ノーマルモード解析
ノーマルモード解析は、固有値解析または固有値の抽出とも呼ばれますが、構造物が示す振動形状とそれに伴う振動数を計算するテクニックです。
これらの周波数を知ることは、この周波数での繰り返し荷重を受けた場合、構造物が共振状態に入り壊滅的な破壊に至ることもあるため、重要です。共振状態を引き起こす点に荷重が作用されない事を確認するためにその形状を知ることも重要です。
ノーマルモード解析はモーダル周波数応答解析とモーダル過渡応答解析に対しても必要です。これらの解析では、問題は自由度数が何百万にもなり得る直接のメッシュの座標から、用いるモードの数だけの自由度のモード座標に変換されます。典型的な例では、このケースの上限の周波数は、作用する最も高い周波数または着目する応答周波数の1.5倍程度です。
OptiStructでは、ノーマルモード解析は、Lanczosまたは自動マルチレベルサブストラクチャリング固有値解法(AMSES)の2つのアルゴリズムのいずれかを使用して実行できます。Lanczosでの固有ベクトルの取り出しデータはEIGRLデータで指定され、自動マルチレベルサブストラクチャリング固有値解法にはEIGRAデータが用いられます。
加えて、OptiStructはテキサス大学で開発されたAMLSソフトウェアへのインターフェースを持っています。AMLSは固有値の取り出しに自動マルチレベルサブストラクチャリング法を用います。AMLSの利用はPARAM, AMLSにYESを設定した入力データと共にEIGRLカード(のみ)で起動されます。
Lanczos法
Lanczos法は固有値とそれに伴うモード形状が厳密に計算される長所を持っています。この方法はモードの数が少なく、それぞれのモードの完全な形状が必要な計算に対して効率的です。Lanczos法の短所は、数百万自由度もあるような大規模で数百ものモードを必要とする問題に対して遅いことです。このようなタイプの問題の実行時間はすぐに数日間単位となることがあります。このような場合、AMSESまたはAMLS法が用いられる必要があります。
自動マルチレベルサブストラクチャリング固有値解法(AMSES)
AMSES法は一部の固有ベクトルのみに対し計算が必要な場合に有利です。一部の固有ベクトルのみ計算されるため、ディスクスペースとディスクI/Oを大幅に削減できます。このことで、計算時間を大幅に短くすることができます。典型的なNVH周波数応答解析では、着目する対象はおよそ100自由度位だけです。このよう場合、数百万自由度のメッシュの数千のモードを数時間で解くことが可能です。AMSES法の短所は、その計算が厳密ではない点です。しかしながら、モーダル周波数は数桁も違わない精度です。NVH解析ではまた、モード空間からのモード形状が可能性のある全ての変形パターンをカバーすることは重要ですが、個々のモード形状が正確であることはそれ程重要ではありません。
AMSESの使用法のガイドライン
- 一般的に、AMSESの求解はLanczosよりもずっと高速ですが、結果は近似です。低い方のモードの精度は非常に高いので、AMSESは、モードの数が多く(数百以上)、(周波数応答解析や応答スペクトル解析のように)近似化された固有値で十分なソリューションに適した候補となります。近似ではあるものの、モーダル解析で多くの数のモードの使用はモード空間を包含し、結果の動きはLanczosの結果と非常に近くなります。Lanczosは、少ない数のモードの正確なモード形状が必要とされるソリューションで推奨されます。
- 次のような場合は、AMSESも推奨されます:1)小さい固有値が要求されるが、モデルは百万以上の自由度で構成されている。および / または、2)上限(V2)が指定されているか、EIGRLエントリでモード数(NDND)が50よりも多くなっている。このような場合、Lanczosランの速度はAMSESランよりも遅くなります。
- 最適化実行のために、固有ベクトルの精度が重要な場合は、AMSESによるノーマルモード解析を最初に実行して、次に精度の高い上限と下限でLanczosを実行し、AMSESランの精度を確認することができます。次に、必要な固有ベクトルの許容される精度を達成するために、AMSESの上限を調整できます。これで、この解析のすべての最適化実行にAMSESを使用できます。
- 弾性体の生成や多くの剰余ベクトルが含まれるモーダルソリューションでは、AMSESの求解の方がずっと高速です。
