RD-E:3900 バイオメディカルバルブ

流体構造連成相互作用(FSI)問題が検討されます。Radioss ALE/CFDソルバーがこの問題を解くのに用いられます。

この例題はRadiossを用いたFSIの実行の仕方について、比較的簡単なケースで示すことを目的とします。定常状態に達した時の非定常流れの注入によるフラップの最大変位が計算されます。

rad-ex-39
図 1.
この例題では、以下の2つの点が強調されます:
  • FSIケーススタディをどのようにセットアップするか
  • ALE/CFDの実行に用いられている様々なオプションの簡潔な記述(詳細についてはRadiossTheory Manualを参照のこと)

使用されるオプションとキーワード

入力ファイル

必要なモデルファイルのダウンロードについては、モデルファイルへのアクセスを参照してください。

モデル概要

単純化された心臓バルブがモデル化されます。バルブは流入する血液の流れの圧力の下で開きます。バルブの開くプロセスが考慮され、問題は非定常です。

加えて、流体-構造連成相互作用が血液の圧力の下でのフラップの変形として考慮される必要があります。

単位: Kg、m、s、N、Pa

rad_ex_39-1
図 2. 問題の定義

モデリング手法

準-均一なソリッドメッシュが領域の離散化に用いられます。軸に沿って十分に細かいメッシュの厚さ方向の1要素が用いられます。

シェル要素がフラップのモデル化に用いられます。フラップは1つの側が固定されその節点には固定するスプリングが付けられます。それぞれの端部には1列のメッシュが生成され流入と流出が定義されます。

問題は非圧縮で、そのため、時間ステップを増加させるために、流体内の音速を恣意的に50 m/sに下げました。

このような近似を行った際には、流体の速度が修正された音速よりもずっと小さいことが検証される必要があります。

rad_ex_39-2
図 3. モデルのメッシュ
4つの材料則が定義されます。
  • フラップのための線形弾性材料則(/MAT/ELAST
  • モデルの主要な部分のための乱流材料(/MAT/LES_FLUID
    材料特性
    Rho
    960.0 [ kg m 3 ]
    音速
    50.0 [ m s ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaada Wcaaqaaiaab2gaaeaacaqGZbaaaaGaay5waiaaw2faaaaa@39DE@
    分子の運動学的粘性
    5.45E-05 [ N • s m ]
    サブグリッドスケールモデルフラグ
    0
    Cs
    0.1
    Csp
    0.1
  • 流入で流体の密度、エネルギーと圧力を定義する流体材料(/MAT/BOUND
    材料特性
    Rho
    960.0 [ kg m 3 ]
    Ityp
    2(一般ケース)
    音速
    50.0 [ m s ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaada Wcaaqaaiaab2gaaeaacaqGZbaaaaGaay5waiaaw2faaaaa@39DE@
  • 流出で領域外部の流体圧力を定義する流体材料(/MAT/BOUND
    材料特性
    Rho
    960.0 [ kg m 3 ]
    Ityp
    3の場合、サイレント境界(NRF)
    音速
    50.0 [ m s ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaada Wcaaqaaiaab2gaaeaacaqGZbaaaaGaay5waiaaw2faaaaa@39DE@
    特性長さ
    1.0E-03 m

フォーマット/ALE/MATがそれぞれの流体材料に割り当てられます。

2つの強制速度が流入節点に作用されます。
上側の流入
Vx= 1.253 [ m s ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaada Wcaaqaaiaab2gaaeaacaqGZbaaaaGaay5waiaaw2faaaaa@39DE@
下側の流入
Vx= 0.849 [ m s ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaWaamWaaeaada Wcaaqaaiaab2gaaeaacaqGZbaaaaGaay5waiaaw2faaaaa@39DE@
境界条件は表 1に定義されます:
表 1. 境界条件タイプ
  タイプ 位置 境界条件
1 /BCS 水平節点 並進 Vz = 0
2 /ALE/BCS 水平節点 グリッド速度 Wz = 0
3 /BCS フラップの横方向エッジの領域の節点 並進 Vz = 0
4 /ALE/BCS フラップの横方向エッジの領域の節点 Wx = Vx

Wy = Vy

Wz = Vz

5 /BCS フラップの節点 並進 Vz = 0

回転 Wx = 0

回転 Wy = 0

6 /ALE/BCS フラップの節点 Wx = Vx

Wy = Vy

Wz = Vz

インターフェースTYPE2が生成され、フラップの横方向エッジの流体領域の節点がフラップのLagrangeメッシュに結合されます。こうして、流体領域が構造のパートに結合されます。

この方法を用いて、流体と構造の間で異なるメッシュとメッシュ密度を持つことが可能になります。

Radioss ALE/CFD専門用語

Euler定式化

Eulerian定式化は流体力学において古典的な表現です。メッシュは固定され、材料がメッシュの中を流れます。方程式は対流項を考慮するため、Lagrange定式化に関して修正されます。

