線形定常熱伝導解析
熱伝導解析では温度荷重の下での未知の温度と熱流束を解きます。
温度は利用可能な熱エネルギーの量を表し、流束は熱エネルギーの流れを表しています。
伝導は分子の運動による熱エネルギーの交換を扱います。自由伝達は固体と周囲の流体との間の熱エネルギー交換を扱います。温度荷重は系の外と中へのエネルギーの流れとして定義されます。
- 熱伝導マトリックス
- 自由伝達による境界伝達マトリックス
- 未知の節点温度
- 温度荷重ベクトル
- QBDY1カードで指定される境界での熱流束によるパワー
- CONVまたはCONVGエントリで指定される伝達による境界伝達ベクトル
- QVOLカードで指定される内部熱生成によるパワーのベクトル
- 材料の熱伝導率
熱伝導 | 構造 | |
---|---|---|
未知量 | 温度 | 変位 |
温度勾配 | ひずみ | |
流束 | 応力 | |
伝導マトリックス | 剛性マトリックス | |
境界伝達マトリックス | 弾性基礎剛性マトリックス | |
温度荷重ベクトル | 荷重ベクトル | |
要素体積 | 重力 |
温度荷重および境界条件は、入力ファイルのバルクデータセクションで定義します。これらはSUBCASEのSPCまたはMPCとLOADステートメントを用いて、サブケース情報エントリセクション内で参照される必要があります。
強制対流は、Darcy Flow 解析による線形定常熱伝達とCAFLUIDによる1D強制対流解析で利用可能です。
熱構造解析の入力データ
温度の節点の指定にはGRIDとSPOINTの両方を用いることができます。
固定温度は,SPC、SPC1およびSPCDデータを用いて成分IDをブランク、またはゼロで指定します。MPCデータを用いて異なる点の温度の間の関係式を成分IDをブランク、またはゼロで指定することができます。成分ID 1を用いたい場合には、入力ファイルでSPSYNTAX=mixedを指定する必要があります。熱伝導問題において、剛体要素は無視されます。
熱を発生する要素はQVOLデータにリストアップされます。要素に発生する熱量は右記に等しく; element volume * QVOL * HGENHGENはスケールファクター(デフォルト=1.0)で材料(MAT4またはMAT5)データで記載されます。
熱流束荷重QBDY1と熱伝達CONVはCHBDYEカードで指定されたサーフェスを通して構造に作用されます。CHBDYE要素は伝達要素での熱交換サーフェスを伴います。1次元要素はその端部と長さに沿って熱流束を作用させることができます。2次元要素はその表面とエッジ熱流束を持つことができます。3次元要素はその任意の面に熱流束を持つことができます。
固定値の熱流束はQBDY1カードを用いて指定されます。このデータはCHBDYE要素IDと熱流束値(Q0)がリストアップされます。CHBDYE要素を通して交換されるパワーはQ0にCHBDYE要素の有効面積をかけたものに等しくなります。1次元要素では、端部の面積は要素の断面積です。1次元要素の側部への流束において、その有効面積は、断面が円形であるという仮定の元に断面積から計算された要素の周囲の長さをかけたものです。2次元要素では、要素表面の有効面積はその面積で、側面の有効面積はその側面の長さに要素の板厚をかけたものです。2次元要素では有効面積はその面の面積です。
CHBDYE要素に対する自由熱伝達の流束は、CHBDYE要素ID、雰囲気温度(TAMB)と、MAT4材料IDを記したPCONVを記したCONVデータを用いて指定されます。MAT4データには伝導係数Hが含まれます。単位面積当たりの熱伝達の流束はH*(T-TAMB)です。ここで、は節点温度です。CONVGバルク/サブケースの組み合わせで、自由対流の自動定義を有効にすることができます。
- シェル要素は、熱伝導解析における膜とみなされます。複合材プロパティは均質化されます(節点ごとに1自由度)。シェル要素の板厚を通した温度分布は計算されません。節点温度のみが決定されます。
- 複合プレートまたはシェル要素の流束は、要素全体の均質化された伝導係数で計算されます。
熱解析結果
線形定常熱伝動解析の結果は通常、要素内の節点温度(THERMALエントリ)、温度勾配および熱流束(FLUXエントリ)から成ります。
SPC節点におけるパワー(SPCFORCEエントリ)も計算されます。これは、システム内外で流れるパワーの尺度です。
温度-構造連成解析と最適化
Eそれぞれの熱伝導SUBCASEは温度セットを定義します。これは構造SUBCASEのTEMP(LOAD)によって参照され、温度-構造解析を実行することができます。
温度セットIDはデフォルトで熱伝導SUBCASE IDと同じになります。これはTSTRUカードを用いて変更できます。温度セットIDがバルクデータ温度セットと同じ場合、熱伝導解析からの温度がバルクデータの温度に優先します。
ここで、は全体剛性マトリックス、は未知の変位ベクトル、は温度荷重、は力、圧力等のような構造荷重です。変位ベクトルは線形方程式ソルバーで解かれます。
温度-構造連成最適化では、設計変更による感度が計算されます。変位、応力、質量などの通常の応答の他に、温度も最適化の応答とすることができます。
温度-構造解析の連成は連続しているため、温度解析が後続の構造解析に影響します。一方、温度-構造連成最適化では、構造に対する温度の影響と温度に対する構造の影響の両方向に連成が作用します。別の言い方をすると、最適化が制約条件を満足する様に構造設計を変更し、そしてそれが温度解析に影響を与えます。
温度応答は寸法、形状、トポグラフィ、トポロジー最適化でサポートされていますが、CHBDYE要素はトポロジー最適化の設計領域に用いることはできません。