サインスイープ・オン・ランダム振動は、周波数を掃引した正弦波振動をランダム振動上に重ね合わせた振動です。これは、ランダム振動に複数の単一周波数サイントーンを重ねた振動と見なすことができます。
走行中の車両にサインスイープテスト装置を設置している場合に、この疲労解析が有用です。用途の例として、対象の構造がランダムな暗振動にもさらされている場合に、掃引周波数範囲に存在する共振周波数で発生する疲労損傷の評価が挙げられます。例えば、不整路を走行している自動車内部で正弦波振動している部分があり、そこで発生すると考えられる共振周波数による疲労損傷の計算があります。
損傷計算
サインスイープ・オン・ランダム振動に起因する損傷は、通常のランダム振動疲労の場合と類似の手順で計算できますが(ランダム応答疲労解析をご参照ください)、いくつかの注目すべき違いがあります。
この振動は、ランダム振動に複数の単一周波数サイントーンを重ねた振動と見なすことができます。サインスイープの際に、ある周波数から別の周波数への移行に要する時間をTとします。数値的には、FATLOADバルクデータエントリで設定した掃引速度(SR)と、FATPARMバルクデータエントリのSWEEP継続行で設定したDF(またはNF)でTが決まります。
特定の周波数における掃引時間
Tごとに損傷が推定されます。
Tごとに、次のようにスペクトルモーメントを計算できます。
(1)
ここで、
-
- モーメントの次数。
-
- ランダム振動の周波数値。
-
- 周波数
における応力PSD応答値。
-
- 応力PSDに存在する周波数の数。
-
- 単一のサイントーンに起因して時間Tの期間に想定される応力振幅。
ランダム応答疲労解析と同様に、計算したモーメントに基づいて疲労損傷が計算されます。
ランダム振動に重ねた掃引サイントーンに起因する掃引当たりの合計損傷は、各時間で発生した複数の損傷の合計になります。
のように掃引全体にわたって合計した値です。
入力
サインスイープ・オン・ランダム疲労で基本となるサブケースは、ランダム応答解析と周波数応答解析です。目的のFATEVNTエントリで、ランダム応答解析を参照するFATLOADと周波数応答解析を参照する別のFATLOADを指定して、サインスイープ・オン・ランダム疲労をアクティブ化する必要があります。
周波数応答解析を参照するFATLOADのデータには、掃引速度(SR)と掃引速度単位(SRUNIT)のほか、SWEEP継続行も記述する必要があります。
例として、SUBCASE 10がランダム解析サブケース、SUBCASE 20が周波数応答解析サブケースであるとします。サインスイープ・オン・ランダム疲労をアクティブ化する方法を次の設定に示します。
FATLOAD,100,,10
FATLOAD,200,,20
+,SWEEP,1.5,OCTPM
FATEVNT,1000,100,200
この設定では、掃引速度を1.5、掃引速度単位を1分当たりのオクターブ数(OCTPM)にそれぞれ設定しています。
出力
損傷と寿命から見た一般的な疲労を出力できます。損傷の出力は、FATSEQバルクデータエントリで設定した掃引回数Nで乗算されたうえで報告されます。