応答スペクトル解析

応答スペクトル解析(RSA)は、過渡事象での構造の最大応答を推定するテクニックとして用いられます。最大変位、応力、および力がこの方法で求められます。

このテクニックは、指定された動的荷重の応答スペクトルをノーマルモード解析の結果と結合します。時刻歴の応答は利用できません。

応答スペクトルは、指定された動的荷重に対する1自由度系の共振周波数に対する最大応答として記述されます。それらはそれぞれの構造モードに対する最大モード応答の計算に利用されます。これらのモードの最大値は、絶対値和 (ABS:Absolute Sum) 法、またはCQC(Complete Quadratic Combination)法などの様々な方法を用いて結合され、構造のピーク応答の推定を得ます。

RSAは従来の過渡応答解析に比べて、単純で計算コスト的に安価な近似ピーク応答を得るための方法です。計算負荷の主となるのは、入力の加振と結果の応答の全周波数範囲を表現するのに十分な数のノーマルモードを得ることです。通常、応答スペクトルは設計諸元から得ることができます。これらが与えられると、様々な動的載荷の下でのピーク応答を短い時間で計算することができます。このため、これはビルの地震解析のような分野での設計ツールとして広く用いられます。

支配方程式

ノーマルモード解析

自由振動する構造の釣り合い方程式は、固有値問題として表わせます:(1) ( K λ M ) A = 0
ここで、
K
構造の剛性マトリックス
M
質量マトリックス減衰は無視されます。

この固有値問題の解は、 n 個の固有値 λ i となります。ここで、 n は自由度の数を表わします。ベクトル A は、固有値に対応する固有ベクトルです。

固有値問題はLanczos法またはAMSES法を用いて解かれます。すべての固有値が必要になるわけではなく、通常、一部の低次の固有値のみが計算されます。固有値解析の結果が応答スペクトル解析の基礎となります。

応答スペクトル解析は、ノーマルモード解析とともに1回の実行で解析できます。また、Lanczosソルバーでの固有値解析を固有値と固有ベクトルをEIGVSAVEを用いて保存するために最初に実行して、それらを後で応答スペクトル解析でEIGVRETRIEVEを用いて取り出すこともできます。

モード結合

それぞれのモードは1自由度系のように振舞うことが仮定されます。1自由度系の過渡応答は:(2) u k = i A ik ψ i χ MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaebbnrfifHhDYfgasaacH8srps0l bbf9q8WrFfeuY=Hhbbf9v8qqaqFr0xc9pk0xbba9q8WqFfea0=yr0R Yxir=Jbba9q8aq0=yq=He9q8qqQ8frFve9Fve9Ff0dmeaabaqaciGa caGaaeqabaqaaeaadaaakeaacaWG1bWaaSbaaSqaaiaadUgaaeqaaO Gaeyypa0ZaaabuaeaacaWGbbWaaSbaaSqaaiaadMgacaWGRbaabeaa kiabeI8a5naaBaaaleaacaWGPbaabeaakiabeE8aJbWcbaGaamyAaa qab0GaeyyeIuoaaaa@3F74@
ここで、
A
固有ベクトル
ψ
モード寄与度係数
χ
応答スペクトル
基礎の加速度による荷重に対して、モード寄与度係数は次のように表せます:(3) ψ i = A i T M T
ここで、
A
固有ベクトル
M
質量マトリックス
T
加振による剛体の動き
ABSモード結合では、ピーク応答は次のように推定されます:(4) u k = i | A i k | | ψ i χ |
CQCモード結合では、ピーク応答は次のように推定されます:(5) u k = m n v m ρ m n v n
ここで、
v m
右記のモードに関連付けられているモーダル応答; m
ρ m n
クロスモード係数
モード m n の間のクロスモード係数 ρ m n は、次のように計算されます:(6) ρ m n = 8 ξ m ξ n ( ξ m + r n m ξ n ) r n m 1.5 ( 1 r n m 2 ) 2 + 4 ξ m ξ n r n m ( 1 + r n m 2 ) + 4 ( ξ m 2 + ξ n 2 ) r n m 2
ここで、
r n m = λ n λ m
モードの固有値の比率
ξ m  and  ξ n
2つのモードのモーダル減衰値
SRSSモード結合では、ピーク応答は次のように推定されます:(7) u k = i ( A i k ψ i χ ) 2

