電流の積分

MoMを使用した手順で最後のステップはベクトル電流の加算(積分)です。このステップで、遠方界やインピーダンスなどの具体的な出力パラメータが得られます。

自由空間のグリーン関数

3D空間の任意のポイントにおける電界をMoMで計算するには、自由空間のグリーン関数が不可欠です。式の技術的な詳細に踏み込まなくても、表面電流に作用する積分作用素 の内側にグリーン関数を記述することを理解できます。
(1) { J scat } tan = E inc,tan
極微小の電流要素Jが自由空間のポイントr’にあり、電界Eと磁界Hを放射しているとします。


Figure 1. 自由空間のポイントr’で電界Eと磁界Hを放射している極微小の電流要素。この電流要素によってポイントrに発生する電位はグリーン関数で求めることができます。

グリーン関数(Equation 2)から、空間的なインパルス電流源に対する空間応答が得られます。つまり、ポイントr'にある電流要素(給電源)によってポイントrまたは3D空間の任意のポイントに発生する電位をグリーン関数で求めることができます。

(2) G( r,r' )= e jβ| rr' | | rr' |
ここで、
(3) | rr' |= ( xx' ) 2 + ( yy' ) 2 + ( zz' ) 2
で、給電源からフィールド点までの距離です。任意のPECボディ上のように空間に複数の給電源が分布している場合は、すべての給電源の加算(すべての給電源にわたる積分)によってポイントrにおける応答が得られます。1

1 Computational Electromagnetics for RF and Microwave Engineering, Second Edition, David B. Davidson, p.265