RD-E:4200 ゴムのリング: クラッシュとスライドの例題

平らで剛な平面上に静止するゴムのリングが円形のローラーで押し下げられリング内部に自己接触を起こします。次に、押し潰されたリングが平らなサーフェスに沿って転がるようにローラーは同時に平行移動と回転移動します。

モデルは平らで剛なサーフェス上に静止する変形するゴムのリングで構成されます。もう1つの円形の剛なローラーがリングの上部に静止し、リングに点だけで接触しています。剛体サーフェースとリングの外表面の間に接触が定義され、リングの内面にも自己接触が定義されます。荷重は2つのステップで作用されます。最初のステップでは円形のローラーがリングの内面に自己接触を起こすのに十分なだけ押し下げられます。第2ステップでは、押しつぶされたリングが平らなサーフェスに沿って転がって接触域が一定変化を起こすようにローラーが同時に並進移動と回転移動します。

rubber_ring
図 1.

この例題は静的問題として考慮され、非線形陰解法ソルバーが用いられます。

使用されるオプションとキーワード

超弾性と接触が主な非線形性を生みます。したがって、静的非線形解析が孤長変位のストラテジーを用いて実行されています。時間ステップが変位ノルム制御によって決められます。
非線形陰解法パラメータ
陰解法タイプ
静的非線形
非線形ソルバー
BFGS準-Newton 法
終了の条件
エネルギーの相対残差
収束判定基準
0.001
剛性マトリックスの更新
最大5回の反復
時間ステップコントロール法
孤長
初期時間ステップ
0.001
最小時間ステップ
1e-6
最大時間ステップ
0.001
ラインサーチ法
自動
接触インターフェースがある場合の特別な残差力の計算:
5
望ましい収束の反復回数
6
収束の最大反復回数
15
時間ステップ減少係数
0.8
最大時間ステップ増加係数
1.1
孤長
自動計算
スプリングバックオプション
なし
それぞれの非線形反復サイクルでAx=b を解くソルバーの手法が必要です。これはオプション/IMPL/SOLVERで定義されます。
線形陰解法オプション
線形ソルバー
直接法
前処理法
分解された近似逆行列
最大反復回数
系の次元(NDOF)
終了基準
前処理したマトリックスの相対残差
終了基準の収束判定
マシンの精度

第2の荷重ステップのためにリスタート解析が実行されます。

両方のEngineファイルで設定される入力の陰解オプションは:
/IMPL/PRINT/NONLIN/-1 --- Printout frequency for nonlinear iteration
/IMPL/NONLIN/2 ---- Static nonlinear computation
 5 1 0.001
/IMPL/SOLVER/3 ----- Solver method (solve Ax=b)
5 0 3 0.0
/IMPL/DTINI ----- Initial time step determines initial loading increment
0.001
/IMPL/DT/STOP ------- Min Max values for time step
 1e-6 0.001
/IMPL/DT/2 ------ Time step control method 2 - Arc-length + Line-search will be used with this method to accelerate and control convergence.
 6 0 15 0.8 1.1
/IMPL/AUTOSPC/ALL ---- Constraining automatically zero stiffness dof
/IMPL/LSEARCH/3 ---- Line search method for nonlinear analysis
/IMPL/RREF/INTER/5 ------ Special Reference residual computation with contact

陰解法オプションの詳細についてはRadiossマニュアルを参照してください。

入力ファイル

必要なモデルファイルのダウンロードについては、モデルファイルへのアクセスを参照してください。

モデル概要

この例題の目的は、Radiossを用いた超弾性材料と接触を含む非線形大変位陰解法解析を示すことにあります。

変形するリングの内径は6単位で外形は8単位、リングの板厚は0.67単位です。円形の剛なローラーの直径は2単位です。剛なサーフェスと円形のローラーの板厚は0.01単位です。次のような疑問が思い浮かぶかもしれません:“何故この例題では1/2の対称モデルが用いられないのか?”ここでは、第1 ステップの荷重では対称ですが、第2ステップの荷重はそうではないため、両方のステップの荷重をシミュレートするためにフルモデルを用いる必要がありました。

rubber_ring_geom
図 2. ゴムのリングとローラーモデルの形状
超弾性ゴムリングはOgden, Mooney-Rivlin材料(/MAT/LAW42)を用い、以下の特性でモデル化されています:
材料特性
μ 1
0.7
μ 2
-0.5
α 1
2.0
α 2
2.0
ポアソン比
0.495
剛体バリア(ローラーと平らなサーフェス)は弾性材料を使用してモデル化されていますが、1D剛体リンクが各バリアの全ての節点に結合されているため、本質的に剛になります。剛体バリアに用いられた材料は以下の特性を持ちます:
材料特性
密度
7.9e-9
ヤング率
600 [ MPa ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aqatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqGqFfpeea0xe9vq=Jb9 vqpeea0xd9q8qiYRWxGi6xij=hbba9q8aq0=yq=He9q8qiLsFr0=vr 0=vr0db8meaabaqaciGacaGaaeqabaWaaeaaeaaakeaadaWadaqaai Gac2eacaGGqbGaaiyyaaGaay5waiaaw2faaaaa@3BE6@
ポアソン比
0.3

