熱伝導解析
熱伝導は、熱平衡に達するまでの、高温領域から低温領域への熱エネルギーの流れの物理現象を説明します。
- 伝導
- 対流
- 放射
熱は、通常、この3つの手段の組み合わせで伝達され、単一の形態で発生することは稀です。
定常熱伝導は、熱伝導を引き起こす温度差が一定のために、熱平衡に達すると、温度場がそれ以上変化しなくなる熱の流れの形態です。
過渡熱伝導は一定期間内で発生し、温度が新しい熱平衡状態になるまで時間変化します。平衡後は、系への熱流入が熱流出と等しくなり、温度は変化しなくなります。
伝導
伝導は、パート内またはパート間で熱接触を通して熱を伝達する手段です。
例えば、熱は、熱せられたなべの本体からそれに取り付けられた取っ手に伝導されます。
OptiStructでは、等方性(MAT4)と異方性(MAT5)の熱伝導率がサポートされます。非線形熱伝導解析では、温度依存の熱伝導率と熱容量(MATT4)も利用できます。定常熱伝導と過渡熱伝導の両方がサポートされます。
- 単位時間あたりに伝達される熱。
- 熱伝導マトリックス。
- 温度勾配。
- モデリング:
- 接触インターフェースを横切る伝導:
熱は、接触インターフェースを横切って伝播します。接触インターフェースでPCONTエントリが定義されていない場合、インターフェースを横切る熱伝導の伝導特性を定義するための追加のデータは必要ありません。このようなケースでは、熱伝導率が周辺要素の伝導率に基づいて内部的に計算されます。
接触インターフェースでPCONTエントリが定義されている場合は、PCONTHTエントリを使用して、熱伝導特性を定義できます。
接触インターフェースが明示的なCGAP(G)エントリを介して定義されている場合は、PGAPHTエントリを使用して熱伝導特性が定義されます。
PARAM, THCNTPEN は、熱接触解析で使用されるペナルティ係数の制御に使用できます。
対流
ソリッド内部の熱伝達は、通常、伝導が支配的となるのに対して、流体(液体や気体)内では、伝導と対流の両方のモードが存在し、通常は対流が支配的になります。
流体内の対流熱伝達は、一般に、流体の物質移動の影響を受けます。対流は、液体および気体での熱伝達の支配的形態です。熱対流は、水で満たされたなべを加熱して、温められた水が低温領域に循環することによって引き起こされる水温の変化を観察することによって、実証できます。
OptiStructは、自然対流と強制対流という2種類の対流の両方をサポートします。温度差によって密度の違いが生じた結果自然に発生する浮力で対流が引き起こされる場合は、自然対流と呼ばれます。強制対流は、流体が強制的にファンやポンプなどの物体を越えて流される場合に発生します。
Free Convection
自然対流のシミュレーションは、MAT4エントリのHフィールドとMATT4エントリのT(H)フィールドを介して自然対流係数を指定することによってアクティブにされます。温度依存の熱対流係数と時間依存の熱対流がサポートされます。
- 単位時間あたりに伝達される熱。
- 自由対流係数(MAT4エントリで定義され、PCONVエントリから参照される)。
- CONVエントリのCNTRLNDフィールドによって特定される制御節点を制約するSPCDエントリを介して定義される時間依存の乗数。
- 表面節点温度と周辺ポイント温度間の温度差。
- モデリング:
- 自然対流係数は、それぞれ、MAT4エントリとMATT4エントリのHフィールドとT(H)フィールドで定義されます。
- ユーザー定義の時間依存および温度依存の自然対流係数は、非線形過渡解析のPCONVおよびPCONVLIBバルクデータエントリを使用して定義できます。
- 自然対流材料と境界条件は、PCONVバルクデータを介して特定されます。
- 自然対流サーフェスは、CHBDYEバルクデータを介して特定される必要があります。
- CONVバルクデータを使用すれば、自然対流サーフェス要素(CHBDYE)を、PCONVエントリを介して自然対流材料 / BC、およびTAiフィールドを介して周辺温度の両方に結合することができます。
- TAiフィールドは、SPC/SPCDバルクデータを介して周辺環境の温度を定義します。
