余ベクトルが含まれる場合、FRF / 過渡サブケースの基本的な固有値解析による固有モードが慣性リリーフで使用されます。限界値(FZERO)より下の全ての固有値のモードは慣性リリーフ解析での剛体モードとして用いられます。FZEROより下に固有モードがない場合、 モデル形状に基づいて6までの全体の剛体モードが内部的に生成され慣性リリーフに用いられます。PARAM,FZERO, Valueを用いてFZEROを設定することが可能です。FZEROのデフォルトの値は0.1です。

出力

周波数応答解析の結果は、変位、速度、加速度、力、応力、およびひずみが計算されます。STRESSSTRAINDISPLACEMENTなどの通常の出力エントリを使用して、対応する出力値を要求できます。

DISP(MODAL)を使用すると、モーダルFRF解析 / 過渡応答で固有ベクトルのみを出力することができます。DISP(MODAL,NODAL)を使用すると、固有ベクトルとそれに対応するFRF解析 / 過渡応答の結果を両方出力することができます。

PARAM, ENFMOTN, RELを使用して、指定された強制運動に対する変位、速度、加速度の出力を生成できます。このような場合、応力や力などの後続で計算される出力も、指定された強制運動に対して生成されます。PARAM, ENFMOTN, TOTAL/ABSを使用して、指定された強制モーションを含む合計出力値を生成できます(デフォルトはTOTAL/ABS)。