SRSS法はABS法ほど安全側ではありません。モードが適切に分離されている際は、より正確です。

NRL法は、ABS法とSRSS法とを組み合わせています。この手法は、ABS法による最大モード応答とSRSS法による残りのモードを加えます。ピーク応答は次のように推算されます:(8) u k =| A ik || ψ i χ |+ ji ( A jk ψ j χ ) 2

荷重方向の結合

動的載荷による異なる方向のピーク応答を推定するためには、それぞれの方向のピーク応答がトータルのピーク応答を得るために結合される必要があります。ALG(代数)とSRSS(二乗和の平方根)などの方法を用いることができます。

諸元の入力

サブケース定義

RSAサブケースはANALYSIS=RSPECを設定することにより明示的に指定することもできますが、サブケースに(ANALYSIS入力がない時に)RSPECデータセレクターを含むことにより暗黙に選択することもできます。

以下のデータセレクターがRSA サブケース定義として認識されます。
METHOD
固有値抽出のバルクデータエントリ定義(EIGRL)を参照します。METHOD(STRUCTURE)のみがサポートされています。この参照は必要です。
RSPEC
結合方法、載荷自由度、入力のスペクトルを指定するRSPECバルクデータエントリを参照します。この参照は必要です。
SDAMPING
モード減衰を指定する減衰テーブルバルクデータエントリ(TABDMP1またはTABDMP2)を参照します。この参照は必要です。
SPC
単点拘束のバルクデータエントリ(SPCADDSPCおよびSPC1)を参照します。RSA解析の場合、これらのエントリは、加振が作用する基礎の自由度です。
MPC
多点拘束バルクデータエントリ(MPCADDまたはMPC)を参照します。

バルクデータ

RSAで特有の意味を持つバルクデータエントリには以下が含まれます:
RSPEC
結合法、載荷自由度、入力スペクトルの参照を指定します。
DTI,SPECSEL
応答スペクトルを定義します。
EIGRL
固有値抽出のパラメータを定義します。
PARAM, LFREQおよびPARAM, HFREQ
モード結合に用いられるモードの範囲を定義します。
TABDMP1
モード減衰を周波数の関数として指定します。
TABDMP2
モード減衰をモードインデックス範囲で指定します。
SPCSPC1、およびSPCADD
加振が作用する基礎と他の拘束を指定します。

例:入力

SUBCASE 100
	RSPEC = 2
	SPC = 5
	SDAMPING = 12
	METHOD = 24
$
BEGIN BULK
$
PARAM, LFREQ, 0.1
PARAM, HFREQ, 1000.
EIGRL, 24, 0.0, 1000.
RSPEC, 2, ABS, CQC, 0.1
, 99, 2.0, 1.0, 0.0, 0.0
DTI, SPECSEL, 99, , A, 2, 0., 3, 0.02,
, 4, 0.04, ENDREC
TABDMP1, 12, …
TABLED1, 2
+,…
TABLED1, 3
+,…
TABLED1, 4
+,…
ENDDATA
$

出力

RSAで興味のある結果には、最大変位、応力、ひずみと力が含まれます。これらはそれぞれI/OオプションエントリDISPLACEMENTSTRESS/ELSTRESSSTRAINFORCE / ELFORCEで要求されます。結果についてサポートされている出力フォーマットの詳細については、OptiStructによる結果出力をご参照ください。

シェル要素については、コーナー応力はH3DPCHおよびOP2ファイルフォーマットで、コーナーひずみはOP2ファイルフォーマットで使用できます。要素出力の場所の詳細については、Reference GuideSTRESSおよびSTRAINをご参照ください。

RSAでそれぞれPBARLPBEAMLを使って定義されたバーおよびビーム要素については、フォンミーゼス応力の出力が.h3dファイルフォーマットで使用できます。