- 非常に多くのRBE3が存在する状況(RBE3が構造の1/4と結合している場合)では、AMSESの使用には注意が必要です。そのようなRBE3は削除したほうがよいでしょう。
- AMSESの求解の速度は、計算対象の固有ベクトルの自由度(DOF)の数値に依存しています。DISP=ALLでは完全な固有ベクトルが計算され、処理速度の向上はそれほど大きく望めません。しかしながら、いくつかの自由度の結果のみが必要な場合(NVH解析が典型例)、AMSESはLanczosよりも最大100倍高速になります。AMSESランの時間を短縮するには、必要なDOFのみの結果を要求することをお奨めします。
- V1、V2、NDがEIGRAエントリに指定されているAMSESランでは、AMSESはNDの値に関係なく、指定されたV2(上限)まですべてのモードを計算します。出力されるのは、要求されたモードのND数です。このため、上限(V2)を同じ値に維持したままNDを少なくしてもAMSESランの時間が大幅に短縮されることはありません。余分なモードの抽出を防ぐには、上限も相応に小さくする必要があります。
- AMSESはモデルの不規則性を確認するのにも役立ちます。AMSESを使用して、無質量機構や特異性に関連付けられる節点のリストを書き出すこともできます。
支配方程式
ノーマルモード解析
- 構造の剛性マトリックス
- 質量マトリックス
この固有値問題の解は、個の固有値 となります。ここで、は自由度の数を表わします。ベクトルは、固有値に対応する固有ベクトルです。
固有値問題はLanczos、 AMSESまたはAMLS法を用いて解かれます。
諸元の入力
ノーマルモード解析を実行するには、抽出するモード数を定義するためにEIGRLまたはEIGRAバルクデータエントリを指定する必要があります。
EIGRLまたはEIGRALカードは、サブケース情報エントリセクションにあるSUBCASE内のMETHODステートメントで参照する必要があります。
SPCステートメントを使用して境界条件を定義する必要はありません。境界条件を適用しない場合は、モデルの各剛体自由度に対してゼロ固有値が計算されます。
ノーマルモード解析と共に剰余ベクトルの計算を要求することが可能です。剰余ベクトルは、外部周波数応答解析で使用される固有ベクトルに正規直交化された静的変位です。この出力を得るには、USETとUSET1を使って自由度を定義する必要があります。定義された自由度は、剰余ベクトルを計算するための単位荷重法での荷重定義に使用されます。Lanczos固有値ソルバーが用いられた場合、ノーマルモードサブケースでRESVEC=YESが定義される必要があります。AMSES または AMLS固有値ソルバーが用いられた場合、USETとUSET1データに関連する剰余ベクトルは常に計算されます。剰余ベクトルを生成するためにはSPCまたは慣性リリーフを用いて定義される境界条件が必ず与えられる必要があります。
サブケース定義
ノーマルモードサブケースはANALYSIS=MODESを設定することにより明示的に指定することもできますが、サブケースに(ANALYSIS入力がない時に)METHODデータセレクターを含むことにより暗黙に選択することもできます。
バルクデータ
- EIGRL
- 計算されるモードとLanczos固有値取り出し手法の解法のパラメータを指定します。
- EIGRA
- 計算されるモードとAMSES固有値取り出し手法の解法のパラメータを指定します。
- PARAM,AMLS,YES
- EIGRLまたはEIGRAデータのモーダルパラメータに基づいた固有値の取り出しに対してAMLSソフトウェアが用いられる事を指定します。
- SPC、SPC1、およびSPCADD
- 加振が作用する基礎と他の拘束を指定します。
- MPCおよびMPCADD
- 多点拘束を指定します。
例:入力
SUBCASE 100
SPC = 5
METHOD = 24
$
BEGIN BULK
$
EIGRL, 24, 0.0, 1000.
ENDDATA
$
出力
最大変位、モーダル応力、エネルギー、および多点拘束力を含む固有値抽出から対象位置での結果が得られます。
これらはI/OオプションのDISPLACEMENT、EKE、ESE、STRESS、GPSTRESSとMPCFORCEでそれぞれ出力要求されます。