- 温度境界条件は、SPCバルクデータを介して構造GRIDポイント上で直接定義できます。
- 熱流束荷重(QBDY1)には、荷重が適用される伝導要素のサーフェスに対するCHBDYEバルクデータの定義が必要です。
- 熱発生荷重(QVOL)は、モデル内の伝導要素に直接適用できます。
- 自動の自然対流定義を、CONVGバルク / サブケースのペアを介してアクティブにすることができます。
Forced Convection
強制対流のシミュレーションは、OptiStructで2つの方法によって利用できます。CAFLUIDとして知られる1Dの理想化された熱伝達要素を使用する方法と、ダルシーフローベースの強制対流熱伝導シミュレーションを使用する方法です。ダルシーフローを使用した、トポロジー設計変数を介した冷却水路の設計最適化もサポートされます。
- モデリング:
- 強制対流モデリングは、強制対流をシミュレートするために使用されるアプローチによって異なります。
- 1D強制対流
CAFLUID要素は、要素結合ポイントを使用して流体流れをモデリングするために使用され、SPCエントリを介して周辺対流ポイントの節点IDも定義します。また、CAFLUID節点は、CAFLUID強制対流を介してサーフェスから対流冷却をオンにするCONVエントリのTaiフィールド上の周辺ポイントとして定義できます。PAFLUID特性は、流れの直径や質量流量などの流体流れの特性を定義するために使用されます。材料特性は、MAT4エントリを介してPAFLUIDで参照されます。
- ダルシーフロー解析(および対流トポロジー)
SPCPバルク / サブケースエントリのペアは、熱サブケースでダルシー流体流れをアクティブにするために使用されます。流入圧力と流出圧力の両方をSPCPエントリを使用して定義できます。INLETVELバルク / サブケースエントリのペアは、SPCエントリを介した流入圧力定義の代わりに使用できます。流出圧力は、SPCPエントリを使用して定義する必要があります。ソリッドおよび流体の熱材料特性と流れ材料特性は、MAT4エントリで定義できます。DARCY継続行は、流体材料特性を定義するために使用できます。
- 1D強制対流
- 強制対流モデリングは、強制対流をシミュレートするために使用されるアプローチによって異なります。
放射
放射は、電磁波の形態でのエネルギーの伝達です。
熱放射は、真空のまたは透明な媒体を通して発生します。絶対零度を上回るすべての物体が電磁波を発生させることができます。波は、放射する物体から出たエネルギーを伝えます。波がボディにぶつかると、エネルギーが吸収され、ボディの温度が上昇します。放射はすべての温度で発生可能で、温度と共に放射率も上昇します。一般的な例は、太陽からの熱が放射エネルギーとして地球に届くことです。
OptiStructは空間への放射のシミュレーションをサポートします。このシミュレーションで、放射熱伝達はサーフェス要素と黒体の空間節点の間で行われます。放射は非線形解析です。非線形定常解析と非線形過渡解析の両方がサポートされます。
- シュテファン-ボルツマン定数(PARAM, SIGMA)。
- 放射熱流束。
- 要素のフェイスと周辺の空間節点間での放射の形態係数(RADBC)。
- サーフェス要素のサーフェス放射率。RADMエントリのEMIS1で定義します。
- サーフェス要素のサーフェスの熱吸収率。RADMエントリのABSORPで定義します。
- サーフェスの温度。
- PARAM, TABSを介して定義される絶対温度スケール。
- 周辺温度。
- モデリング:放射は、熱境界でモデリングされます。放射解析を実行するには、次の入力が必要です:
- 放射については、非線形定常熱伝導解析と非線形過渡熱伝導解析がサポートされます。
- PARAM,TABSは、絶対温度スケールを定義します。
- PARAM,SIGMAは、シュテファン-ボルツマン定数を定義します。
- SPCバルクデータを介して、空間内の黒体の周辺温度を定義します。この同じ節点が、RADBCバルクデータのNODAMBフィールドを介して参照されます。
- 放射サーフェス要素は、CHBDYEバルクデータを介して特定する必要があります。