これは材料データでのフラグにより、特定のパートに対してアクティブ化されます。

/EULER/MAT/mat_ID

ここで、
mat_ID
Euler定式化がセットされる材料のID

このケースでは、領域の境界(と主にフラップ)が動くため、Euler定式化は用いることができません。

ALE(Arbitrary Lagrangian Eulerian)定式化

材料は任意に移動するメッシュ内を流れ、これは LagrangeまたはEuler定式化に縮退させることができます。

これは材料データでのフラグにより、特定のパートに対してアクティブ化されます。

/ALE/MAT/mat_ID

ここで、
mat_ID
ALE定式化がセットされる材料のID

グリッド速度と変位は任意です。

実際、ビルトインのアルゴリズムでALE領域境界の変位に基づいてスムーズなグリッド変形が決められます。いくつかのアルゴリズムを使用可能であり(DONEASPRINGSDISP、およびZERO)、この場合はDISPオプションが用いられます。節点の速度は結合された節点の平均速度を用いて計算されます。

ALE材料とLagrangian材料の間の境界節点はLagrangianに設定される必要があります:グリッドと材料の速度は同じです。ALEとEuler材料の間の境界節点はグリッド速度が固定される必要があります。

両方の条件は/ALE/BCSオプションを用いて設定します。

ALE節点に拡張された境界条件を指定(グリッド速度成分を0または材料速度に指定)したり、またはグリッド速度成分を課したり、ALEリンクを任意の節点に対して古典的な運動条件と同様の方法で指定したりすることが可能です。

節点境界条件

デフォルトでは、運動条件は材料の速度と加速度に作用します。Radioss CFDでは、各種拘束が定義できます。流体への適用で興味のオプションは:
  • 滑りありと無しの境界条件
  • 強制速度(流入における強制流束など)
  • 剛結(リスタート時の一時追加)
  • 剛な構造をモデル化する剛体と結合と更に抗力と揚力の計算(すなわち、剛体上の流体の力積を時刻歴データベースに保存)。
グリッド拘束はグリッド速度に対してのみ作用します。以下を指定可能です:
  • 滑り無しと完全滑りのグリッド条件
  • Lagrange条件、即ち、グリッドと材料の速度は等しいものとして設定
  • 節点の通常の分布を維持するALE リンク
  • 強制グリッド速度(移動する流入と流出など)

基本境界条件

境界要素で領域境界での要素の値を規定することができます。これらは、境界要素に材料則LAW11(または純粋な温度の場合にはTYPE18)を仮定することにより指定できます。これらは2Dではクワッド、3Dではソリッドになります。それぞれの変数 P、rho、T、k、epsilon、内部エネルギーでは、以下の様にして規定できます:
  • ユーザー関数による強制変化条件
  • 連続性
  • 事前定義の関数によるスムーズな変化

サイレント境界(NRF)(材料LAW11、オプション3)は圧力と境界場の自由インピーダンスの場を保証します。

Radioss ALE/CFDでは、上のオプションのどのような組み合わせでも指定できます。一方、様々な対流と拡散方程式のクロージャについては、慎重に検証される必要があります。

一般的に次の要素境界条件が用いられます:
  • 流入、流束が強制速度を用いて課されます。密度、エネルギー、乱流エネルギー(即ち、 k)は一定とします。連続条件が圧力(表示目的のみ)とイプシロンに対して課されます。乱流エネルギー、rho kは外部流れに対しては0に、内部流れに対しては1.5*rho*(0.06 Vin)2に設定します。
  • 流出、圧力を除いた全ての変数に対する連続条件が課されます。サイレント境界NRFオプションが用いられた時は、 ユーザーが音速の値と代表的な緩和の長さを与え、これは興味の最大波長よりも大きい必要があります。
  • 側面、サイレント境界NRFオプションまたは境界要素無しの滑り条件による全ての変数の連続条件。

要素が境界に存在しない場合連続性が仮定されますが、流束を許さないために運動条件は必要です、そうでないと対流方程式が完結せず、プログラムは発散する可能性があります。

結果

非定常の間の速度分布は安定化前の時間での問題の進展の良い外観を与えます。

fig_39-3
図 4. 時間と空間での速度分布
この検討の主な目的は、時間領域でのフラップの最大変形を得ることです。節点23360の鉛直変位のプロットが次のグラフに与えられ、フラップの位置は時刻 t=1 sで安定化されます。

fig_39-4
図 5. フラップの自由端(節点23360)のメートルでの鉛直変位
圧力の時間での安定化が図 6で要素3370と3992に対して示されます。

fig_39-5
図 6. 要素3370と3992のPaでの圧力の安定化

fig_39-6
図 7. 要素3992と3370の位置

まとめ

この例題はRadiossの流体-構造連成相互作用のシミュレーション能力を示しています。LagrangieメッシュにつけられたALE定式化の使用が記述されています。Radioss ALE/CFDに関するいくつかの基本的な解説がされています。