幾何学的線形(NLSTAT)または幾何学的非線形(NLGEOM)解析

幾何学的線形解析では全ての変形と回転は小さいとします。変位量がモデルの寸法の5%程度であれば小さいと考えられます。

このゴムのリングの例題では、押しつぶされた後の最終変形とひずみが上の限度よりはるかに大きくなります。したがって、幾何学的線形NLSTAT解析をこの例題のために検討することはできません。

モデリング手法

  1. メッシュとプロパティ
    リングのメッシュは規則的なソリッドメッシュで、幅方向に4要素(0.25 単位の寸法)で厚さ方向が2要素(0.335 単位の寸法)でモデル化されています。平らで剛なサーフェスと円形のローラーはどちらも規則的な板厚0.01mmのシェルメッシュで平らなサーフェスはおよそ0.75単位の寸法で、ローラーはおよそ0.467単位の寸法でモデル化されています。

    rubber_ring_geom2
    図 3. ゴムのリングとローラーモデルの形状
    リングは1次の完全積分ソリッド要素を用いてモデル化されました。
    /PROP/SOLID/5
    WHEEL 
              14     10      1    222
    平らなサーフェスとローラーは1次の低減積分シェルを用いて板厚方向3積分点でモデル化されました。バリアの詳細なポスト処理は必要ないため、完全積分要素は考慮されませんでした。
    /PROP/SHELL/6
    BARRIER
     1    2
     3    0.01
  2. 荷重および境界条件
    ゴムのリングに作用する境界条件はステップ1では図 4に示したように与えられます。

    rubber_ring_bc
    図 4. ステップ1でリングに作用する境界条件

    平らで剛なサーフェスと円形のローラーに作用する境界条件はステップ1では図 5に示したように与えられます。

    リングの内面で自己接触が起きるようにローラーが6.22単位Y 軸方向に押し下げられる間、平らなサーフェスは全ての自由度が拘束されます。

    rubber_ring_bc2
    図 5. ステップ1で平らなサーフェスとローラーに作用する境界条件
    ステップ2では、押しつぶされた形状の輪が平らで剛なサーフェスのX上をX-方向に転がるように、上部ローラーが同時に並進移動と回転移動します。したがって、円形のローラーのX並進とZZ回転は、/RBODYのマスター節点から解放される必要があります。加えて、拘束されていたリングの中心節点のX自由度(図 4)を、リングが平らなサーフェスに沿って転がるように解放する必要があります。したがって、ステップ2のEngineファイルは、上で述べた自由度の解放を表す、以下のカードを持ちます。
    /BCSR/TRA/X/
    5 6 8 9 15 16 17 18
    87 88 89 93 94 95 241 242
    243 244 245 246 5717 5699 5681 5663
    5662 5537 5517 5497 5477 5476 2269
    /BCSR/ROT/Z
    2269
  3. 接触定義

    複数の接触が定義されています。(i)円形のローラーとゴムのリングの間の接触、(ii)平らで剛なサーフェスとゴムのリングの間の接触、および(iii)ゴムのリングの内面の自己接触です。

    小さな物理ギャップ(0.05単位)が円形のローラーとゴムのリングの間とゴムのリングと平らで剛なサーフェスの間にも導入されました。接触のために指定された最小ギャップは接触を考慮に入れるために物理ギャップよりも若干大きい値が指定されました。全てのインターフェースで静的coulomb摩擦0.5が定義されています。この様な1つのインターフェースの定義を下に示します:
    /INTER/TYPE7/14
    TOP_Rubber
            25        30         4                                     0
           
    
                                         0.5               0.055
           000                             0 
             0                                       2

    また、剛なパートと非常に柔らかい超弾性材料の間の接触が含まれるため、剛なパートのE*h(ヤング率 * 板厚)をゴム材料の体積弾性係数と同じオーダーにすることが推奨されます。

結果

アニメーション

円形のローラーが押し下げられた後のゴムのリングの変形形状を図 6に示します。

rubber_ring_deformed
図 6. 第1ステップの後のゴムリングの変形形状
図 7 にローラーが同時に並進移動と回転移動をした後の、押しつぶされたゴムのリングの剛なサーフェスに沿ったスライド移動を示します。

rubber_ring_deformed2
図 7. 第2ステップの後のゴムリングの変形形状
ゴムのリングの押しつぶされて平らで剛なサーフェス上をスライドした後の応力を図 8に示します。

rubber_ring_stress
図 8. ゴムのリングの応力