基底関数

基底関数は、メッシュ要素上にある未知数量のモデル化に使用する基本的な関数です。

基底関数の分類

基底関数には主に次の2種類があります:
  • 領域全体の基底関数
  • サブ領域(サブセクション)基底関数

領域全体の基底関数は、散乱体のサーフェス全体に対して定義する関数です。領域全体で、その関数値はゼロ以外になります。散乱体が規則的な形状であれば、このような関数の形成は容易です。現実のほとんどの用途では、散乱体の形状が不規則であることから、これらの基底関数の形成はほとんど不可能です。このことから、サブ領域基底関数の使用が必要になります。

サブ領域基底関数を使用する場合は、散乱体のサーフェス全体が複数の小さいサーフェスに分割されます。分割されたサーフェスごとに、簡潔な関数を使用して未知の数量(電荷や電流など)を表現します。サブ領域基底関数の値は、領域全体の小部分でのみゼロ以外となります。
Note: FEMVEPでは、ボリュームを分割し、得られたボリューム要素ごとに簡潔な関数を使用して界を表現します。

サブ領域基底関数のタイプ

基底関数の各タイプは、その空間的相違に基づいて区別します。よく知られているタイプを以下にいくつか挙げます:
  • 定数(パルス状または階段状)
  • 線形
  • 多項式
  • 区分正弦波

Rao-Wilton-Glisson(RWG)要素

FekoMoMは三角形メッシュで構成されています。サーフェスの近似では、矩形パッチなどよりも三角形メッシュの方が優れています。Fekoでは、1982年にRao、Wilton、Glissonによって提唱された線形ルーフトップ基底関数を使用しています。1これらの基底関数では、三角形ペアの共通エッジで電流の連続性が強制的に成立します。


Figure 1. RWG基底関数でモデル化して、共通のエッジを流れる電流を表示した三角形ペア。

Figure 1では、2つの三角形のみが共通のエッジを持つ様子を示しています。それぞれの三角形には、共通エッジ以外のエッジが2つずつあります。これらのエッジを別の三角形と結合するには、別の基底関数が必要になります。したがって、三角形の3辺すべてを他の三角形に結合する場合は、合計で3つの基底関数を定義します。三角形要素の中を流れる総電流は、これら3つの基底関数の合計になります。

Figure 5では、ワイヤセグメントを使用して、八木-宇田アンテナをモデル化しています。三角形ペアと同様に、セグメントペア間の頂点で線形ルーフトップ基底関数を使用しています。


Figure 2. ワイヤ頂点を流れる電流をモデル化するワイヤの線形ルーフトップ基底関数。
1 S.M.Rao, D.R.Wilton and A.W.Glisson."Electromagnetic scattering by surfaces of arbitrary shape," IEEE Trans.Antennas Propagation, 30, 409-418, May 1982.