- RADMエントリを使用して、サーフェス要素の放射材料特性(放射率と吸収率)を指定します。これは、CHBDYEバルクデータで参照されます。
- RADBCエントリを使用して、サーフェス要素の周辺節点を指定することによって、放射境界条件を作成します。
荷重および境界条件
- 温度
熱伝導解析用の固定温度は、SPC、SPC1、およびSPCDデータを使用し、成分IDを空白かゼロに指定して定義できます。MPCデータを用いて異なるポイントの温度の間の関係式を成分IDをブランク、またはゼロにして指定することができます。
- 熱流束荷重
熱流束荷重は、QBDY1バルクデータエントリを介して適用され、CHBDYEバルクデータエントリを介して適用することもできます。CHBDYEエントリは、熱流束荷重が適用されるサーフェス要素を指定します。
- 体積発熱
発熱荷重は、QVOLバルクデータエントリを介してアクティブにされ、熱を発生させる要素に直接割り当てることができます。発熱スケールファクター(HGEN)は、材料エントリ(MAT4とMAT5)上で指定できます。
- 時間依存荷重線形過渡解析と非線形過渡解析では、時間依存荷重を定義するために使用できるいくつかのオプションがあります:
- 直接定義
TLOAD1およびTLOAD2バルクデータエントリのEXCITEIDフィールドは、QVOL(発熱)およびQBDY1(熱流束)バルクデータエントリのIDを指すか、LOADADDを使用してそれらの組み合わせを指す必要があります。
TLOAD1およびTLOAD2バルクデータエントリのEXCITEIDフィールドは、SPCDバルクデータエントリのIDを指す必要があります。加えて、TLOAD1およびTLOAD2エントリのTYPEフィールドを1に設定する必要があります。
- ユーザー定義の荷重
QVOLLIBエントリとQVOLエントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して時間依存の体積発熱を定義できます。
QBDY1LIBエントリとQBDY1エントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して時間依存の均一熱流束荷重を定義できます。
SPCDLIBエントリとSPCDエントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して時間依存の温度を定義できます。
- 直接定義
- 温度依存荷重 線形過渡解析と非線形過渡解析では、温度依存荷重を定義するために使用できるいくつかのオプションがあります:
- ユーザー定義の荷重
QVOLLIBエントリとQVOLエントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して温度依存の体積発熱を定義できます。
QBDY1LIBエントリとQBDY1エントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して温度依存の均一熱流束荷重を定義できます。
SPCDLIBエントリとSPCDエントリを組み合わせて使用して、ユーザー定義の外部関数を通して温度依存の温度を定義できます。
- ユーザー定義の荷重
詳細については、ユーザー定義の熱伝達特性をご参照ください。
材料
OptiStructには、熱伝導解析用の材料特性を定義するために使用可能ないくつかのオプションがあります。伝導率、密度、および発熱に関する一定の等方性熱材料は、MAT4バルクデータエントリで定義できます。
- 温度依存材料
MATT4バルクデータエントリは、TABLEMiまたはTABLEGエントリを介して、対応するMAT4バルクデータエントリフィールドの温度依存材料特性を定義するために使用できます。熱伝導率、比熱、および対流係数は、MATT4バルクデータエントリを使用して温度依存として定義できます。
MATUSHTバルクデータは、非線形熱伝導解析用のユーザー定義の熱材料特性の定義に使用でき、両方の温度依存熱伝導材料特性を定義することができます。
- 時間依存材料
MATUSHTバルクデータは、非線形熱伝導解析用のユーザー定義の時間依存熱材料特性の定義にも使用できます。