RD-E:5400 カット手法

カット手法の目的は、フルモデルの変形をより小さいモデルに適用することにより、モデルの一部分を考察することにあります。



図 1. フルモデルとサブモデル

使用されるオプションとキーワード

入力ファイル

必要なモデルファイルのダウンロードについては、モデルファイルへのアクセスを参照してください。

モデル概要

このフルモデルには、変位が課されてバンパーに衝撃を与える剛性板があります。バンパーの後ろ側のクラッシュボックスは、すべての方向で固定されています。/INTER/TYPE7を使用してパート間の接触を定義します。高度なマススケーリングを使用して、モデルの解法に要する時間を短縮します。


図 2. 問題の詳細

単位: mm、ms、Kg、N、 GPa

このバンパーのフルモデルで得られた結果から、ほとんどの変形がクラッシュボックスの領域に集中していて、その領域が剛性板の背面に相当することがわかります。もう一方のクラッシュボックスには変形がほとんど見られません。サブモデルという用語は、フルモデルの切断または切り出しで作成した、フルモデルよりも小さいモデルを指しています。Radiossで使用できる//SUBMODELモデルの系統化手法とは異なります。


図 3. 提示された位置でフルモデルを切断して作成するサブモデル

剛性板背後のクラッシュボックスを重点的に検討するために、フルモデルからサブモデル(図 3に青色で表示した領域)を切り出します。サブモデルとフルモデルで同じ挙動が得られるようにするため、選択した領域の境界における力と変位が必要です。/SECTを使うことで、断面力または変位を保存し読み出すことが可能です。

この例題では、フルモデルに2つの断面(断面ID 10およびID 9)を定義しています。HyperCrash、Process、Submodelingの各オプションを使用して、フルモデルにこれらの断面を定義し、サブモデルを作成しています。このプロセスでは、ISAVE=2を指定してフルモデルに/SECTを作成し、頻度 Δ t による計算で断面の変位と断面力を保存します。断面データ(SCファイル)のファイル名は、/SECTflag_nameで定義します。次に、フルモデルから作成したSCファイルを、フルモデルよりも小さいサブモデルへの入力として使用します。フルモデルと同じ/SECT定義を使用して、ISAVE101に変更し、フルモデルから作成したSCモデルから断面データを読み取ります。
注: /SECT Δ t は、断面の変位と力の結果をSCファイルに書き込む頻度を定義します。 Δ t が小さすぎると、SC出力ファイルのサイズがきわめて大きくなることがあります。一方、 Δ t が大きすぎると、エイリアシングに起因して不適切な結果になることがあります。 Δ t の値として、モデルの時間ステップの10倍をお勧めします。

断面内の節点グループと要素グループは、力の間の一貫性が確保されるよう、フルモデルとサブモデルで同じでなければなりません。HyperMeshを使用して、フルモデルに/SECTを作成し、フルモデルから要素を削除してサブモデルを作成することもできます。



図 4. Radiossでのカット手法

結果

この例題で、縮小されたサブモデルはフルモデルの約58%です。同じCPUで、所要時間が約54%節減されました。
表 1. 全計算時間の比較
  フルモデル サブモデル 比率

サブモデル / フルモデル

CPU 1 1  
要素数 16722 9730 58.19%
時間ステップ[ms] 0.1500E-02 0.1500E-02 1
経過時間 [s] 498.62 272.16 54.58%

このシミュレーションでは、使用した要素と接触の数が少ないので計算時間が短くなっています。

フルモデルとサブモデルの間には、クラッシュボックスの変形量に良好な相関が見られます。


図 5. フルモデルでの変形量とサブモデルでの変形量のオーバーレイ
図 6. フルモデルとサブモデルでの変形したクラッシュボックス内の断面力

この2つのシミュレーションでは、クラッシュボックスの断面力がほとんど同じです。サブモデルの結果がフルモデルの結果と大幅に異なる場合は、/SECT Δ t を小さくしたために、SCファイルに保存された断面出力の結果が増加していることが考えられます。または、フルモデルから取り込む領域が大きくなるように断面の位置が変更され、サブモデルの変形量が影響を受けている可能性があります。

まとめ

カット手法では、より小さいモデルを実行することにより計算時間を短縮することが可能となります。その主な制限事項は、切り出したモデルで選択したパートと選択していないパートとの相互作用を十分に小さくする必要があることから発生しています。相互作用を小さくするのは、選択していないパートによって、選択したパートの挙動が大きな影響を受けないようにするためです。フルモデルとサブモデルが同等になるように、両モデルの断面力(またはモーメント)を比較することが重要です。

クラッシュダミーによる車のシミュレーションをはじめとする産業分野の用途では、ダミーおよびその直接環境のみをサブモデルとして保持することをお勧めします。車のフルモデルと比較し、CPUコストの約90%が節減されます。低速衝突または高速での衝突の初めでは、変形エリアのみをサブモデルとしてキープすることが推奨されます。車のフルモデルと比較し、CPUコストの約30%が節減されます。